仕事幸福真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル

真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル 第16話

 

 (イラスト)

 「や、山P……」

 私は目に涙を溜めながら言った。

 「もう、戻ってこないかと思ったよ」

 すると山Pは、ニヤリと笑って言った。

 「ターミネーターと言えば、『アイル・ビー・バック』じゃろ?」

 何が「じゃろ?」なのか分からなかったし、それ以上にステージ上で全裸になっている山Pが気になったが、山Pの登場と同時に観客席の間には濃い煙の壁が作られていて観客からは見えないようになっていた。

 でも、安心している暇はなかった。

 目の前の翔院男子は、突然山Pが現れて拳を止められたことに戸惑いながらも、

 「な、何だよこいつ。気持ち悪ぃ!」

 蹴飛ばそうと足を振り上げた。

 しかし、蹴られて吹っ飛んだのは、翔院男子の方だった。

 ポケットに手を突っ込み、蹴り上げた足を持ち上げたまま立っていたのは――赤音さんだ。

 その隣には、桃瀬さん、紺野さんが立っていた。

 私の耳元で紫堂の声が聞こえた。

 「言ったろ、子猫ちゃん。『涙の後には虹がかかる』ってさ」

 「み、みんな!」

 私が抱きつこうと近づくと、赤音さんが手を上げて言った。

 「感動の再会は後回しだ。まずは片付けるもんを片付けないとな」

 目の前に、翔院男子が連れてきたガラの悪い男たちが立っている。

 指を鳴らしながら相手をにらみつける赤音さんの隣に、紺野さんが立って言った。

 「左の二人は私が担当しよう。――お前と協力するのは気が進まないが、真理さんのためだ」

 赤音さんはフッと鼻で笑って言った。

 「こんなやつらに手こずってたら、こいつらもろともぶっ飛ばすからな」

 「その言葉、そっくりそのままお前に返すとしよう」

 「お前ら何ごちゃごちゃ言ってんだ!」

 タトゥーの男が殴りかかってきたのを二人は同時によけ、赤音さんがその男の頭に拳を、紺野さんはその隣の男に膝を叩き込んだ。

 二人は次から次へと翔院男子の一団を叩きのめしていく一方で、

 「ふはははは!」

 天井の方から高笑いが聞こえたので見上げると、そこにはサイードとSPたちがジェット噴射で宙に浮かんでいて、SPたちは楽器を持っていた。

 「最高級品だぞ!」

 サイードがステージに降りてくると、SPたちは素早い動きで楽器を設置し、代わりに壊れた楽器を運んでいってくれた。

 「こちらにお願いしますー!」

 明るい声がしたので振り向くと、

 「緑川くん!」

 そこに緑川くんがいたので思わず声をあげたけど、驚きはそれだけではなかった。

 緑川くんの後ろには、あかりんをはじめとした、審査員たちがいたのだ。

 どうやって説得して連れてきたのかは分からないけど、緑川くんは審査員たちを席に座らせてから、私の背後に目配せをした。

 振り返ると――ドラムの前に山P、キーボードの前に桃瀬さんがいて、赤音さんはギター、紺野さんはベースを持ち、さらに奥のDJブースには、片耳だけヘッドホンをつけたサイードが機械の調整をしていた。

 (みんな――)

 視界が涙で歪んできたが、その涙を服の裾でぬぐった。

 今、私がやるべきこと。

 それはこのステージで最高の歌を歌うことだ。

 「さあ、それでは、本日最後のステージになりました!」

 緑川くんがマイクに向かって叫んだ。

 「山咲真理で、『TST ~トイレ掃除が楽しすぎて~』!」

 その瞬間、観客席とステージを隔てていた煙の壁が一気に舞い上がり、観客たちが目の前に現れた。

 山Pとレインボーイズたちの伴奏が始まる。

 私は――いつのまにか先端がモップになっていたマイクを握りしめ、歌い出した。

 そしてそのとき私は気づいた。

 水原くんが観客席の最前列にいて、全力の動きでオタ芸をしてくれていることに。

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REVIEWS

評価

12345

良いと思うところ

山Pたちとちゃんとお別れができました。

涙が止まりません。

良くないと思うところ

今回はないでしょう。

かおり
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。
今、いよいよ後編に入りぐいぐい書けるのかなと思いきや、石岡さんの自宅で煮詰まってますが、頑張ります!引き続きよろしくお願いします!

2018年5月11日 22時30分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

本当にスタジオの空気感や緊張感が
伝わってきてすごくリアルでした。
久々のレインボーイズや山Pの登場に
すごく興奮したのもつかの間、
すぐにお別れが来てしまって
とても切かったです(泣)
真理ちゃんの最後の話も
涙が出てきました。
毎回泣かされます(ToT)笑
いつも素敵なお話をありがとうございます!

良くないと思うところ

ありません。

ぐち
2人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也かおり
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。
今後、後編に対してこのシーンのイメージが変わると思いますがそのあたりも教えていただけたらうれしいです。よろしくお願いします!

2018年5月11日 22時31分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

まりちゃんの今までの教えを全て力に変えてイキイキとしてチャレンジする姿が本当に良かったです‼︎後悔しない、自信を持ちたい^_^

一つ一つの言葉が身にしみましたが、仕事をする人に対しての明日に輝ける、、、のところが今までの実学の上をいくような新鮮な感じがしました。

まりちゃんの最後山Pに対する感謝の言葉も、仕事に(仕事だけに関わらずですが)無駄なこと、無駄な時間は無いってことが伝わって希望につながります^ ^

山Pとレインボーイズがうまいこと煙に巻かれて出て来て(笑)一瞬の内に素晴らしい役割をして過ぎ去って、、、すごくキマり過ぎ、カッコよかったです(^‿^)

良くないと思うところ

仕事を楽しめるのも、信用を得るのも信頼されるのにも誠実さも重要な一つで、、、まとめの章で「一生懸命」の言葉で誠実さが伝わりますが、これから成功していくところでさらにわかりやすく書いてくださると嬉しいです。仕事で本当に成功してる人は言葉じり一つにおいても優しいし誠実だと思うので。仕事だけに関わらず人との繋がりの上で大切です^ ^

Shiho☆
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水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます!
この教えと後編の教えのバランス、読者の感情の流れが難しくなりそうなのでまた感想お願いします!

2018年5月11日 22時32分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

この回すごく好きです。
思わず〜1話から全部読み直しちゃいました。

特に、5ページ目の言葉が◎
画面から声が聞こえそうなくらい伝わるものがある気がしました。
さいごの、山Pに伝えた「一つも夢がかなえられなかった〜人生は輝いていたはずなんです」と言い切ってくれたところも、山Pというか、いろんな人のことを肯定してくれた気がして。夢を叶える以上に大事なモノをもらえた気がします。

良くないと思うところ

欲を言えば、、山Pに伝えたい事の部分がもうちょい(最後1〜2行加えてくれると)ほしいです◎

takamin
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。確かにここが前編のクライマックスなのでまた推敲のとき色々考えてみたいと思います!

2018年5月11日 22時33分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

真理ちゃん、今後、いろんな場面で幸せを感じながら、幸せな人生を送っていく感じが良く解りました。涙が出ました。
以下のところ、
《何かを夢見るということは同時にそれがかなわない不安を生み出す。そして、夢をかなえるために必要なのは、この恐怖を乗りこえるための、勇気なのだ。》
紙に書いて、職場の机の前に張りました。今、読み返しても涙が出そうです...

以前の回で山Pが「夢がかなえられなかった」って言ったところで、山pがそんなこと言うなんて残念だったなって思っていたんです。アイドルになることができなかったとしても、ところどころにある小さな夢は、いろんな場面でかなってたんじゃないか、って思っていました。たとえば、このようにして、過去の自分に会いに行って、教えを授けることだって、自分の夢を実現したことになるんじゃないかと思ったりもしていました。
が、ここへ繋がる点だったんですね!

良くないと思うところ

とは、言いつつも、やっぱり 山P、真理ちゃんに言われる前に気づいてても良かったんじゃないかなという思いがあります...。これだけ色んな教えを授けられるのに、いろんな場面で自分の人生が輝いていたことに気づいていなかったんでしょうか...
この点もこの後にどこかへ繋がる? 前回までのこと、蒸し返すようですみません...

Rie
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。
山Pの立ち位置は、、、そうなんですよね。彼女が実は教えを受ける側なので成長が描きにくくてそこは今後の課題だと思っています。今後ともよろしくお願いします!

2018年5月11日 22時34分 水野敬也
水野敬也
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