「お疲れ様です!」
ハニーズに到着した私は金子店長や岩尻さん、他のスタッフたちに挨拶をして更衣室に向かった。
制服に着替え、鏡の前に立って自分の姿を確認した。
初めてハニーズの制服を着てこの鏡の前に立ったときのことを思い出す。
あのときは、鏡に映る自分しか見ていなかった。
でも、今、私が意識しているのは、お客さんの目に映る自分だ。
もちろん、まだすべてを学び終えたわけではない。ホールスタッフとしての新たな課題を見つけ、乗り越えている最中だ。
私は、カチューシャの位置を整えて、ホールに向かった。
『アイエボ』の最終オーディションのオンエアでは、私が歌う場面も使ってもらえたけれど、最後の9人に残ることはできなかった。
選考結果に、翔院男子たちの妨害は関係ない。むしろ、山Pやレインボーイズに助けてもらえたおかげで実力以上のパフォーマンスをすることができたと思う。
結局のところ、私の実力が足りなかったのだ。
不合格だと分かった日、私は一日中部屋の中で泣き続けた。
あかりんと一緒にステージに立つという夢の間際まで近づいたのに、結局、夢をつかむことができなかった。
でも、あくる日、私はすぐに『アイエボ』のオーディションで経験したことを振り返り、課題を設定して行動を起こし始めた。すでに新たなアイドルオーディションへのエントリーも始めている。
『アイエボ』のオーディションが終わってから、私は、学校の授業に対する姿勢も変えることにした。
正直、これまで学校の授業中は、疲れて寝てるか、「早く終わってくれないかな」と思うだけだったけれど、これは形を変えた時給の罠だと気づいたからだ。
活躍しているアイドルの中には大学に進学している人もいるし、山Pから学んだことは学校の勉強にも応用できることが分かった。
山Pは言っていた。
「お前は、お前が思っている以上に多くの可能性を持っているのじゃ」
16歳の私は、66歳の山Pの年齢になるまで、ありとあらゆる可能性を探ってみようと考えている。
そして、それは同時に、目の前の仕事に全力を傾けることでもあることを山Pは教えてくれた。
(さあ、今日も一日張り切って仕事をしよう)
ハニーズに入り口の扉が開いてお客さんが入って来た。
私は笑顔を向け、声を出した。
「いらっしゃ……」
しかし、入り口に立っていた人を見て思わず言葉を止めてしまった。
そこに立っていた人は、黒いハットと長髪の長岡プロデューサーだった。
緊張しながら長岡さんを席に通したが、彼は立ったまま言った。
「そういえば、名刺もまだ渡してなかったよね」
長岡さんが取り出した名刺を受け取ると、彼は椅子に座ってから言った。
「今度、新しいアイドルユニットを作ることになったんだけど」
そして、長岡さんは顔を上げて言った。
「そのユニットの候補生として、君に参加してもらいたんだ」
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評価
良いと思うところ
作品の冒頭に山Pのシーンをもってきた理由がわかりました!
追記
続きも読みますので、大丈夫です!「ブラックガネーシャ」も読みましたし…
ただ私としては「ブラック」よりは「普通のガネーシャ」、「雨の日も晴れ男」のようなどこまでも前向きな感じの方が好きという、好みの問題でしょう。
良くないと思うところ
「自己啓発小説」しかし、小説である以上、登場人物に感情移入し、情を感じて読んでいますので、こういうのは本当にやめてほしい!テンション下がりまくり!チョット辛いこともあったので、余計に下がる…先週で終わりの方が良かった…
かおり追記
「整形」をおぞましく感じてしまうタイプなので、真理ちゃんが整形していたとしたら、嫌いになってしまうかもしれませんし、そんな経緯も見たくはないかも…
まだこれから、未来を輝かせていこうという真理ちゃんの、失敗した老後のようなものは、残酷で見てられません…
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著者からの返事
感想ありがとうございます。
2018年5月14日 10時18分 水野敬也確かに、、、そうなりますよね、、、!現時点では冷や水を浴びせられた感じになると思うのですが、ただこれからの教え、そしてラストがこの作品のコンセプトでもあるので、可能であれば、どうすればはしごを外す感じにならないか、が知りたいです。
評価
良いと思うところ
オーディションに
落ちてしまった真理ちゃんですが、
そこで諦めずに(一度の失敗で正しい教えを間違ってると思わずに)
すぐに課題を自分で設定して行動に移していくところが本当に素晴らしかったです。
良くないと思うところ
66歳の山ピのどうしようもない
ぐち戻れない切なさが苦しかったです。
しかしそれは16歳の真理ちゃんの
未来が輝かしいものだと思っているから…
真理ちゃんの未来がどうなったかは
まだわからないのでなんとも
言えませんが話の急展開に驚いてます( ; ゜Д゜)
正直え、どういうこと…と理解が追い付いていません。
しかしこの先どうなるのかには
非常に興味があるので後半、楽しみにしています。
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著者からの返事
感想ありがとうございます。
2018年5月14日 20時29分 水野敬也この展開、自分的にはいけると思っていたのですが、確かにこれまでの展開のはしごを外す流れなので今後の書き方に注意しなければならないと思っています。僕としてはこの展開こそが本書のコンセプトなので、引き続き読者視点でコメントいただけるとうれしいです。よろしくお願い致します!
評価
良いと思うところ
第16話まで読んでいて、『なぜ、ガネーシャではなく、山Pなのか?』が、ずっと引っ掛かっていました。(ガネーシャのファンとしては)
今回やっと、このぶっ飛んだ(すみません)設定の必要性が分かったような気がします。
後半、人生の真理へ突っ込んで行く展開を大変楽しみにしています。
良くないと思うところ
・レインボーイズが多過ぎて、一人一人をキチンと区別して読むことが、私には難しかったです。挿絵が入ると違うのかも知れません。
ですも・ここまで、彩花やその取り巻きは完全に悪役ですが、そのままで終わってしまうと、『そういう人たち』への嫌悪感が読後に残るように思います。
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著者からの返事
感想ありがとうございます。
2018年5月21日 16時57分 水野敬也確かに彩花や悪役の扱いは忘れがちになるので意識にとどめておくようにします。
レインボーイズに関してはイラストを入れるのでそれで分かりやすくなる可能性があると思っています。
評価
良いと思うところ
山P…ちょっとかわいそうですが、、、キラキラとした夢や若さや未来が過ぎ去ったら、やっぱり誰でもこういう心境になるんだろうなぁ、嫉妬や妬みをどうプラスに変えるか、自分がその歳になる時を想像すると…まだまだ学ぶことが沢山だと痛感してます(^^;)
まりちゃん、残念でしたがいい経験としてとらえ、諦めず立ち止まることなく進んでいるのがもちろんいいところです!
良くないと思うところ
山P、自分は愛された、大切にしてもらったという経験、記憶があればそれが糧や自信になる、人生を支えるのではないかと感じます(^-^)
Shiho☆どんどんAI化が進んでも、感情を汲み取れても核となる心、LQ(愛の知能指数)は未知で不変なんじゃないかなぁと。
『愛』ですが、恋愛だけじゃなくて(笑)、家族とか親子とか友情とかもひっくるめてです(*^^*)
あと本当に恐縮ですが、、、
「どんなに成功しても愛がなければ尊敬を得られず、愛すべき人にもなれない」
ジャック・マー(馬雲)会長が4月25日、早稲田大学の大隈記念講堂で満員の約1200人の聴衆を前に、『愛』の大切さを語られました。
起業家を志す若者らを前に、自分の経験を披露し、 早稲田大学に在籍する起業家からの質問にも答えられたなかで、「IQ(知能指数)」「EQ(心の知能指数)」「LQ(愛の知能指数)」で最も大切なものとして「LQ」の愛を上げられいて、、、
成功者のリアルな言葉に感動し、やはりこれが人生において一番の強みかと思ったので、ちょっと聞いて頂きたくて^ ^ズレているかもしれないのでほんと失礼なのですが…。
また今回の話が終わって最後の言葉ですが、虚勢を張っておられず、後半へ自分を追い込まれることをオープンにしてくれているような感じにもとれて…。
ずっと神経高ぶらせながら⁈の大変なご執筆、これからも楽しみにしていますし応援しています(^_-)
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著者からの返事
感想ありがとうございます。
2018年5月21日 16時58分 水野敬也後編と前編の良いバランスを模索していきたいのでまたアドバイスいただけたらうれしいです!
評価
良いと思うところ
前編と後編の二編に分けて、
おそらく筆者がtamelandでの今作において一番伝えたいことを真の意味で届けるために、大半の時間(story)を前編に費やしたこと。
またそれでいて尚且つ、
そのことを読者に悟られない程の作品のクオリティと面白さを前編で構築したこと。(自分のようなものが偉そうにすいません(__))
良くないと思うところ
これからの物語がどう続くのかは正直自分の想像力なんかでは検討もつきません。too muchです。
三宅天真そして、これから先の結末━━━真理を望まない(知らずにいれば良かった)という人もきっといると思います。
ふと、水野敬也さんのかつての記事『天才の倒し方』を思い出しました。
しかしながら、それらを含めた「全て」がこの作品の、そしてこの世界の“真理”なのだと思うので、自分はこの先も読ませて頂きます。
━━━22才のこんな拙い感想ですが、どうぞ何とぞ宜しくお願いしますm(__)m
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著者からの返事
感想ありがとうございます。
2018年5月21日 16時59分 水野敬也後編に関しては、どうしても制作者としての「ドヤ感」が出てしまいそうなのでそこに気を付けながらも、あるべき姿を見つけていけたらと思います。引き続きよろしくお願いします。感想はさかのぼって「〇〇の話に関しては……」といただけてもうれしいです。
評価
良いと思うところ
そもそも山Pのカウンセリングとして始まったことで、山Pが学んでる立場だったってことすっかり忘れていました!
先週、自分が出したコメントに恥ずかしくなりました。。。山Pが授けてる教えは全部タブレットに書いてあること、――先人たちが発見した原理原則――だったんですね!何回も水野先生が言ってることなのに、ほんと、恥ずかしくなりました。ぜんぜん学んでないってこと、披露してしまいました。。。
《自分の言葉に置き換えて伝えた。そうしなければ、彼女の心に響くことはなかっただろう。》
まさにおっしゃる通りで、もっと成熟した私(66歳)が、もっと若い時の私(11歳くらいがいいなって思ってます)に心に響く言葉でいろいろ説明できたらいいのになって思ってたんですが、それは現実的にはできないので、「先人たちが発見した原理原則を解説する子供向けの本」とか、「先人たちが発見した原理原則を子どもにうまく説明するための育児書」を書いてもらえませんか。あとは、そのようなゲームとか。我が子(今まだ4歳なんですけど)に心に響くように伝えなければ!と思いました。
良くないと思うところ
コメントにお返事をいただいてから、ずっと
Rie「そうだった!山Pが学んでるんだった!」
って思ってたので、今回の展開も心の準備ができてた感じなんですが、前回のコメントへのお返事がなかったら、まさに「冷や水を浴びせられた!」になってたと思います。
山Pのカウンセリングとして始まったのが去年の12月で、その後は真理ちゃんの第一人称で進んで来ていましたし、ここ1ヶ月位、山Pなしで過ごしてきてて、時間が経ちすぎてたんだと思うんです。山Pが第一人称のparagraphが時折混ざったら、はしごをはずす感じにならなかったのかなと思いました。また、水野先生の意向を全く理解してないコメントになってたらすみません。。。知恵を絞り出してコメントしてます。でも、毎週更新される連載じゃなくて、一気に読む読み物だったら違う印象で、ここで衝撃を受ける展開がいいのかもしれません。
後半も楽しみです。
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著者からの返事
感想ありがとうございます。
2018年5月21日 17時0分 水野敬也まさに、「一気に読むもの」として出版するので、タメランド連載は特殊であるという位置づけです。なかなか「一気の読むもの」としての感想も難しいとは思いますが引き続きよろしくお願いします。