仕事幸福真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル

真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル 第17話

 

 *

 (イラスト 大画面に真理と長岡 映画のように見ている66歳の真理)

 山咲真理は白いソファに腰掛けながら、宙に浮かぶ巨大スクリーンを眺めていた。

 スクリーンに映った映像は、16歳の自分が長岡の提案に対してうなずいたところで暗転した。

 「どうでしたか? カウンセリングを体験してみて」

 白衣姿の相沢が、穏やかな口調で言った。

 真理は相沢の質問に、すぐに答えることができなかった。

 瞳からあふれ出して頬を伝う涙をぬぐいながら、彼女は胸にこみあげる2つの感情について考えていた。

 一つは、「感動」である。

 16歳の自分が、人生の中で最も夢見ていたことを実現した。その瞬間の映像は、真理がこれまで見たどんな映画よりもドラマよりも――そして現実世界で経験したすべての出来事と比べても――感動的だった。

 そして、彼女が夢をかなえるきっかけを作ったのは、まぎれもなく、66歳の真理なのだ。

 16歳の自分に教えた内容は、タブレットに記載されていたもの――先人たちが発見した原理原則――だったが、これまで自分の人生の経験を織り交ぜ、自分の言葉に置き換えて伝えた。そうしなければ、彼女の心に響くことはなかっただろう。

 これまでの人生が、16歳の自分の夢を支えたのだ。

 しかし皮肉なことに、16歳の自分が夢をつかむ瞬間を見て、真理が感じたもう一つの感情は――それは非常に複雑なもので正確に言い表す言葉は存在しないと言ってもよかったが――その感情に最も近い言葉は「嫉妬」だった。

 夢をかなえた16歳の自分の未来はまばゆいまでの輝きに満ちている。

 対して自分の未来はどうだろう?

 真理は16歳ではない。66歳なのだ。

 加えて、真理は、16歳の自分への指導を通して夢をかなえるための原理原則を学んでしまった。そのことがなおさら、

 (もっと自分の年齢が若ければ)

 という後悔の気持ちに拍車をかけてしまっていた。

 ――真理は、こうした思いを相沢に伝えるべきか迷った。

 若き日の自分に戻ることが許されない以上、そんなことを口にしたところで苦しい思いが強まるだけだろう。

 しかし、真理は自分の気持ちを心の奥底に沈めておくことはできなかった。

 ぽつりぽつりと語り始めたが、気づいたときにはあふれ出す感情を止めることができなくなり、最後は、16歳の真理の気持ちを高めるために言った「自分の余命はほとんどない」という偽りの言葉どおり、このまま寿命が尽きてしまった方が楽なのではないかと涙ながらに訴えた。

 相沢は、真理の話に口を挟むことなく、ただじっくりと耳を傾けた。

 そして、真理が心の内をすべて吐き出すのを待ってからゆっくりと口を開いた。

 「実は、カウンセリングはまだ終わりではないのです」

 「えっ?」

 予想外の言葉に戸惑う真理に対して、相沢は言った。

 「山咲真理さん」

一度、真理の名前を呼んでから、相沢は続けた。

 「あなたは、16歳の自分が夢をかなえるのを見て、自分の人生に対する後悔が強まったと話されました。それは、16歳の自分がアイドルにスカウトされ、アイドルとして夢をかなえる人生が――実現しなかった、あなたのもう一つの人生が――今の人生よりも素晴らしいと考えているからじゃないですか?」

 真理は、相沢の質問の意味が良く分からなかった。

 今の自分の人生より、スクリーンに映る16歳の真理の歩む人生が素晴らしいのは当たり前の話じゃないか。

 相沢は、真理の顔をじっと見つめた。

 真理は、人に見られているというより小さな二つのカメラのレンズを向けられているような感覚になった。

 しばらくして、相沢が口を開いた。

 「私の口から言うよりも」

 そして相沢は立ち上がり、扉の前に立って言った。

 「本人に直接聞いてもらった方が良いでしょう」

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REVIEWS

評価

11234

良いと思うところ

作品の冒頭に山Pのシーンをもってきた理由がわかりました!

追記
続きも読みますので、大丈夫です!「ブラックガネーシャ」も読みましたし…
ただ私としては「ブラック」よりは「普通のガネーシャ」、「雨の日も晴れ男」のようなどこまでも前向きな感じの方が好きという、好みの問題でしょう。

良くないと思うところ

「自己啓発小説」しかし、小説である以上、登場人物に感情移入し、情を感じて読んでいますので、こういうのは本当にやめてほしい!テンション下がりまくり!チョット辛いこともあったので、余計に下がる…先週で終わりの方が良かった…

追記
「整形」をおぞましく感じてしまうタイプなので、真理ちゃんが整形していたとしたら、嫌いになってしまうかもしれませんし、そんな経緯も見たくはないかも…

まだこれから、未来を輝かせていこうという真理ちゃんの、失敗した老後のようなものは、残酷で見てられません…

かおり
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水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。
確かに、、、そうなりますよね、、、!現時点では冷や水を浴びせられた感じになると思うのですが、ただこれからの教え、そしてラストがこの作品のコンセプトでもあるので、可能であれば、どうすればはしごを外す感じにならないか、が知りたいです。

2018年5月14日 10時18分 水野敬也
水野敬也
評価

12334

良いと思うところ

オーディションに
落ちてしまった真理ちゃんですが、
そこで諦めずに(一度の失敗で正しい教えを間違ってると思わずに)
すぐに課題を自分で設定して行動に移していくところが本当に素晴らしかったです。

良くないと思うところ

66歳の山ピのどうしようもない
戻れない切なさが苦しかったです。
しかしそれは16歳の真理ちゃんの
未来が輝かしいものだと思っているから…
真理ちゃんの未来がどうなったかは
まだわからないのでなんとも
言えませんが話の急展開に驚いてます( ; ゜Д゜)
正直え、どういうこと…と理解が追い付いていません。
しかしこの先どうなるのかには
非常に興味があるので後半、楽しみにしています。

ぐち
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。
この展開、自分的にはいけると思っていたのですが、確かにこれまでの展開のはしごを外す流れなので今後の書き方に注意しなければならないと思っています。僕としてはこの展開こそが本書のコンセプトなので、引き続き読者視点でコメントいただけるとうれしいです。よろしくお願い致します!

2018年5月14日 20時29分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

第16話まで読んでいて、『なぜ、ガネーシャではなく、山Pなのか?』が、ずっと引っ掛かっていました。(ガネーシャのファンとしては)

今回やっと、このぶっ飛んだ(すみません)設定の必要性が分かったような気がします。

後半、人生の真理へ突っ込んで行く展開を大変楽しみにしています。

良くないと思うところ

・レインボーイズが多過ぎて、一人一人をキチンと区別して読むことが、私には難しかったです。挿絵が入ると違うのかも知れません。

・ここまで、彩花やその取り巻きは完全に悪役ですが、そのままで終わってしまうと、『そういう人たち』への嫌悪感が読後に残るように思います。

ですも
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水野敬也かおり
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 著者からの返事

感想ありがとうございます。
確かに彩花や悪役の扱いは忘れがちになるので意識にとどめておくようにします。
レインボーイズに関してはイラストを入れるのでそれで分かりやすくなる可能性があると思っています。

2018年5月21日 16時57分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

山P…ちょっとかわいそうですが、、、キラキラとした夢や若さや未来が過ぎ去ったら、やっぱり誰でもこういう心境になるんだろうなぁ、嫉妬や妬みをどうプラスに変えるか、自分がその歳になる時を想像すると…まだまだ学ぶことが沢山だと痛感してます(^^;)

まりちゃん、残念でしたがいい経験としてとらえ、諦めず立ち止まることなく進んでいるのがもちろんいいところです!

良くないと思うところ

山P、自分は愛された、大切にしてもらったという経験、記憶があればそれが糧や自信になる、人生を支えるのではないかと感じます(^-^)

どんどんAI化が進んでも、感情を汲み取れても核となる心、LQ(愛の知能指数)は未知で不変なんじゃないかなぁと。

『愛』ですが、恋愛だけじゃなくて(笑)、家族とか親子とか友情とかもひっくるめてです(*^^*)

あと本当に恐縮ですが、、、
「どんなに成功しても愛がなければ尊敬を得られず、愛すべき人にもなれない」

ジャック・マー(馬雲)会長が4月25日、早稲田大学の大隈記念講堂で満員の約1200人の聴衆を前に、『愛』の大切さを語られました。
起業家を志す若者らを前に、自分の経験を披露し、 早稲田大学に在籍する起業家からの質問にも答えられたなかで、「IQ(知能指数)」「EQ(心の知能指数)」「LQ(愛の知能指数)」で最も大切なものとして「LQ」の愛を上げられいて、、、
成功者のリアルな言葉に感動し、やはりこれが人生において一番の強みかと思ったので、ちょっと聞いて頂きたくて^ ^ズレているかもしれないのでほんと失礼なのですが…。

また今回の話が終わって最後の言葉ですが、虚勢を張っておられず、後半へ自分を追い込まれることをオープンにしてくれているような感じにもとれて…。
ずっと神経高ぶらせながら⁈の大変なご執筆、これからも楽しみにしていますし応援しています(^_-)

Shiho☆
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水野敬也
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 著者からの返事

感想ありがとうございます。
後編と前編の良いバランスを模索していきたいのでまたアドバイスいただけたらうれしいです!

2018年5月21日 16時58分 水野敬也
水野敬也
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12345

良いと思うところ

前編と後編の二編に分けて、
おそらく筆者がtamelandでの今作において一番伝えたいことを真の意味で届けるために、大半の時間(story)を前編に費やしたこと。

またそれでいて尚且つ、
そのことを読者に悟られない程の作品のクオリティと面白さを前編で構築したこと。(自分のようなものが偉そうにすいません(__))

良くないと思うところ

これからの物語がどう続くのかは正直自分の想像力なんかでは検討もつきません。too muchです。

そして、これから先の結末━━━真理を望まない(知らずにいれば良かった)という人もきっといると思います。

ふと、水野敬也さんのかつての記事『天才の倒し方』を思い出しました。

しかしながら、それらを含めた「全て」がこの作品の、そしてこの世界の“真理”なのだと思うので、自分はこの先も読ませて頂きます。


━━━22才のこんな拙い感想ですが、どうぞ何とぞ宜しくお願いしますm(__)m

三宅天真
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水野敬也三宅天真
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 著者からの返事

感想ありがとうございます。
後編に関しては、どうしても制作者としての「ドヤ感」が出てしまいそうなのでそこに気を付けながらも、あるべき姿を見つけていけたらと思います。引き続きよろしくお願いします。感想はさかのぼって「〇〇の話に関しては……」といただけてもうれしいです。

2018年5月21日 16時59分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

そもそも山Pのカウンセリングとして始まったことで、山Pが学んでる立場だったってことすっかり忘れていました!

先週、自分が出したコメントに恥ずかしくなりました。。。山Pが授けてる教えは全部タブレットに書いてあること、――先人たちが発見した原理原則――だったんですね!何回も水野先生が言ってることなのに、ほんと、恥ずかしくなりました。ぜんぜん学んでないってこと、披露してしまいました。。。

《自分の言葉に置き換えて伝えた。そうしなければ、彼女の心に響くことはなかっただろう。》
まさにおっしゃる通りで、もっと成熟した私(66歳)が、もっと若い時の私(11歳くらいがいいなって思ってます)に心に響く言葉でいろいろ説明できたらいいのになって思ってたんですが、それは現実的にはできないので、「先人たちが発見した原理原則を解説する子供向けの本」とか、「先人たちが発見した原理原則を子どもにうまく説明するための育児書」を書いてもらえませんか。あとは、そのようなゲームとか。我が子(今まだ4歳なんですけど)に心に響くように伝えなければ!と思いました。

良くないと思うところ

コメントにお返事をいただいてから、ずっと
「そうだった!山Pが学んでるんだった!」
って思ってたので、今回の展開も心の準備ができてた感じなんですが、前回のコメントへのお返事がなかったら、まさに「冷や水を浴びせられた!」になってたと思います。
山Pのカウンセリングとして始まったのが去年の12月で、その後は真理ちゃんの第一人称で進んで来ていましたし、ここ1ヶ月位、山Pなしで過ごしてきてて、時間が経ちすぎてたんだと思うんです。山Pが第一人称のparagraphが時折混ざったら、はしごをはずす感じにならなかったのかなと思いました。また、水野先生の意向を全く理解してないコメントになってたらすみません。。。知恵を絞り出してコメントしてます。でも、毎週更新される連載じゃなくて、一気に読む読み物だったら違う印象で、ここで衝撃を受ける展開がいいのかもしれません。
後半も楽しみです。

Rie
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水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。
まさに、「一気に読むもの」として出版するので、タメランド連載は特殊であるという位置づけです。なかなか「一気の読むもの」としての感想も難しいとは思いますが引き続きよろしくお願いします。

2018年5月21日 17時0分 水野敬也
水野敬也
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