仕事幸福真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル

真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル 後編 第1話

 「どういうことじゃ?」

 真理は口を閉じ、息を吐いてから言った。

 「それを説明する前に、まず、私がどんな人生を歩んだのか知ってもらった方が良いと思う」

 そして彼女は腕時計を見るように、左腕を前に出した。

 (え――)

 真理の左腕についているものを見て驚いた。

 それは、私が仕事について真理に教えるときに使った、透明のタブレットだった。

 (どうして彼女がタブレットを……)

 現実から仮想空間に行く者に渡されるはずのタブレットをどうして彼女が持っているのか分からなかったが、タブレットが映し出した映像に意識を奪われた。

 それは、若い真理が、アイドル候補生としてダンスの練習をしている映像だった。

 懐かしむような目で見ながら、真理は言った。

 「私は長岡さんにスカウトしてもらって、長岡さんが企画したアイドルグループの候補生になったんだ。歌やダンスの練習、どうしたらファンから愛されるかすごく研究して頑張ったんだよ」

 真理がタブレットを操作すると、画面はテレビ局のスタジオに切り替わった。

 「この番組覚えてる?」

 しばらく見ていると、おぼろげな記憶が蘇ってきた。番組名は思い出せないが、深夜に良く見ていた音楽番組だ。

 番組にはいくつかのアイドルグループが出ていたが、その中でも真理が中心になって笑いを取っていた。

 私はその様子を見て感動していたが、真理は表情を変えずに続けた。

 「でも、この番組に呼んでもらえるようになってから、ちょっとした違和感を持ち始めたんだよね」

 「違和感?」

 「うん。なんていうのかな……テレビに出る人はそれぞれスタイルがあるけど、私は出演前に徹底的に準備していくんだよね。それでテレビに出て、笑いが取れると、『ホッとする』。準備しているときはすごく緊張してもう、パニックになるくらいの状態なんだけど、笑いが取れるとホッとする、これを繰り返してたんだ」

 映像に映っている真理は楽しそうに話していて、心の内にそんな苦しみを秘めているようには見えなかった。

 真理は続けた。

 「それでも私は『売れたい』って気持ちの方が強かった。だって、私は、まだ赤音さんと話した夢のほとんどをかなえていなかったから。でも――」

 真理がタブレットを操作すると、スクリーンの画面が切り替わった。

 ショッピングモールの小さなステージで真理が歌っていた。ステージのすぐ前に熱狂的なファンが数人いるだけで、ほとんどの人が素通りしていく。

 「実際にアイドルになって分かったのは、売れるって本当に難しいんだよね」

 画面は、握手会のシーンに切り替わる。

 真理の前に並んでいるお客さんは10人もいなかった。

 「私が目指したアイドル――世の中の誰もが知ってるアイドルっていうのはほんの一握りで、その下にはとんでもない数の売れないアイドルがいるんだよね。深夜番組に出たくらいでは、まだまだ全然なんだよ。次から次へと新しい子も出てくるし、私が『アイエボ』の最終選考に残ったのも1年くらいしたらみんな忘れちゃってたな」

 画面の中の真理は、数少ないお客さんに対しても笑顔をふりまき、できるかぎりのサービスをしていた。

 「山Pから教えてもらったノートを何度も見返して、新しい課題を見つけて乗り越えていったんだけど……私たちのグループは売れることができなかった」

 画面の中では、真理の所属するグループが解散ライブを行っていた。

 「解散が決まったとき、アイドルをあきらめることも考えたんだ。年齢的にもかなり厳しくなってたし、他の職業で夢をかなえることも考えた。でも、やっぱりあきらめることができなかったんだよね」

 真理は画面の中で歌う自分を、じっと見つめながら言った。

 「本当の私は私の頭の中でいつも輝き続けてて、その輝きを消してしまうことができなかった」

 しばらく沈黙してから真理は口を開いた。

 「顔の手術は、すごく怖かった」

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REVIEWS

評価

12334

良いと思うところ

なんというかものすごく辛いです(T_T)
夢を叶えて幸せになれないなんて
そんなことは考えたこともなかったです。
夢を叶えてるのに幸せじゃない
人なんて本当にいるんでしょうか…?
信じれませんが、続きすごく
楽しみにしています!

良くないと思うところ

やはりタイムトラベル?ものは
ときどきどちらが話しているのか
わかりにくいときがありますね(・・;)
20代の頃~のセリフは
山Pじゃない方の真理ちゃんで合ってますか?
あと、とぼけた鳥ということは
この先少し笑いの要素が
入るのですか(*_*)?
だとしたらだいぶシリアスな
場面から急に緩くなるので
ちょっと拍子抜けしてしまうかもです(*_*)

ぐち
2人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也かおり
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。
そうですね、二人の会話は同一人物でもあるので非常に難しいところです。途中からアイドルになった方を「真理」と書くことで違和感がなければそれでいこうかなと思っています。引き続きよろしくお願いします。

2018年5月22日 22時32分 水野敬也
水野敬也
評価

12334

良いと思うところ

見つけたくない

良くないと思うところ

とても辛いですが、次も読みます!

かおり
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。今後の展開でどう落としどころを見つけるか色々苦労しそうですが、引き続き読んでいただけたらと思います。よろしくお願いします。

2018年5月22日 22時33分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

まりちゃんの進んできた道がいじらしく可愛く感じました。『教え』を体得したら、(自分が感じる幸せ度はちょっと横に置いといて)周りに希望を与えられると切に思わせてくれて^ ^

整形の話、複雑な気持ちなんですが、山Pの悲壮さをかきたてるべく、不謹慎かもしれないけれど面白かったです。

良くないと思うところ

役割語を外すと一瞬どちらが言ってるのかと思いましたが役割語を外したおかげでより臨場感あって結果的によかったかなぁと。

山P、幸せになれなかったことを知りたいなんて、、、何も知らないでいることよりもずっと切なく虚しくて。変わりように動揺したけれど同情も。。。青い鳥…どれだけ奇妙なんだ大きいんだ⁈も含めてこの先がすごく気になり、早く知りたいですー^_^

Shiho☆
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。
この先どうなるか、前編とのバランスが難しいですが頑張りますのでよろしくお願いしますー!

2018年5月22日 22時33分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

ずっと後編を楽しみにしていて、この後編の第1話ですでに涙が止まりませんでした。
自分の普段の生活で「あの時ああしていれば・・・」「どうしてあの時こっちを選んでしまったのだろう・・・」と考えるばかりで、現実の今の自分ではなく、選ばなかった方の生き方ばかりに思いをはせることがあります。
山Pの言葉が自分から出てきているようで、たまらない気持ちになりました。
第1話の最後の巨大な青い鳥の登場にはびっくりしましたが、これこそが水野さんの作品らしさのような気がします。
次回も楽しみです。

良くないと思うところ

前編がとても長く感じましたが、スマホやパソコンで読むからでしょうか・・・
単行本になればそんなに長く感じないのかな・・・と思います。

さちべえ
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。このコメントすごく大きなヒントがありました。
整形というネガティブなスタートから始まりましたが、真理の夢に対するスタンスはより感動的な流れにできる気がしてきました。
真理がどういう人生を歩んだか、その歩み方に山Pがどう感じるかを「感動」にもっていければ後編の「はしご外し感」を薄められる気がしてきました。ありがとうございます。

2018年5月23日 22時16分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

なんと!夢を叶えることと幸せになることは別なんですね!
輝いていることを実感することと幸せを感じることも別なんですね...。また前回トンチンカンな感想を出して恥ずかしくなりました。
あと、因果関係のところ、なぜか真理ちゃんの説明、良く解って真理ちゃんに美容整形に関する決断とは比べ物にならない位小さなくだらないことなんですけど(例えば、運動しないと痩せないとか、夫とまた恋人らしく過ごすには、自分の方から恋人らしく振舞わないといけないとか)早速実践に応用してみました。新たな目標ができて毎日楽しくなりました。

良くないと思うところ

子供に関する記述がなんとなく気になりました。
すごく細かいことなんですが
「20代の自分を選び、子供を産む人生を選ばせること」
ですが、子供を「産む」というところが気になりました。
子供を産まなくても、代理母や養子縁組などで、子供を持つことができる時代になっていますし、今後もっともっと技術は発達していくと思います。そもそも真理ちゃん自身が器質的に子どもが産めない体かもしれません。。。それでも、子供を持つことはできるので、人生の選択肢としては、子供を産むか産まないか、ではないんじゃないかなと思いました。じゃ、なんなのか、がわからないんですが、子供を持つか持たないか、なのかな。。。

あと、山P、「20代の自分を選び、子供を産む人生を選ばせること」をせずに、16歳に会いに行ったところが格好いいし、子供を持たなかったことは山Pの後悔の一つかもしれませんが、最大の後悔と言ってもいいというところに今まで思ってたキャラと違う感じがして驚きました。

「良くないと思うところ」ではないんですが、子どもに関する件、今後、どのように回収されていくのか楽しみです。

Rie
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。
子どもに関しては、すごくデリケートな部分なので感想ありがたいです。
「子どもを持つ」という言い回しにして、養子など色々な可能性を含む表現にした方が良さそうですね。子どもは現代的な悩みなので色々考えながらブラッシュアップしていきたいと思っています。今後ともよろしくお願いします!

2018年5月27日 18時2分 水野敬也
水野敬也
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