仕事幸福真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル

真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル 後編 第1話

 真理は続けた。

 「元々の顔を知ってる人に噂されるだろうし、手術はすごく痛いって聞いたし、お母さんが悲しむんじゃないかとも思った。でも……」

 真理はためらいながら言った。

 「今から私が言うことは、山Pを悲しませるかもしれないけど、言うね」

 そして真理は真剣な表情を私に向けた。

 「山Pから教えてもらったことが、私を手術に踏み切らせたんだ」

 私は真理の言葉で凍りついた。

 真理は続けた。

 「もちろん、顔を変えずに売れる子たちもたくさんいる。その中には世間一般的に美人とされていない子だっている。でも、私は、売れるためのありとあらゆる努力をしたんだ。それでもダメなのに『このままアイドルを続けていればいつか売れる』っていうのは、『因果関係』を無視した、単なる期待でしょう?」

 何も答えない私に向かって、真理は続ける。

 「それに山Pが教えてくれたから。どんな教えよりも一番大事なのは『勇気』だって」

 

 私は、真理と目を合わせられなくなり、うつむいた。

 真理は、深刻な空気を緩和しようとしておどけて言った。

「ちなみに、どんな手術をしたら良いかとか、どの病院が良いとか、どんなリスクがあるかとか、めちゃくちゃリサーチしたよ。山Pから教えてもらったリサーチ力でね」

 笑った方が良いということは分かっていた。でも、私は笑うことができなかった。

 部屋は沈黙に包まれた。

 真理は手首のタブレットを操作すると、しばらく何も表示されていなかったスクリーンに映像が浮かび上がった。

 美しくなった真理は、5人組のアイドルグループの一員として大勢の観客の前に立っていた。

 「現場で私を熱心に見てくれてたスタッフが大きな事務所に移ることになって、その人に一緒に移らないかって誘われたんだ。私は芸名を変えて、移籍先の事務所に所属してた女の子たちと一緒にグループを作った」

 真理は画面を指差して言った。

 「ちなみにこの衣装、私たちがデザインしてるんだよ」

 「へぇ……」

 彼女たちの衣装を見ていると、不思議とどこかで見たことがある映像のような気がした。

 真理は言った。

 「私たちのコンセプトは『女の子のためのアイドル』。たとえばファッション雑誌のモデルって身長も体つきも一般の人とは違うから真似しづらいでしょ? でも私たちグループのメンバーは全員が違う体型でどんな女の子でも誰かをお手本にできるんだよ」

 私が20代のころ、似たようなコンセプトでデビューしたアイドルグループがいたことを思い出した。当時は服飾の仕事に就こうと考えていたから注目していたのだ。そのグループはすぐにいなくなってしまったけど、情熱のある一人の人物がグループに加入することで歴史が変わることもあり得るかもしれない。

 そして真理は、インターネット動画を使って服を売るビジネスを展開したり、メンバー全員が男性役を務める演技の舞台に挑戦したり、他のアイドルと違う路線を打ち出したことを話した。

 「私はこのグループのリーダーだったんだけど、山Pから教えてもらった仕事の本質がすごく役に立ったんだ」

 画面が切り替わり、真理たちの立っているステージが豪華になった。

 とんでもなく派手な衣装を着て歌っている。

 曲が終わると、舞台袖から司会者が現れてインタビューを始めた。

 その様子で、この映像が『紅白歌合戦』のものだと分かった。

 (す、すごい……)

 私の瞳から思わず涙があふれてきた。

 それはまさに私自身が繰り返し頭の中で想像していた光景であり――彼女は、その光景を想像で終わらせることなく、現実のものにしたのだ。

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REVIEWS

評価

12334

良いと思うところ

なんというかものすごく辛いです(T_T)
夢を叶えて幸せになれないなんて
そんなことは考えたこともなかったです。
夢を叶えてるのに幸せじゃない
人なんて本当にいるんでしょうか…?
信じれませんが、続きすごく
楽しみにしています!

良くないと思うところ

やはりタイムトラベル?ものは
ときどきどちらが話しているのか
わかりにくいときがありますね(・・;)
20代の頃~のセリフは
山Pじゃない方の真理ちゃんで合ってますか?
あと、とぼけた鳥ということは
この先少し笑いの要素が
入るのですか(*_*)?
だとしたらだいぶシリアスな
場面から急に緩くなるので
ちょっと拍子抜けしてしまうかもです(*_*)

ぐち
2人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也かおり
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。
そうですね、二人の会話は同一人物でもあるので非常に難しいところです。途中からアイドルになった方を「真理」と書くことで違和感がなければそれでいこうかなと思っています。引き続きよろしくお願いします。

2018年5月22日 22時32分 水野敬也
水野敬也
評価

12334

良いと思うところ

見つけたくない

良くないと思うところ

とても辛いですが、次も読みます!

かおり
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。今後の展開でどう落としどころを見つけるか色々苦労しそうですが、引き続き読んでいただけたらと思います。よろしくお願いします。

2018年5月22日 22時33分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

まりちゃんの進んできた道がいじらしく可愛く感じました。『教え』を体得したら、(自分が感じる幸せ度はちょっと横に置いといて)周りに希望を与えられると切に思わせてくれて^ ^

整形の話、複雑な気持ちなんですが、山Pの悲壮さをかきたてるべく、不謹慎かもしれないけれど面白かったです。

良くないと思うところ

役割語を外すと一瞬どちらが言ってるのかと思いましたが役割語を外したおかげでより臨場感あって結果的によかったかなぁと。

山P、幸せになれなかったことを知りたいなんて、、、何も知らないでいることよりもずっと切なく虚しくて。変わりように動揺したけれど同情も。。。青い鳥…どれだけ奇妙なんだ大きいんだ⁈も含めてこの先がすごく気になり、早く知りたいですー^_^

Shiho☆
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。
この先どうなるか、前編とのバランスが難しいですが頑張りますのでよろしくお願いしますー!

2018年5月22日 22時33分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

ずっと後編を楽しみにしていて、この後編の第1話ですでに涙が止まりませんでした。
自分の普段の生活で「あの時ああしていれば・・・」「どうしてあの時こっちを選んでしまったのだろう・・・」と考えるばかりで、現実の今の自分ではなく、選ばなかった方の生き方ばかりに思いをはせることがあります。
山Pの言葉が自分から出てきているようで、たまらない気持ちになりました。
第1話の最後の巨大な青い鳥の登場にはびっくりしましたが、これこそが水野さんの作品らしさのような気がします。
次回も楽しみです。

良くないと思うところ

前編がとても長く感じましたが、スマホやパソコンで読むからでしょうか・・・
単行本になればそんなに長く感じないのかな・・・と思います。

さちべえ
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。このコメントすごく大きなヒントがありました。
整形というネガティブなスタートから始まりましたが、真理の夢に対するスタンスはより感動的な流れにできる気がしてきました。
真理がどういう人生を歩んだか、その歩み方に山Pがどう感じるかを「感動」にもっていければ後編の「はしご外し感」を薄められる気がしてきました。ありがとうございます。

2018年5月23日 22時16分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

なんと!夢を叶えることと幸せになることは別なんですね!
輝いていることを実感することと幸せを感じることも別なんですね...。また前回トンチンカンな感想を出して恥ずかしくなりました。
あと、因果関係のところ、なぜか真理ちゃんの説明、良く解って真理ちゃんに美容整形に関する決断とは比べ物にならない位小さなくだらないことなんですけど(例えば、運動しないと痩せないとか、夫とまた恋人らしく過ごすには、自分の方から恋人らしく振舞わないといけないとか)早速実践に応用してみました。新たな目標ができて毎日楽しくなりました。

良くないと思うところ

子供に関する記述がなんとなく気になりました。
すごく細かいことなんですが
「20代の自分を選び、子供を産む人生を選ばせること」
ですが、子供を「産む」というところが気になりました。
子供を産まなくても、代理母や養子縁組などで、子供を持つことができる時代になっていますし、今後もっともっと技術は発達していくと思います。そもそも真理ちゃん自身が器質的に子どもが産めない体かもしれません。。。それでも、子供を持つことはできるので、人生の選択肢としては、子供を産むか産まないか、ではないんじゃないかなと思いました。じゃ、なんなのか、がわからないんですが、子供を持つか持たないか、なのかな。。。

あと、山P、「20代の自分を選び、子供を産む人生を選ばせること」をせずに、16歳に会いに行ったところが格好いいし、子供を持たなかったことは山Pの後悔の一つかもしれませんが、最大の後悔と言ってもいいというところに今まで思ってたキャラと違う感じがして驚きました。

「良くないと思うところ」ではないんですが、子どもに関する件、今後、どのように回収されていくのか楽しみです。

Rie
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。
子どもに関しては、すごくデリケートな部分なので感想ありがたいです。
「子どもを持つ」という言い回しにして、養子など色々な可能性を含む表現にした方が良さそうですね。子どもは現代的な悩みなので色々考えながらブラッシュアップしていきたいと思っています。今後ともよろしくお願いします!

2018年5月27日 18時2分 水野敬也
水野敬也
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