仕事幸福真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル

真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル 後編 第1話

 顔を手術するときは本当に悩んだだろう。

 何よりも私自身がそのことを悩んだこともあるのだから、どんな不安に襲われたのかよく分かる。

 それでも彼女はありとあらゆる方法を模索しながら、夢をかなえたのだ。

 「どうして……」

 私は、泣きながら言った。

 「どうしてこんなに素晴らしい夢をかなえているのに、あなたは幸せじゃないの……?」

 もう、役割語を使う余裕はなかった。

 ただただ、彼女が幸せではない理由を知りたかった。

 しかし彼女は私の質問には答えず、「もう少し先に進むね」と言って、画面を切り替えた。

 「ええっ⁉」

 映し出された情報番組に、私は思わず息をのんだ。

 それは、真理が有名男性アイドルとの交際をスクープされている内容だった。

 しかもその男性アイドルは――私が赤音さんから「有名になったら誰に会いたいか」と質問されたときに答えた相手だったのだ。

 私には、もう何が何だか分からなかった。

 明らかに真理は、誰もが羨むであろう――いや、誰よりも私自身が羨む、理想の人生を歩んでいる。

 それはつまり、「最も幸せな人生」なはずだ。

 私は男性アイドルを指差して言った。

 「この人はひどい人だったの? 暴力を振るうとか」

 真理は首を横に振って言った。

 「そういうことはなかったよ」

 真理はタブレットを操作しながら言った。

 「ちなみに、暴力が好きだったのはこっち」

 切り替わった画面を見てさらに衝撃が走る。

 そこに映っていたのは、赤ん坊を抱きかかえて微笑む真理の姿だった。

 ――私が子どもを作れなかったことは、自分の人生における大きな後悔の一つだった。最大の後悔と言っても良いかもしれない。

 過去の自分に会いに行けると分かったとき、16歳ではなく20代の自分を選び、子どもを産む人生を選ばせることも考えたほどだった。

 真理は言った。

 「この子がまっすぐに育たなかったのは私の責任なの。私は何よりも仕事を大事にしてたから、この子と過ごせる時間がほとんどなかったんだ」

 スクリーンには、真理の息子が成長していく過程が映し出された。

 その姿を見ると、確かに彼が世間的に模範とされているような生活をしていないのが分かる。

 でも、だから、なんだというのだ。

 息子が少々道を外れたからといっても、彼女は理想の男性と付き合うことができ、子どもを産むことができている。

 この状況が幸せじゃないなんて、それは単なるわがままじゃないか。

 こらえきれなくなった私は、彼女に向かって言った。

 「……こんなの、私が経験してきた人生に比べたら天国だよ」

 そして私は、スクリーンを指差して叫んだ。

 「もし私がこの人生を生きれたのだとしたら、間違いなく幸せになっているはずだわ!」

 彼女は否定することなく、うなずいて言った。

 「分かるよ、その気持ち」

 そして彼女は画面を切り替えた。女優として活躍する彼女が、日本の映画賞の授賞式に参加している映像だった。

 「そういう思いがあったからこそ、私はずっと夢をかなえ続けてきた」

 私はもう、我慢の限界だった。

 これほどまでに夢をかなえたのに幸せじゃないと言う彼女には、私の夢を踏みにじられているような感覚すらあった。

 「どうして幸せじゃないのか、私にも分かるように説明してよ」

 責めるような口調で言うと、彼女は静かに言った。

 「その理由を、今、ここですぐに言うことはできるけど、大事なことはあなたがその本質を理解することなの」

 ――どこかで聞いたことがある言葉だ。

 デジャビュかと思ったが違う。それは私が16歳の真理を教育するために使った言葉だった。

 真理は続けた。

 「私が――私たちが――幸せになる方法は、16歳のときにすでにこの世界には存在していた。ただ、その方法はほとんどの人に伝わっていなかったのよ」

 そして真理は言った。

 「だから時代は、方法ではなく、伝え方を進化させた」

 真理がタブレットを操作すると、光が飛び出して四方八方に広がった。

 あまりのまぶしさに目を閉じた私は、しばらくしてからおそるおそる開いた。

 すると、目の前にいたのは、奇妙な姿をした、巨大な青い鳥だった。

 (とぼけた鳥のイラスト)


「真理 —成功と幸福の秘密を知ったアイドル」は毎週月曜日更新に変更します。

次回の更新は5月28日(月)です。

 

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REVIEWS

評価

12334

良いと思うところ

なんというかものすごく辛いです(T_T)
夢を叶えて幸せになれないなんて
そんなことは考えたこともなかったです。
夢を叶えてるのに幸せじゃない
人なんて本当にいるんでしょうか…?
信じれませんが、続きすごく
楽しみにしています!

良くないと思うところ

やはりタイムトラベル?ものは
ときどきどちらが話しているのか
わかりにくいときがありますね(・・;)
20代の頃~のセリフは
山Pじゃない方の真理ちゃんで合ってますか?
あと、とぼけた鳥ということは
この先少し笑いの要素が
入るのですか(*_*)?
だとしたらだいぶシリアスな
場面から急に緩くなるので
ちょっと拍子抜けしてしまうかもです(*_*)

ぐち
2人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也かおり
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。
そうですね、二人の会話は同一人物でもあるので非常に難しいところです。途中からアイドルになった方を「真理」と書くことで違和感がなければそれでいこうかなと思っています。引き続きよろしくお願いします。

2018年5月22日 22時32分 水野敬也
水野敬也
評価

12334

良いと思うところ

見つけたくない

良くないと思うところ

とても辛いですが、次も読みます!

かおり
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。今後の展開でどう落としどころを見つけるか色々苦労しそうですが、引き続き読んでいただけたらと思います。よろしくお願いします。

2018年5月22日 22時33分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

まりちゃんの進んできた道がいじらしく可愛く感じました。『教え』を体得したら、(自分が感じる幸せ度はちょっと横に置いといて)周りに希望を与えられると切に思わせてくれて^ ^

整形の話、複雑な気持ちなんですが、山Pの悲壮さをかきたてるべく、不謹慎かもしれないけれど面白かったです。

良くないと思うところ

役割語を外すと一瞬どちらが言ってるのかと思いましたが役割語を外したおかげでより臨場感あって結果的によかったかなぁと。

山P、幸せになれなかったことを知りたいなんて、、、何も知らないでいることよりもずっと切なく虚しくて。変わりように動揺したけれど同情も。。。青い鳥…どれだけ奇妙なんだ大きいんだ⁈も含めてこの先がすごく気になり、早く知りたいですー^_^

Shiho☆
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。
この先どうなるか、前編とのバランスが難しいですが頑張りますのでよろしくお願いしますー!

2018年5月22日 22時33分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

ずっと後編を楽しみにしていて、この後編の第1話ですでに涙が止まりませんでした。
自分の普段の生活で「あの時ああしていれば・・・」「どうしてあの時こっちを選んでしまったのだろう・・・」と考えるばかりで、現実の今の自分ではなく、選ばなかった方の生き方ばかりに思いをはせることがあります。
山Pの言葉が自分から出てきているようで、たまらない気持ちになりました。
第1話の最後の巨大な青い鳥の登場にはびっくりしましたが、これこそが水野さんの作品らしさのような気がします。
次回も楽しみです。

良くないと思うところ

前編がとても長く感じましたが、スマホやパソコンで読むからでしょうか・・・
単行本になればそんなに長く感じないのかな・・・と思います。

さちべえ
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。このコメントすごく大きなヒントがありました。
整形というネガティブなスタートから始まりましたが、真理の夢に対するスタンスはより感動的な流れにできる気がしてきました。
真理がどういう人生を歩んだか、その歩み方に山Pがどう感じるかを「感動」にもっていければ後編の「はしご外し感」を薄められる気がしてきました。ありがとうございます。

2018年5月23日 22時16分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

なんと!夢を叶えることと幸せになることは別なんですね!
輝いていることを実感することと幸せを感じることも別なんですね...。また前回トンチンカンな感想を出して恥ずかしくなりました。
あと、因果関係のところ、なぜか真理ちゃんの説明、良く解って真理ちゃんに美容整形に関する決断とは比べ物にならない位小さなくだらないことなんですけど(例えば、運動しないと痩せないとか、夫とまた恋人らしく過ごすには、自分の方から恋人らしく振舞わないといけないとか)早速実践に応用してみました。新たな目標ができて毎日楽しくなりました。

良くないと思うところ

子供に関する記述がなんとなく気になりました。
すごく細かいことなんですが
「20代の自分を選び、子供を産む人生を選ばせること」
ですが、子供を「産む」というところが気になりました。
子供を産まなくても、代理母や養子縁組などで、子供を持つことができる時代になっていますし、今後もっともっと技術は発達していくと思います。そもそも真理ちゃん自身が器質的に子どもが産めない体かもしれません。。。それでも、子供を持つことはできるので、人生の選択肢としては、子供を産むか産まないか、ではないんじゃないかなと思いました。じゃ、なんなのか、がわからないんですが、子供を持つか持たないか、なのかな。。。

あと、山P、「20代の自分を選び、子供を産む人生を選ばせること」をせずに、16歳に会いに行ったところが格好いいし、子供を持たなかったことは山Pの後悔の一つかもしれませんが、最大の後悔と言ってもいいというところに今まで思ってたキャラと違う感じがして驚きました。

「良くないと思うところ」ではないんですが、子どもに関する件、今後、どのように回収されていくのか楽しみです。

Rie
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。
子どもに関しては、すごくデリケートな部分なので感想ありがたいです。
「子どもを持つ」という言い回しにして、養子など色々な可能性を含む表現にした方が良さそうですね。子どもは現代的な悩みなので色々考えながらブラッシュアップしていきたいと思っています。今後ともよろしくお願いします!

2018年5月27日 18時2分 水野敬也
水野敬也
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