仕事幸福真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル

真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル 後編 第2話

 *

 話し声が聞こえたので目を覚ました。

 あまりの気持ち良さに眠ってしまっていたようだ。

 ねぼけた目をこすって声の方を見ると、

 「おわっ」

 と声をあげてしまった。

 真理が鳥と普通に話していたからだ。

 しかも、鳥のお腹の部分がちゃぶ台になっていて、抹茶と茶菓子が置いてあった。

 (この鳥、なんでもありだな……)

 鳥の仕組みに唖然としていると、私が起きたことに気づいた真理が、

 「おはよう、山P」

 と言って続けた。

 「気持ち良さそうに寝てたから起こしたら悪いと思って」

 そして真理は鳥の首に手をあてて言った。

 「この子は『サトリ』って言うんだよ」

 サトリは半目のとぼけた顔で「どーも」と言って頭を下げた。口調もぼけている。

 「山Pもこっち来て食べなよ」

 私は何か大事なことを忘れているような気がしたが、言われるがまま、ちゃぶ台の前に座り、お茶菓子を口にした。

 (お、おいしい……)

 さらに抹茶を飲んだが、これまで飲んだことのないような深い味わいだった。

 私は「結構なお手前で」と言いながら、茶碗を置いた瞬間、

 「って違うじゃろ!」

 と役割語でツッコミを入れて続けた。

 「ワシはお前が幸せになれなかった理由を知りたいんじゃ」

 すると、真理はサトリの首をなでながら言った。

 「ちなみに、サトリは飛べるんだけど、飛んでみたくない?」

 「だからふざけている暇は……」

 私の言葉をさえぎって真理が言った。

 「もう『教え』は始まってるよ」

 その言葉を聞いて、レインボーイズたちのことを思い出した。レインボーイズたちと一緒に16歳の真理を育てたときも、大事にしていたのは内容ではなく伝え方だった。

 私は改めてサトリを見た。とぼけた目にとぼけた顔。一見、ふざけた存在に見えるからこそ、大事な教えを持っているのかもしれない。

 私は、大きな決意をするように、真理に向かって言った。

 「……じゃあ、飛んでもらおうかの」

 すると真理はサトリに言った。

 「サトリ、お願いね」

 「ほーい」

 サトリの背中の羽毛が伸びて私たちのいた場所を包み込んだ。さらにソファ席も登場し、映画やドラマでしか見たことのないような豪華な席が作られた。

 (サトリ内観 近未来のファーストクラス)

 (サトリ外観)

 

 名前とは裏腹に、人間の煩悩をどこまでも具現化してくるサトリにあきれつつも、座り心地の良さに感動していると、サトリの体がふわっと浮き上がった。

 (おっ)

 遊園地のアトラクションが始まったようなワクワク感を覚える。

 窓の外に視線を向けると、サトリの体がどんどん上昇しているのが分かる。

 天井にぶつかるんじゃないかと思ったが、いつのまにか周囲は一面空になった。

 (この部屋、どういう構造になっているんだろう……)

 そんな疑問も思い浮かんだが、眺めの良さと飛ぶ楽しさに気持ちが奪われていった。

 「どう、山P? サトリは」

 隣の席の真理に聞かれ、

 「どうって……普通に楽しいが」

 普通に感想を言うと、

 「でしょ!」

 と真理は上機嫌に言った。

 「ちなみに、サトリにはどんな乗り方もできるんだよ」

 「どういうことじゃ?」

 「どんな形にもなるし、どういう風に乗ることもできるの」

 そして真理は言った。

 「山Pはどんな風に乗りたい?」

 ――これが一体何の教えなのかまったく分からなかったが、とりあえず話の流れに乗って答えた。

 「だったら、サトリの背に乗ってみるかのう。『終わりなき物語』のファルコンみたいな感じで」

 すると真理は、笑って「いいね!」と答え、

 「サトリ、お願いね」

 と言った。すると天井の羽毛が開き、私たちの座っている席が大空に向かってせり上がっていった。

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REVIEWS

評価

12345

良いと思うところ

誰もが一度は鳥のように羽ばたきたい願いにかけて、「サトリ」がうまく光と闇、希望と絶望の教えを導いてくれたなぁ、さすが「悟り」だ(笑)と思いました。
偉人での例えがわかりやすくて、発展の真実を教えられた気分です。
でもそのお陰で物理的な暮らしやすさの面で成熟した社会になれたと思います。

良くないと思うところ

(よくないということではなくて)夢を追いかける、初心を貫く上で、マイナスの影、闇となる要因も同時に考えるべきなのかなあ、夢にブレーキをかけることにならないかと考えさせられました。それをも乗り越える、ひっくるめて運命とするのかなと。その闇の面をうまくコントロールするこれからの教えが山Pを癒してくれるのかなぁと思っています^ ^
また、こうなりたいと思うことで、頑張れるし、影があるからこそ、光が見えると思いたい。

Shiho☆
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水野敬也ぐち
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。そうですね、夢とのバランスを大事にしながら最後まで書き上げたいです。引き続きよろしくお願いします!

2018年6月3日 18時17分 水野敬也
水野敬也
評価

12334

良いと思うところ

夢の光と闇がはっきり書かれていて
確かにと思うことがたくさんありました。
私の身近にもそういう人がいました。
看護師やパティシエを夢見て叶えたけど
実際の仕事にしたら辛すぎて
辞めてしまったとか…。
私たちから見えてる夢を叶えた人の
輝きの裏には必ず闇があるんですね。
どんな人でも必ず悩みがあるのと
同じですね。

良くないと思うところ

ちょっと疑問に思ったのですが、
例えばスポーツ選手なら
金メダルをとるとか野球だったら
メジャーに行くとかそういう夢を見ながら
日々練習していると思うのですが
それも叶えてしまったら今度はプレッシャーと戦う日々だったりして
闇の部分が出てくるという感じですよね?
確かにその闇の部分は私たちの想像以上に
苦しいとは思いますが、それ以上に
もっとうまくなりたいとか、
結果を出したい気持ちが強くあるからこそ
闇を越えれるくらい輝けるんだと思います
そういう人たちはやはり
とても幸せそうに見えますが
これはただ一部の才能があるだけの
人なのでしょうか?
それとも、これから
書かれる幸せになる方法も
同時に叶えてる人たちなのでしょうか?

水野先生が前半最後で夢を叶えることに
迷いがない人は後半の物語は必要ないかもしれないとおっしゃっていたので
私が思う夢を叶えた人はそういう
人なのでしょうかね…。

ちょっと色々と極端なことを
書いてしまったかもですが、
私は幸せになる方法すごくすごく
気になります。
次回も楽しみにしています!

ぐち
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

スポーツ選手の例、確かにそうですね。ここはなかなか表現が難しいところですが、納得いく感じで仕上げていきたいです。引き続きよろしくお願いします。

2018年6月3日 18時18分 水野敬也
水野敬也
評価

12234

良いと思うところ

先生自身の、夢をかなえてからの苦悩が反映されているのかな?だとしたら、それを知るのも重要なこと!

良くないと思うところ

「嘘でも輝かしい未来が待っている」としないとみんながんばれないし…

「夢をかなえた自分がどんなに幸せな人間か」ということを感じて、
「人のために生きる」とかでしょうか?!!

かおり
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。そうですね、ラスト、どういう読後感になるか教えていただければと思います。

2018年6月3日 18時19分 水野敬也
水野敬也
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