仕事幸福真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル

真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル 後編 第2話

 *

 次に気づいたとき、私は真理と会った白い壁の部屋で、サトリのハンモックの上にいた。

 (夢だったのか……?)

 そう思ったが違っていた。

 全身はびしょ濡れのままだったからだ。

 「ほい」

 サトリからタオルを手渡された。サトリと同じ羽毛でできたタオルだ。

 タオルで体を拭きながら、この部屋の壁は液晶パネルのような構造になっていて映像を映していたのかもしれないと考えていると、真理が言った。

 「ごめんね、びっくりしたでしょう」

 私は眉をひそめて言った。

 「それで……今のは一体何だったんじゃ?」

 すると真理は顔を上げた。

 天井の壁は青空を映し出している。

 真理は言った。

 「重力に縛りつけられている人間にとって、『飛ぶ』ことは大きな夢だった」

 真理がタブレットを操作すると、グライダーや気球など、これまで人間が飛ぼうとして開発した様々な発明品が立体映像として現れた。

 「山Pも、幼いころ、自由に空を飛び回りたいと思ったことがあるでしょ?」

 私がうなずくと真理は続けた。

 「そのときどんな風に考えたか覚えてる?」

 私は幼いころ、空を飛ぶ鳥を見ながら考えていたことに思いをはせた。

 空を飛ぶことができれば、学校にもひとっ飛びで行くことができる。車で何時間もかかる親戚のおばあちゃんの家にも気軽に行けるかもしれない。

 みんなが飛べたら、飛ぶことを利用した楽しい球技ができるだろうし、友達と一緒に海や山に遊びに行くこともできるだろう。

 「空を飛びたいと思った人たちも、山Pと同じように考えたんだよ」

 タブレットからは、空を飛ぼうとして知恵を絞り、実験する人たちが現れた。

 汚れた作業着で一心不乱に研究している人もいたが、どこか楽しそうな表情をしている。

 きっと彼の頭の中は、自由に空を飛び回る想像で埋め尽くされているのだろう。

 真理は言った。

 「人は夢を思い描くとき、その夢が実現したらどんなに素晴らしいだろうと、『素晴らしい面』だけを思い描く。でも実際は――」

 真理がタブレットを操作すると、先ほど私がサトリの背中で飛んでいたときの映像になった。

 楽しく飛んでいた私は、大量の鳥に襲われ、雨に打たれ、事故に遭い墜落していった。

 「でも、これは……」

 私は言った。

 「お前がわざと起こしたのじゃろ?」

 「そうよ」

 真理は続けた。

 「でも、『羽ばたき機』のスケッチを描いたレオナルド・ダ・ヴィンチも、飛行機の原型である『固定翼』を発明したジョージ・ケイリーも、ライト兄弟の頭の中にも、『空を飛ぶことは最高に素晴らしい』という思いだけがあった」

 真理のタブレットから、大量の爆撃機が飛び出して、レオナルド・ダ・ヴィンチやジョージ・ケイリー、ライト兄弟たちの発明を、彼らもろとも粉々にしていった。

 「もし、飛行機が殺りく兵器になる未来を鮮明に想像していたとしたら、彼らはこれほどまでに飛行機を発明することに情熱は燃やせなかったでしょう」

 そして真理は言った。

 「『夢』はすべて、これと同じ構造をしてるの」

 真理がタブレットを操作すると、原始時代の生活の立体映像が映し出された。

 (イラスト)

 

 「人間が狩猟生活をしていたころ、食料は確実に手に入るものではなかった。彼らにとって『確実に手に入る食料』は夢だった」

 (イラスト)

 

 「しかし、農耕が始まると、人間は農作物の世話をするために一日中働いていなければならなくなった」

 (イラスト)

 「親の決めた相手ではなく自分が好きになった人と結婚したい。そう考えて人間は自由恋愛を始めたけれど、その結果、より魅力的な人を捜し求めるうちに、結婚を決められなくなる人が多くなった」

 (イラスト)

 それから真理は、人間が『夢』を実現した結果、何が起きたのか様々な例を挙げていった。それらはすべて、人間が最初に思い描いた夢とは必ず(、、)違う結果が生まれていた。

 真理は言った。

 「山Pは私に、教えてくれたよね。古くから言われている言葉の中でも、特に、繰り返し言われている言葉があるって。その中にこんな言葉があるわ。

 『何かを得るには、何かを犠牲にしなければならない』」

 真理がタブレットを操作すると、部屋が暗くなり、タブレットから光の玉が飛び出して宙に浮かんだ。

 そして真理は言った。

 「人の描く『夢』は、満月のようなものなの」

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REVIEWS

評価

12345

良いと思うところ

誰もが一度は鳥のように羽ばたきたい願いにかけて、「サトリ」がうまく光と闇、希望と絶望の教えを導いてくれたなぁ、さすが「悟り」だ(笑)と思いました。
偉人での例えがわかりやすくて、発展の真実を教えられた気分です。
でもそのお陰で物理的な暮らしやすさの面で成熟した社会になれたと思います。

良くないと思うところ

(よくないということではなくて)夢を追いかける、初心を貫く上で、マイナスの影、闇となる要因も同時に考えるべきなのかなあ、夢にブレーキをかけることにならないかと考えさせられました。それをも乗り越える、ひっくるめて運命とするのかなと。その闇の面をうまくコントロールするこれからの教えが山Pを癒してくれるのかなぁと思っています^ ^
また、こうなりたいと思うことで、頑張れるし、影があるからこそ、光が見えると思いたい。

Shiho☆
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水野敬也ぐち
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。そうですね、夢とのバランスを大事にしながら最後まで書き上げたいです。引き続きよろしくお願いします!

2018年6月3日 18時17分 水野敬也
水野敬也
評価

12334

良いと思うところ

夢の光と闇がはっきり書かれていて
確かにと思うことがたくさんありました。
私の身近にもそういう人がいました。
看護師やパティシエを夢見て叶えたけど
実際の仕事にしたら辛すぎて
辞めてしまったとか…。
私たちから見えてる夢を叶えた人の
輝きの裏には必ず闇があるんですね。
どんな人でも必ず悩みがあるのと
同じですね。

良くないと思うところ

ちょっと疑問に思ったのですが、
例えばスポーツ選手なら
金メダルをとるとか野球だったら
メジャーに行くとかそういう夢を見ながら
日々練習していると思うのですが
それも叶えてしまったら今度はプレッシャーと戦う日々だったりして
闇の部分が出てくるという感じですよね?
確かにその闇の部分は私たちの想像以上に
苦しいとは思いますが、それ以上に
もっとうまくなりたいとか、
結果を出したい気持ちが強くあるからこそ
闇を越えれるくらい輝けるんだと思います
そういう人たちはやはり
とても幸せそうに見えますが
これはただ一部の才能があるだけの
人なのでしょうか?
それとも、これから
書かれる幸せになる方法も
同時に叶えてる人たちなのでしょうか?

水野先生が前半最後で夢を叶えることに
迷いがない人は後半の物語は必要ないかもしれないとおっしゃっていたので
私が思う夢を叶えた人はそういう
人なのでしょうかね…。

ちょっと色々と極端なことを
書いてしまったかもですが、
私は幸せになる方法すごくすごく
気になります。
次回も楽しみにしています!

ぐち
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

スポーツ選手の例、確かにそうですね。ここはなかなか表現が難しいところですが、納得いく感じで仕上げていきたいです。引き続きよろしくお願いします。

2018年6月3日 18時18分 水野敬也
水野敬也
評価

12234

良いと思うところ

先生自身の、夢をかなえてからの苦悩が反映されているのかな?だとしたら、それを知るのも重要なこと!

良くないと思うところ

「嘘でも輝かしい未来が待っている」としないとみんながんばれないし…

「夢をかなえた自分がどんなに幸せな人間か」ということを感じて、
「人のために生きる」とかでしょうか?!!

かおり
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。そうですね、ラスト、どういう読後感になるか教えていただければと思います。

2018年6月3日 18時19分 水野敬也
水野敬也
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