仕事幸福真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル

真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル 後編 第3話

 真理がタブレットを操作すると、部屋の景色が変わり、私たちはサバンナの高原に移動した。

 オレンジ色に輝く夕陽が、サバンナに生い茂る植物を同じ色に染めている。

 それは本当に神秘的な光景だった。

 真理は言った。

 「これは、私たちの先祖が、数百万年も前から見てきている光景なの。本当は、この状態ですべては満たされていた。でも、『足りない』と感じた人たちは、『こうなったら幸せになれるんじゃないか』と想像し、様々な方法で世界を変化させてきた。そして、人はそれを『発展』と呼んだ。

 でも、発展することが人を幸せにするのなら、現代人は全員が幸せになっていなければおかしいはず。なぜなら私たちは、過去に『こうなったら人間は幸せになれるはずだ!』という世界を実現しているのだから。にも関わらず、多くの人が幸せを感じられない理由は――」

 夕陽が落ち、サバンナが夜の闇に包まれた。

 見上げると、夜空には大きな満月が浮かんでいる。

 「今、自分の居る場所が『闇』であり、ここではないどこかに『光』があると考えてしまうからなの。でも、どれだけ光を目指したとしても――」

 真理がタブレットを操作すると、サトリは羽ばたき始めた。

 サトリはまず真っすぐ月に向かって飛んで行った。

 しかし近くまで来ると角度を変え、月の周辺を回り出した。

 すると月の裏側は真っ暗な闇に染まっていた。

 「光の裏側には、必ず闇が存在する。私たちが太陽に照らされたとき必ず影ができるように」

 真理がそう言うと、景色は白い壁になり、元の部屋に戻った。

 真理は言った。

 「『完璧でないものを受け入れること』」

 私は体を起こし、ノートとペンを手に取った。

 真理が次の教えを言ったのが分かったからだ。

 真理は続けた。

 「『夢』というのは人の頭の中にある。そしてそれは『完璧な状態』に思える。でも、それは月の光の部分だけ――つまり、半分だけを見ている状態でしかないの」

 真理は言った。

 「私たちの世代は、『夢をあきらめるな』『頑張れば夢は必ずかなう』と教えられて育ってきた。でも、そうやって努力し続けることは、すべてが光に包まれた場所を目指すようなもの。でも本当はそんな場所はどこにも存在しない」

 そして真理は、「今から言うことはすごく大事なことだから覚えておいて」と言って続けた。

 「『受け入れる』と『あきらめる』は同じ状態を指す言葉なの」

 真理は続けた。

 「夢に向かって進んでいる人は『あきらめる』という言葉を否定する。でも、たとえば死んでしまった子どもを生き返らせたいという願望は? 

今もなおそういう研究を続けている人たちもいるし、実現するかもしれない。でも、残りの人生を幸せに生きるためには、愛する人の死が生き返ることをあきらめる――つまり、受け入れることも必要なの」

 真理の言葉には、すべての人が賛同するわけではないだろうし、それでも「あきらめない」という人はいるだろう。

 ただ、「あきらめない」ことが同時に、「苦しみ続ける」ことを意味するということは理解できた。

 真理は言った。

 「完璧な状態を目指し続けることは苦しい。そして、完璧だと思っていた状態も、想像とは必ず違う形であることが分かる。だから幸せになるためには完璧でない状態を受け入れる必要がある。でも……」

 真理は私を見て続けた。

 「『さあ、完璧じゃない自分を受け入れよう』と言っても簡単にはできないでしょう」

 ――真理の言うとおりだった。「完璧じゃない自分を受け入れる」というのは幸せになる方法について調べれば必ず出てくる言葉だろう。でも、それが簡単にできたらすべての人はすぐに幸せになれるはずだ。

 真理は言った。

 「完璧じゃない自分を受け入れようと思ってもできない。ではどうすればいいか」

 そして真理は私に向かって言った。

 「それは、『完璧ではない他者を受け入れる』ことなの」

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REVIEWS

評価

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良いと思うところ

最初の方は何回も読んでいるうちに段々理解できてきました。
とくにあきらめと受け入れるが
同じって言うのはなかなか刺さりました(*_*)
私自身いろんなことがあきらめられなくていまだに苦しみ続けています。
でも夢を叶えるのと幸せはまた少し
別のところにあるのが理解できたので
スッキリして良かったです!

良くないと思うところ

最後の方のさとりは何度読んでも
なかなか理解が難しいです(>_<)


ぐち
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水野敬也
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 著者からの返事

感想ありがとうございます!さとりの難しい部分、具体的に教えてもらえると色々直し甲斐があるので、次回のコメントでも良いので教えてもらえるとうれしいです!よろしくお願いします!

2018年6月6日 17時23分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

五感の欲求、幸せは努力や運で満たすことは出来ても、外気に、世界に触れることがない「心」からの幸せを感じられることは奇跡のように思えてきました。鮮明に感じられることでないというか…。

今心地よさを感じとれているか、、、シンプルな感覚が究極と気づかされて、ホワッと軽くなった気分です(^-^)

「完璧ではない他者を受け入れる……」ことが遥か昔から(夫婦、家族とか、、)『つながり』が自然に出来てきたから繁栄してきたのだなぁ、これらの真理が明るい未来に続くための永久に遺す道しるべのように感じます。

自分なりにですが、感じとれたことが、この回がとても素晴らしく、思い巡らしていきたいと思います^ ^

良くないと思うところ

心から感動したのですけど、楽しむ余裕がありませんでした。。。(^^;;

「心地よさ」を感じることが、自分を支えている、つながりを支えているという実感が出てくればなぁと思います。


Shiho☆
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水野敬也
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 著者からの返事

感想ありがとうございます。確かに後半は理屈だけを説明しているので、もっと自分にとってどうか、という部分に焦点を当ててみたいと思います。引き続きよろしくお願いします!

2018年6月6日 17時24分 水野敬也
水野敬也
評価

12334

良いと思うところ

「気づくことが大切」というのは、「夢をかなえるゾウ」と同じかな?と思いました。

「自然」と「人間」の関係について、この物語に書かれているようなことを、多くの人が感じているでしょう。

「でも止められない」「自分は無力だ」「権力から逃れられない」「なぜなのか?」

そのような自問自答に答えてくれて、多くの方が納得する物語があれば、ヒットするのかな?と思いました。

良くないと思うところ

楽しいから小説を読む、物語を読むのですが、これは全く楽しくない!

かおり
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水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。確かに後編と前編を読んだうえで楽しめるか、が大事なので色々考えながら直しに入りたいと思います!

2018年6月7日 23時20分 水野敬也
水野敬也
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12345

良いと思うところ

私自身、夢に向かってがむしゃらに行動した後、あきらめたことがあります。
でも、その「あきらめ」がなぜかネガティブな感じではなかったので、この気持ちなんだろう・・・と思っていたのですが、作品中の「受け入れる」という言葉で腑に落ちました。
夢に向かって頑張っても全然期待したとおりの結果にならなかったけど、「あきらめ」て、「受け入れる」には、結果がどうであれ、行動するしかないのかもしれません。
「受け入れる」という言葉には、「自分の限界(または自分の役割)を知る」ということも含まれるでしょうか・・・

作品中ではタブレットがいろいろな景色を見せてくれますが、真理と山Pの人生を二つの大きなスクリーンで同時に映画のように見ることができたら、そこには二人?がそれぞれの人生を健気に懸命に生きている姿があるような気がして、とても愛おしいです。

良くないと思うところ

最後の「さとり」の状態、すべては全体の一部であり、つながっているという部分はとても壮大で、哲学的な感じがしました。
次回、どのように話が展開していくのか楽しみです。

さちべえ
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水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。確かにタブレットから出てくる映像とスクリーンなど厳密にまだ決めれてないのでもう少しはっきりとさせたり、良い演出ができたらと思います。ありがとうございます!

2018年6月7日 23時21分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

 ここまで一気読みをしたのですが、すごく面白かったです。個人的には前半の勢いを殺しかねないアンチテーゼを後半に持ってきたところに痺れまして、膝と好きボタンを交互にたたきまくったのですが、好みがわかれるかもしれないとも感じました。
 前半の若い真理のアイドルを目指す過程は節々で(嫉妬や面接の雰囲気など)リアルさを感じ、これを現役のアイドルや志望者の感想・意見を取り入れたらもっと生々しさがでるのかな、と思いました。(すでにやっていたらすみません)

良くないと思うところ

 成功と幸福のバランスの問題は非常に難しいものだと思います。僕はリチャード・カールソンの『小さいことにくよくよするな』を読んで、この考えを日常生活に取り入れようと訓練していて、目標はどんな状況でも幸せを感じることですが、どうしても「成功と他者への憧れ」は自然発生的に生まれてしまいます。
 この問題は僕が今最も関心を寄せている分野なので興奮しているのですが、「サクセスストーリー好き」の方は後半でテンションが下がってしまう恐れがありますね…

HANA
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