「完璧ではない他者を受け入れる……」
「そう。完璧さを求める人は、完璧ではない他者をも受け入れることができない。その経験はあなたにもあるはずよ」
真理の言葉は、私の人生を言い当てていた。
16歳の私が高校の中でトップのヒエラルキーを目指したのも、可愛くて人気のある女の子と一緒にいることで自分の価値を高まると思ったからだ。逆に、可愛くない女の子とは一緒にいるのが嫌だった。その子が優しいと分かっていても、趣味が同じだったとしても、可愛いかどうかが重要な判断基準になってしまっていた。
そして、それは付き合う男性に関しても同じことが言えた。人から羨まれるような外見だったり職業じゃなかったりすると、(一緒に歩いているところを知り合いに見られたらどうしよう)だとか(周りの人からバカにされないだろうか)と不安になってしまう。
「他人は自分を映し出す鏡と言うけれど、本当にそのとおりなのよ」
真理は続けた。
「たとえば、人は老いると美しさがなくなり、色々な作業をするのが遅くなる。そして、そういう老人に対してイライラしたり、自分の周囲から排除しようとする人もいる。でも、老人を受け入れられないということはつまり――もし自分が美しくなくなったり、これまでできていたことができなくなったりすると、自分が嫌いになり苦しくなる」
そして真理は言った。
「私たちの思春期にも、同じようなことが起きていたのよ。理想の状態を失った自分をどうしても許すことができなかった」
真理は続ける。
「完璧ではない他者を尊重し、受け入れ、優しく接する。そうすることで、自分の中にある『足りない部分』にも優しくなれる。完璧ではない自分を、受け入れられるようになるのよ」
確かに真理の言うように、理想的な人だけでなく、理想ではない人も尊重することで自分自身に優しくなれる感覚は理解できた。
「でも……」
私はこの疑問をたずねずにはいられなかった。
「どうしても許せない人がいたら、どうしたらいいの?」
このとき思い浮かべていたのは、私が借金を背負う原因となった過去の仕事仲間のことだ。もう20年以上も前の話だけど、すべての問題を私になすりつけて消えてしまった彼女に対して、いまだに怒りがこみあげてくることがある。
真理は言った。
「すべての人を許さなければならないと考えると苦しくなる。忘れないで。まず何よりも大事にしてほしいのはあなた自身の『心地良さ』よ」
それから真理はしばらく考えてから言った。
「『許せない人』については、最後の教えを知ってもらった方が理解しやすいかもしれないわ」
そして真理は言った。
「『つながりを想像する』」
好きを送るためにログインしよう!
評価
良いと思うところ
最初の方は何回も読んでいるうちに段々理解できてきました。
とくにあきらめと受け入れるが
同じって言うのはなかなか刺さりました(*_*)
私自身いろんなことがあきらめられなくていまだに苦しみ続けています。
でも夢を叶えるのと幸せはまた少し
別のところにあるのが理解できたので
スッキリして良かったです!
良くないと思うところ
最後の方のさとりは何度読んでも
ぐちなかなか理解が難しいです(>_<)
1人がこのコメントに「いいね!」しました
コメントの評価
著者からの返事
感想ありがとうございます!さとりの難しい部分、具体的に教えてもらえると色々直し甲斐があるので、次回のコメントでも良いので教えてもらえるとうれしいです!よろしくお願いします!
2018年6月6日 17時23分 水野敬也評価
良いと思うところ
五感の欲求、幸せは努力や運で満たすことは出来ても、外気に、世界に触れることがない「心」からの幸せを感じられることは奇跡のように思えてきました。鮮明に感じられることでないというか…。
今心地よさを感じとれているか、、、シンプルな感覚が究極と気づかされて、ホワッと軽くなった気分です(^-^)
「完璧ではない他者を受け入れる……」ことが遥か昔から(夫婦、家族とか、、)『つながり』が自然に出来てきたから繁栄してきたのだなぁ、これらの真理が明るい未来に続くための永久に遺す道しるべのように感じます。
自分なりにですが、感じとれたことが、この回がとても素晴らしく、思い巡らしていきたいと思います^ ^
良くないと思うところ
心から感動したのですけど、楽しむ余裕がありませんでした。。。(^^;;
Shiho☆「心地よさ」を感じることが、自分を支えている、つながりを支えているという実感が出てくればなぁと思います。
1人がこのコメントに「いいね!」しました
コメントの評価
著者からの返事
感想ありがとうございます。確かに後半は理屈だけを説明しているので、もっと自分にとってどうか、という部分に焦点を当ててみたいと思います。引き続きよろしくお願いします!
2018年6月6日 17時24分 水野敬也評価
良いと思うところ
「気づくことが大切」というのは、「夢をかなえるゾウ」と同じかな?と思いました。
「自然」と「人間」の関係について、この物語に書かれているようなことを、多くの人が感じているでしょう。
「でも止められない」「自分は無力だ」「権力から逃れられない」「なぜなのか?」
そのような自問自答に答えてくれて、多くの方が納得する物語があれば、ヒットするのかな?と思いました。
良くないと思うところ
楽しいから小説を読む、物語を読むのですが、これは全く楽しくない!
かおり1人がこのコメントに「いいね!」しました
コメントの評価
著者からの返事
感想ありがとうございます。確かに後編と前編を読んだうえで楽しめるか、が大事なので色々考えながら直しに入りたいと思います!
2018年6月7日 23時20分 水野敬也評価
良いと思うところ
私自身、夢に向かってがむしゃらに行動した後、あきらめたことがあります。
でも、その「あきらめ」がなぜかネガティブな感じではなかったので、この気持ちなんだろう・・・と思っていたのですが、作品中の「受け入れる」という言葉で腑に落ちました。
夢に向かって頑張っても全然期待したとおりの結果にならなかったけど、「あきらめ」て、「受け入れる」には、結果がどうであれ、行動するしかないのかもしれません。
「受け入れる」という言葉には、「自分の限界(または自分の役割)を知る」ということも含まれるでしょうか・・・
作品中ではタブレットがいろいろな景色を見せてくれますが、真理と山Pの人生を二つの大きなスクリーンで同時に映画のように見ることができたら、そこには二人?がそれぞれの人生を健気に懸命に生きている姿があるような気がして、とても愛おしいです。
良くないと思うところ
最後の「さとり」の状態、すべては全体の一部であり、つながっているという部分はとても壮大で、哲学的な感じがしました。
さちべえ次回、どのように話が展開していくのか楽しみです。
1人がこのコメントに「いいね!」しました
コメントの評価
著者からの返事
感想ありがとうございます。確かにタブレットから出てくる映像とスクリーンなど厳密にまだ決めれてないのでもう少しはっきりとさせたり、良い演出ができたらと思います。ありがとうございます!
2018年6月7日 23時21分 水野敬也評価
良いと思うところ
ここまで一気読みをしたのですが、すごく面白かったです。個人的には前半の勢いを殺しかねないアンチテーゼを後半に持ってきたところに痺れまして、膝と好きボタンを交互にたたきまくったのですが、好みがわかれるかもしれないとも感じました。
前半の若い真理のアイドルを目指す過程は節々で(嫉妬や面接の雰囲気など)リアルさを感じ、これを現役のアイドルや志望者の感想・意見を取り入れたらもっと生々しさがでるのかな、と思いました。(すでにやっていたらすみません)
良くないと思うところ
成功と幸福のバランスの問題は非常に難しいものだと思います。僕はリチャード・カールソンの『小さいことにくよくよするな』を読んで、この考えを日常生活に取り入れようと訓練していて、目標はどんな状況でも幸せを感じることですが、どうしても「成功と他者への憧れ」は自然発生的に生まれてしまいます。
HANAこの問題は僕が今最も関心を寄せている分野なので興奮しているのですが、「サクセスストーリー好き」の方は後半でテンションが下がってしまう恐れがありますね…
まだこのコメントに「いいね!」がついていません
コメントの評価