真理は言った。
「あなたも今後許せない人に会うかもしれない。でもそのときは――まず一番大事するのは、自分自身の心地良さ。そしてその次に、その人がこの世界に生まれて消えていく過程――世界とのつながりを想像してみて」
そして真理は言った。
「そしてそれは、人間だけではないわ。私たちの周囲にある、すべてのものはつながっているのよ」
真理は続けた。
「たとえば、日々口にする食べ物も、その食べ物がどこからやってきたのかを想像してみる。時間を少しずつさかのぼっていけば、その食べ物が世界の一部としてつながっていることが理解できるはずよ」
私は、すでに自分の一部として消化された魚のことを想像してみた。その魚がどうやって生まれ、どの海を泳いできたのか。消化された魚もまた世界の一部になっていく。
真理の言うとおりだ。
すべての存在は、つながっている。
真理は言った。
「人間は、あるときから『つながり』を意識しなくなった。『発展』するためには『つながり』を断ち切る必要があったのね。たとえば海にいる魚を多く取ることができればお金を増やすことができる。そのお金があれば他者に勝つことができる。だから一度に多くの魚を取ることのできる機械を生み出す。そしてその機会を使ってどんどん魚を取り始める。そのとき――つながりは失われているわ。なぜなら世界に存在する魚に限りがある以上、魚を取りすぎればひずみが生まれる。それはサバンナで肉食動物がいなくなってしまったようにつながりをどんどん壊していってしまう。そして最後は、人間そのものが世界からつながりを断たれてしまう日が来るでしょう」
そして真理は言った。
「サトリ、お願い」
サトリが「ほーい」と返事をすると青い羽毛がどんどん伸びて私を包み込んだ。
今度はどんな形になるんだろうと思って楽しみにしていたが、羽毛は私の口の中に入ってきて息ができなくなってきた。
(く、苦しい……)
そのまま意識が遠きかけたが、ある瞬間から一切の苦しさが消えた。
(何なのこれは……)
それはまるで海の中にいるようだった。
いや、そうじゃない。
私は、海だった。
私は存在せず、海そのものに溶けこんでいた。
「これが『さとり』の状態なの」
真理は続けた。
「ものごとの境界線がなく、敵も味方も存在しない。海であり自分――大いなる一つの存在から分かれて命が生まれ、ふたたび自分に戻ってくる」
そして真理は言った。
「すべては全体の一部であり、つながっているのよ」
私は真理の言葉に耳をすませながら、これまで感じたことのない安らぎの中を漂っていた。
「真理 —成功と幸福の秘密を知ったアイドル」は毎週月曜日に更新します。
次回の更新は6月11日(月)です。
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評価
良いと思うところ
最初の方は何回も読んでいるうちに段々理解できてきました。
とくにあきらめと受け入れるが
同じって言うのはなかなか刺さりました(*_*)
私自身いろんなことがあきらめられなくていまだに苦しみ続けています。
でも夢を叶えるのと幸せはまた少し
別のところにあるのが理解できたので
スッキリして良かったです!
良くないと思うところ
最後の方のさとりは何度読んでも
ぐちなかなか理解が難しいです(>_<)
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著者からの返事
感想ありがとうございます!さとりの難しい部分、具体的に教えてもらえると色々直し甲斐があるので、次回のコメントでも良いので教えてもらえるとうれしいです!よろしくお願いします!
2018年6月6日 17時23分 水野敬也評価
良いと思うところ
五感の欲求、幸せは努力や運で満たすことは出来ても、外気に、世界に触れることがない「心」からの幸せを感じられることは奇跡のように思えてきました。鮮明に感じられることでないというか…。
今心地よさを感じとれているか、、、シンプルな感覚が究極と気づかされて、ホワッと軽くなった気分です(^-^)
「完璧ではない他者を受け入れる……」ことが遥か昔から(夫婦、家族とか、、)『つながり』が自然に出来てきたから繁栄してきたのだなぁ、これらの真理が明るい未来に続くための永久に遺す道しるべのように感じます。
自分なりにですが、感じとれたことが、この回がとても素晴らしく、思い巡らしていきたいと思います^ ^
良くないと思うところ
心から感動したのですけど、楽しむ余裕がありませんでした。。。(^^;;
Shiho☆「心地よさ」を感じることが、自分を支えている、つながりを支えているという実感が出てくればなぁと思います。
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コメントの評価
著者からの返事
感想ありがとうございます。確かに後半は理屈だけを説明しているので、もっと自分にとってどうか、という部分に焦点を当ててみたいと思います。引き続きよろしくお願いします!
2018年6月6日 17時24分 水野敬也評価
良いと思うところ
「気づくことが大切」というのは、「夢をかなえるゾウ」と同じかな?と思いました。
「自然」と「人間」の関係について、この物語に書かれているようなことを、多くの人が感じているでしょう。
「でも止められない」「自分は無力だ」「権力から逃れられない」「なぜなのか?」
そのような自問自答に答えてくれて、多くの方が納得する物語があれば、ヒットするのかな?と思いました。
良くないと思うところ
楽しいから小説を読む、物語を読むのですが、これは全く楽しくない!
かおり1人がこのコメントに「いいね!」しました
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著者からの返事
感想ありがとうございます。確かに後編と前編を読んだうえで楽しめるか、が大事なので色々考えながら直しに入りたいと思います!
2018年6月7日 23時20分 水野敬也評価
良いと思うところ
私自身、夢に向かってがむしゃらに行動した後、あきらめたことがあります。
でも、その「あきらめ」がなぜかネガティブな感じではなかったので、この気持ちなんだろう・・・と思っていたのですが、作品中の「受け入れる」という言葉で腑に落ちました。
夢に向かって頑張っても全然期待したとおりの結果にならなかったけど、「あきらめ」て、「受け入れる」には、結果がどうであれ、行動するしかないのかもしれません。
「受け入れる」という言葉には、「自分の限界(または自分の役割)を知る」ということも含まれるでしょうか・・・
作品中ではタブレットがいろいろな景色を見せてくれますが、真理と山Pの人生を二つの大きなスクリーンで同時に映画のように見ることができたら、そこには二人?がそれぞれの人生を健気に懸命に生きている姿があるような気がして、とても愛おしいです。
良くないと思うところ
最後の「さとり」の状態、すべては全体の一部であり、つながっているという部分はとても壮大で、哲学的な感じがしました。
さちべえ次回、どのように話が展開していくのか楽しみです。
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著者からの返事
感想ありがとうございます。確かにタブレットから出てくる映像とスクリーンなど厳密にまだ決めれてないのでもう少しはっきりとさせたり、良い演出ができたらと思います。ありがとうございます!
2018年6月7日 23時21分 水野敬也評価
良いと思うところ
ここまで一気読みをしたのですが、すごく面白かったです。個人的には前半の勢いを殺しかねないアンチテーゼを後半に持ってきたところに痺れまして、膝と好きボタンを交互にたたきまくったのですが、好みがわかれるかもしれないとも感じました。
前半の若い真理のアイドルを目指す過程は節々で(嫉妬や面接の雰囲気など)リアルさを感じ、これを現役のアイドルや志望者の感想・意見を取り入れたらもっと生々しさがでるのかな、と思いました。(すでにやっていたらすみません)
良くないと思うところ
成功と幸福のバランスの問題は非常に難しいものだと思います。僕はリチャード・カールソンの『小さいことにくよくよするな』を読んで、この考えを日常生活に取り入れようと訓練していて、目標はどんな状況でも幸せを感じることですが、どうしても「成功と他者への憧れ」は自然発生的に生まれてしまいます。
HANAこの問題は僕が今最も関心を寄せている分野なので興奮しているのですが、「サクセスストーリー好き」の方は後半でテンションが下がってしまう恐れがありますね…
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