心理学グチからはじめる認知行動療法

グチからはじめる認知行動療法 第5話

 みのりちゃんとは日ごろのグチを言いあう従姉妹会を毎月二回定期的に行っている。しかし、言い争いをしてそれきりになって2ヶ月が経とうとしていた。当初は腹を立てていたが、時間がすぎていく中で気持ちは落ち着いてた。けんかになってしまったのは、私の言い方が悪かったのだろうか。


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 守口さんの家を訪ねたとき、私がアセスメントシートに取り組むことができず落ち込んでいると、守口さんは認知行動療法で憂鬱な気分を和らげてくれた。それ以降、カタツムリ日記と名づけたアセスメントシートを実践できなくて落ち込むことがあっても、気分をコントロールしながらできる範囲で取り組んでいる。

 カタツムリ日記を続けていると、状況に関係なく自動思考を書き込む箇所に必ず出てくる文章があった。


・私の伝え方が悪かったのかな


 まさに今、私がみのりちゃんに対して抱いている感情だ。

 従姉妹会をするときに使う喫茶店は自宅と職場のちょうど中間地点にあり、店の前を通る度にみのりちゃんに会いたくなった。しかし、最後に会った日のことを思い出すと、気まずくて自分から連絡することができない。

 会わなくなってちょうど2ヶ月が経った日、仕事が終わって帰り支度をしていると、みのりちゃんから従姉妹会をしないかというメッセージがスマートフォンに入った。

 2日後、私は仕事を終えて、久しぶりの従姉妹会に心を弾ませながらいつもの喫茶店に向かった。みのりちゃんから連絡をくれたことにほっと安心した。最後に会った時の出来事を気にして、引きずっている自分が情けなくなる。私も、みのりちゃんのように気持ちの切り替えができる人間になりたい。

 喫茶店に到着すると、店内にみのりちゃんの姿はなかった。私は店員に案内されて席に着くと、待ちあわせをしているので注文は後にすることを伝えた。

 みのりちゃんが来たらなんて声をかけよう。この間、言い争ったことを謝るべきなのか、それとも気にせず久しぶりと挨拶をするか。みのりちゃんはサバサバした性格なので、きっといつもと変わらない。

 待ちあわせの時間をすぎてもみのりちゃんは現れなかった。仕事が忙しいのかな……。連絡を取るためにスマートフォンの液晶画面に触れようとしたら、ドアが開くときに鳴るカラコロという鈴の音が出入口から聞こえてきた。振り向くと、疲れた顔でみのりちゃんが立っていた。私が手をあげると、みのりちゃんは気がついて力なく手を振った。

 みのりちゃんは、ネガティブな感情を吹き飛ばすようなパワフルな人で、沈んだ表情なんて滅多にないことだった。それが今、私の目の前に座ったみのりちゃんは持っていた力をすべて吸い取られたかのようだ。いつもよりふたまわりくらい小さく見える。

「みのりちゃん、大丈夫?」

 私が言葉をかけると、みのりちゃんはうなずくだけで何も言わなかった。しばらく黙ったまま時間が流れていった。

「注文しようか」

 私は無言の空気に耐えきれず、メニュー表を渡した。みのりちゃんに注文を決めたか尋ねるとうなずいたので、店員を呼んだ。

 私はアイスコーヒーを注文した。

「私も同じものを」

 久しぶりに聞くみのりちゃんの声は、覇気がなく疲れが混じっているように思えた。しばらくすると、店員がやってきてアイスコーヒーをふたつテーブルに置いて去っていった。


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REVIEWS

評価

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良いと思うところ

まあ、早く続きを読んでみたいです!

良くないと思うところ

いとこも同じ悩みを抱えているって、ちょっとゲンナリしました。

いとこの上司もクソって、なんか上司は全員クソかもしれませんね!(笑)

かおり
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コメントの評価

 著者からの返事

かおり様
コメントうれしいです!
ありがとうございます。

主人公の性格といとこの性格が違うので、同じ悩みでも反応が変わってはくるのですが……。
ゲンナリさせてしまって反省です。
精進いたします。
これからも頑張ります。

2018年8月30日 22時39分 花田 麻衣子
花田 麻衣子
評価

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良いと思うところ

自己肯定感が高く、負けん気が強そうな女性でも苦手な人はいるんだ、誰も平等に悩みを抱えて頭を抱えるところに少しホッとしました(*´꒳`*)

愚痴聞き屋さんの療法で、佳歩ちゃんにしかりみのりちゃんにしかり自ら逃げ出す(転職する)ことなく、うまく職場と調和をとれる、職場環境をよくする2人に変わって欲しいなあ、、、どんな風に変わっていくか楽しみです(^^)

佳歩ちゃんがみのりちゃんのために愚痴聞き屋さんを紹介したことは、佳歩ちゃんの持ち前の優しさもあるだろうけれど、愚痴聞き屋さんのおかげで佳歩ちゃんが一歩一歩着実に変わってきているところ、積極的になっているところが読めて良かったです!

良くないと思うところ

(良くないと思うところではありません)
4ページ目の、「苦しいときは客観的になった方が気分に左右されず早く問題を解決できます。上手に使いわけていくことが大切なんですよ」は本当にそうだなぁと。感情的になる前に気づけるように小説を通して変われたらと思います。
自分の、負けず嫌いでどうしても勝手な、余計な嫉妬をする性格にもかなり有効そうです^ ^

Shiho☆
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コメントの評価

 著者からの返事

Shiho☆様

コメントありがとうございます!
佳歩が変化していくところが伝わって嬉しいです!
私も感情的にならないように作品を通して勉強しています。
これからもよろしくお願いいたします。

2018年9月17日 13時40分 花田 麻衣子
花田 麻衣子
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