心理学グチからはじめる認知行動療法

グチからはじめる認知行動療法 第5話


 みのりちゃんは、オペレーター業務から外された一件を守口さんに話しはじめた。守口さんは丁寧にその話を聞きながら、私のときと同じようにみのりちゃんの感情に合わせて共感し、良いタイミングで相づちを打った。

 話が進んでいくにつれて、みのりちゃんは徐々に守口さんに対する警戒心を解いていったようだ。やはり守口さんは聞き手のプロだ。あれもこれも聞いてほしいと言わんばかりに、みのりちゃんの話す速度がどんどん上がっていく。私だけだったらみのりちゃんの話したいことの半分も引き出すことはできない。

「スッキリしました。聞き上手なんですね」

 みのりちゃんは一通り話し終えたあと、晴れやかな表情で言った。

「ありがとうございます」

「最初は怪しいなって思ってたんですけど。佳歩に感謝しなくちゃ」

 みのりちゃんが笑いかけてきたので、私は急いで笑顔を作った。状況を変えることができるならその方がいいが、みのりちゃん自身がグチを言うだけで充分ならそれでいいのかもしれない。

「関根さんはグチ言うだけで満足ですか?」

 唐突に守口さんはみのりちゃんに尋ねた。

「どういうことですか?」

 みのりちゃんはもう少し詳しい説明を求めた。

「僕、もう少し先まであなたを導くことができるかもしれません。紙に思いを書くだけで、嫌な気持ちを変えられるとしたらどうします?」

 守口さんは店長のときとは違い、書き出す方法を提案した。アセスメントシートを勧めるつもりなのだろう。

「お金を取ったりするのかしら。プロのグチ聞き屋さんなんですもんね?」

 みのりちゃんは表情を硬くして、守口さんに疑いの目を向けた。

「いえ、お金は取りません。初回は無料ですから」

 そう言うと守口さんは名刺をみのりちゃんに差し出した。以前、私ももらったものだ。名刺には「初回無料」と書かれている。みのりちゃんは手に取ってまじまじと見ていたが、決心したようにテーブルに置いた。

「気分が楽になるのなら試してみたいわ」

「ありがとうございます。あなたならそう言ってくださると思っていました」

 守口さんは満面の笑みでそう言うと、テーブルに二枚の用紙を並べだした。

 一枚は〈気分を表す言葉のリスト〉で私の知っているものだったが、もう一枚については私が想像していたものと違っていた。


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REVIEWS

評価

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良いと思うところ

まあ、早く続きを読んでみたいです!

良くないと思うところ

いとこも同じ悩みを抱えているって、ちょっとゲンナリしました。

いとこの上司もクソって、なんか上司は全員クソかもしれませんね!(笑)

かおり
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コメントの評価

 著者からの返事

かおり様
コメントうれしいです!
ありがとうございます。

主人公の性格といとこの性格が違うので、同じ悩みでも反応が変わってはくるのですが……。
ゲンナリさせてしまって反省です。
精進いたします。
これからも頑張ります。

2018年8月30日 22時39分 花田 麻衣子
花田 麻衣子
評価

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良いと思うところ

自己肯定感が高く、負けん気が強そうな女性でも苦手な人はいるんだ、誰も平等に悩みを抱えて頭を抱えるところに少しホッとしました(*´꒳`*)

愚痴聞き屋さんの療法で、佳歩ちゃんにしかりみのりちゃんにしかり自ら逃げ出す(転職する)ことなく、うまく職場と調和をとれる、職場環境をよくする2人に変わって欲しいなあ、、、どんな風に変わっていくか楽しみです(^^)

佳歩ちゃんがみのりちゃんのために愚痴聞き屋さんを紹介したことは、佳歩ちゃんの持ち前の優しさもあるだろうけれど、愚痴聞き屋さんのおかげで佳歩ちゃんが一歩一歩着実に変わってきているところ、積極的になっているところが読めて良かったです!

良くないと思うところ

(良くないと思うところではありません)
4ページ目の、「苦しいときは客観的になった方が気分に左右されず早く問題を解決できます。上手に使いわけていくことが大切なんですよ」は本当にそうだなぁと。感情的になる前に気づけるように小説を通して変われたらと思います。
自分の、負けず嫌いでどうしても勝手な、余計な嫉妬をする性格にもかなり有効そうです^ ^

Shiho☆
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コメントの評価

 著者からの返事

Shiho☆様

コメントありがとうございます!
佳歩が変化していくところが伝わって嬉しいです!
私も感情的にならないように作品を通して勉強しています。
これからもよろしくお願いいたします。

2018年9月17日 13時40分 花田 麻衣子
花田 麻衣子
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