心理学グチからはじめる認知行動療法

グチからはじめる認知行動療法 第8話

 店長は入社してから五年ほど、郊外の店舗で役職のない正社員として勤務したのち、都心の大型店舗に副店長として配属になった。その店舗で役職がつくということは、本社からそれまでの働きが評価されたということだった。正社員は総勢三人だ。ひとりは上司で、もうひとりは以前に郊外の店舗で一緒に働いたことのある後輩の平塚さんだった。本社から視察に来た職員が平塚という名前を口にしていたことを私は思い出した。

「大型店舗なだけあって毎日客の数が尋常じゃなくてさ。暇な店から異動してきた俺なんて全然使いものにならなくてな。それをよく平塚に助けてもらったよ。あのころあいつと朝までよく飲んでたな」

 店長は懐かしむように目を細めて大型店舗での思い出を語りはじめた。

 その店舗は従業員同士の仲がよく結束が固かった。新しく入った人にはなじみにくい雰囲気があったが、早く場に溶け込めるように平塚さんが気遣ってくれたのだった。そんな後輩に店長は感謝し信頼していた。

「あいつには本当に助けられたよ」

 現在の店長を見ていると、周囲と良好な関係を築いている話は信じられなかった。私の知っている店長は、やる気がなくて、何か失敗しても悪びれなくて、従業員たちに気を遣わせて……。マイナス要素がたくさんあった。最近は別の一面もあるのかもしれないと思うようになってきたけれど。

「忙しかったけどやりがいのある店舗だったよ」

 仲間と呼べる従業員たちと仕事をするのは楽しかった。真摯に業務に取り組む店長は、その店舗にとってなくてはならない存在になっていく。平塚さんと抜群のチームワークで売り上げも順調に伸びていき、上司からの評判もよかった。

 毎日が充実していた。配属当初はあんなにあたふたしていたのに、すっかり居心地のよい店舗になっていた。職場に行かない休日に寂しさを感じるようになるまでに。

 私が耳を疑うようなことばかり言う店長の顔を見ると、店長は察したように言った。

「今はまったくの逆だけどな。いつも早く休みになんねえかなあって思っているよ」

 店長は寂しそうに笑った。私は紙コップのコーヒーに目を向けた。褐色の液体に渦巻きを思い浮かべる。店長に対する印象がグルグルと変化していった。

 店長はコーヒーを飲むと続きを話し出した。



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REVIEWS

評価

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良いと思うところ

佳歩ちゃんの、真剣な〝おまじない^ ^″が笑いを誘いました(笑)
佳歩ちゃんらしいわーーなんて。でも誠意が店長に伝わった感がして、思いもよらないことされると魅力感じます(^^)

店長、本当は優しい心の持ち主だったのですね。そんな過去があったのなら、傷を引きずり続けるの分かる気がします。キツイことだけれど、あることだなあと。

【問題解決技法】とても丁寧な説明でした。こうやって落ち着いて一つ一つ整理していければ、挫けそうになっても、、、やる気に変えられそうです(^^)
佳歩ちゃんの心に光が差す感覚が伝わり、良かったです!

良くないと思うところ

忙しくて時間に追われて、ぐったりの時には、どうやって落ち着いて解決リストにじっくり取り組めるだろうか、と思います。。。

Shiho☆
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みかん
コメントの評価

評価

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良いと思うところ

会社も店長も佳歩も、みんな辞めればいいのにと思うけど、辞めないで原因を探れば、解決法が見えてきて、会社も店長も佳歩も今より良くなるのかも…
それならば、辞めない方が良いのかもしれない…

良くないと思うところ

店長がふてくされて仕事している理由なんてどうでもいいし、そのことで店員の士気を下げ、雰囲気を悪くしていることが全て。
会社がなぜ店長にしておくのか、店長はなぜ会社を辞めないのか、全くわからないし、佳歩が店を辞めない理由付けも弱い。
①~⑦までの〈問題解決リスト〉は、読む気がしない。今回は一番、読むのがしんどかった。
「逃げるは恥だが役に立つ」という諺の方が、説得力がある。

かおり
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