心理学グチからはじめる認知行動療法

グチからはじめる認知行動療法 第8話



 他の従業員から飲みに誘われるようになり、公私ともにいい仲間を持ったと店長は感じていた。飲みに行く回数に比例して従業員たちと親密になっていく。気の置けない仲間と過ごす時間はなんて楽しいのだろう。

 あるとき、従業員のひとりが上司のグチを言った。

「仕事ができる人だし、俺らのこと引っ張っていってくれて頼もしいけど、たまに疲れるときがあるんですよね。強引なところがあると思いませんか?」

 同意を求められて、上に立つ人は誰しもそういう部分があるのではないかと思い、返答に困った。しかし、隣の平塚さんがそのグチに共感を示した。その様子に戸惑ったが自分だけが否定的な意見を言えるわけがなく、店長も同調した。

 帰り道、上司の話題について平塚さんに尋ねると、従業員たちもストレスが溜まっているし自分たちを信頼して話をしてくれたのだから空気を読もうと言われた。

 そういうものなのかもしれない。せっかく縮まった従業員との距離を再び離すことはしたくない。彼らのストレスが発散できる場が必要だ。ときに部下同士で上司のグチを言い、団結して仕事でいい結果をだす。そのためには飲み会で多少の悪口を言いあうことがあってもいいのではないか。後ろめたい気持ちには蓋をしてしまおう。

「本当はいい上司だったんだけどな」

 店長は紙コップの中身を見つめながら、後悔を吐き出すようにため息をついた。

 上司の悪口を酒の肴にする飲み会が三ヶ月ほど続いたころ、店長は上司に呼び出された。

 いつも穏やかな上司が強い口調で、店長の作成したシフト表がまちがいだらけで、従業員の休み希望日と実際の日程が合ってないことを指摘した。

 平塚さんと一緒に確認しながら作業したのにおかしいとは思ったが、すぐに謝罪した。自分の勘違いかもしれない、と抱いた疑問は気にしないことにした。

 しかし、これをきっかけに身に覚えのないミスで上司からたびたび叱責されるようになったそうだ。

 毎日のように自分が起こしたものではないミスを指摘されると、従業員たちとの関係も徐々に変化していった。飲みに誘われる回数が減り、職場でも態度がよそよそしくなり店長に話しかける者は目に見えていなくなった。ただひとり、平塚さんだけが最後まで店長の味方だった。


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REVIEWS

評価

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良いと思うところ

佳歩ちゃんの、真剣な〝おまじない^ ^″が笑いを誘いました(笑)
佳歩ちゃんらしいわーーなんて。でも誠意が店長に伝わった感がして、思いもよらないことされると魅力感じます(^^)

店長、本当は優しい心の持ち主だったのですね。そんな過去があったのなら、傷を引きずり続けるの分かる気がします。キツイことだけれど、あることだなあと。

【問題解決技法】とても丁寧な説明でした。こうやって落ち着いて一つ一つ整理していければ、挫けそうになっても、、、やる気に変えられそうです(^^)
佳歩ちゃんの心に光が差す感覚が伝わり、良かったです!

良くないと思うところ

忙しくて時間に追われて、ぐったりの時には、どうやって落ち着いて解決リストにじっくり取り組めるだろうか、と思います。。。

Shiho☆
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みかん
コメントの評価

評価

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良いと思うところ

会社も店長も佳歩も、みんな辞めればいいのにと思うけど、辞めないで原因を探れば、解決法が見えてきて、会社も店長も佳歩も今より良くなるのかも…
それならば、辞めない方が良いのかもしれない…

良くないと思うところ

店長がふてくされて仕事している理由なんてどうでもいいし、そのことで店員の士気を下げ、雰囲気を悪くしていることが全て。
会社がなぜ店長にしておくのか、店長はなぜ会社を辞めないのか、全くわからないし、佳歩が店を辞めない理由付けも弱い。
①~⑦までの〈問題解決リスト〉は、読む気がしない。今回は一番、読むのがしんどかった。
「逃げるは恥だが役に立つ」という諺の方が、説得力がある。

かおり
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