心理学グチからはじめる認知行動療法

グチからはじめる認知行動療法 第8話


 計画を実行した後に書く項目だ。⑥はいつ、どこで、どのように実行したかをまとめていく。そして⑦には目標が達成できた場合は何がよかったのか、達成できなければ改善点は何なのかを検討していく。評価する時のコツはできなかった点よりも、少しでもできていた点に注目すること。守口さんが話していたことだ。

 私は⑥と⑦の項目の空欄の部分をうめていった。


⑥実行

 9月20日に本社から視察があった。閉店後店長とふたりで事務作業をしていると、店長が仕事のことについて自分の昔話をしてくれた。その流れで店長に「店長の抱え込んでいる仕事を一緒に手伝わせてください」と伝えた


⑦実行したことの評価

 店長は納得していない様子だったので、一緒に仕事をすることへのメリットを話したら理解してくれた。やはり、私は伝え方がうまくないと感じた。最初に客観的な視点で一度考えてから話した方がいいと思った。事務所で店長とふたりきりのときに実行したのは良かったと思う。店長が仕事の昔話をしていたことも良い結果につながった。場所とタイミングは重要だ。


 すべてを書き終えて問題解決リストを眺めた。良い結果だったせいか㈮と㈯を記入しているときのペンの動きは軽やかだった。

 問題解決技法を実践しなかったら店長にうまく伝えることはできなかっただろう。問題解決リストをもとに、頭のなかで何度も予行演習したことが結果につながった。

 それでも……。心のなかに小さな不安が沸いて出る。どんなに事前に準備をしていても、上手くいかないこともあるのだ。もし、店長が怒りだしていたら私はどうしていたんだろう。自宅で落ち込んでいる自分の姿が目に浮かんだ。ふいに守口さんの言葉が耳元で響く。

——うまくいかないときは、他の選択肢を考えて改善するように努めていけばいいんですよ。

 そうだった。また新しい作戦を練ればいいのだ。方法はいくらでもあるのだから、何度でも挑戦できる。私は気持ちが軽くなって、手にしていたペンを置いた。

 明日は店長と業務を分担する話をしよう。今までひとりでできなかったことが、店長と力を合わせることで可能になることがたくさんある。滞っていた業務が改善すると思うと心が弾んだ。職場の雰囲気も良い方向に向かう気がする。

 時計の秒針の音だけが部屋に響いていた。棚の上にある店の公式キャラクターのカタツムリンの置時計に目をやると、指でグルグルと渦を描く守口さんの姿が浮かんだ。思えば守口さんにカタツムリンの置時計を届けたことから始まったのだ。

 もし、守口さんの家を訪ねることがなかったら、今も私の頭のなかは悩みで溢れかえっていたはずだ。沈んだ気持ちで毎日をすごしながら、グルグルと鬱屈した思いを巡らせていただろう。

 認知行動療法を教えてもらったおかげで今の私があるのだ。守口さんのおかげだな……。私は守口さんに感謝の気持ちでいっぱいになった。

 今夜はよく眠れそうだ。ベッドに入って前向きな未来を想像すると、明日が来るのが待ち遠しくなった。まるで次の日の遠足を楽しみにしている子どものようだ。

 次第に眠たくなって目を閉じる。心地よい眠気がやってきて私の意識は遠のいていった。




「グチからはじめる認知行動療法」は隔週土曜日更新です。

次回の更新は10月20日(土)です。

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REVIEWS

評価

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良いと思うところ

佳歩ちゃんの、真剣な〝おまじない^ ^″が笑いを誘いました(笑)
佳歩ちゃんらしいわーーなんて。でも誠意が店長に伝わった感がして、思いもよらないことされると魅力感じます(^^)

店長、本当は優しい心の持ち主だったのですね。そんな過去があったのなら、傷を引きずり続けるの分かる気がします。キツイことだけれど、あることだなあと。

【問題解決技法】とても丁寧な説明でした。こうやって落ち着いて一つ一つ整理していければ、挫けそうになっても、、、やる気に変えられそうです(^^)
佳歩ちゃんの心に光が差す感覚が伝わり、良かったです!

良くないと思うところ

忙しくて時間に追われて、ぐったりの時には、どうやって落ち着いて解決リストにじっくり取り組めるだろうか、と思います。。。

Shiho☆
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みかん
コメントの評価

評価

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良いと思うところ

会社も店長も佳歩も、みんな辞めればいいのにと思うけど、辞めないで原因を探れば、解決法が見えてきて、会社も店長も佳歩も今より良くなるのかも…
それならば、辞めない方が良いのかもしれない…

良くないと思うところ

店長がふてくされて仕事している理由なんてどうでもいいし、そのことで店員の士気を下げ、雰囲気を悪くしていることが全て。
会社がなぜ店長にしておくのか、店長はなぜ会社を辞めないのか、全くわからないし、佳歩が店を辞めない理由付けも弱い。
①~⑦までの〈問題解決リスト〉は、読む気がしない。今回は一番、読むのがしんどかった。
「逃げるは恥だが役に立つ」という諺の方が、説得力がある。

かおり
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