心理学グチからはじめる認知行動療法

グチからはじめる認知行動療法 第9話

 店長の話を聞いた翌日、滞りなく業務を行うための話し合いをしていた。私が声をかけても、目の前にいる店長はむすっとした表情をしている。想像していたのと何かが違う……。穏やかな空気、にこやかな表情、次々と仕事の担当が決まる、という考えは期待外れに終わった。

 問題解決リストを実行したときの、表情の和らいだ店長はどこに行ってしまったのだろう。もしかしたら私は幻覚を見たのかもしれない。

「商品の発注なんですけど、月二回在庫確認して不足分を注文するというのはどうですか?」

「……ああ。いいんじゃない」

 そっけなく返す店長に気落ちしそうになるが、話し合いの場を作ってもらえるだけありがたいと思いなおした。今までちょっとした仕事の話です、まともに取り合ってもらえなかったのだ。

 他人の顔色をうかがいながら話を進めるのは疲れる。しかし、よりよい職場にするためにはここが踏ん張りどころだ。

 私は守口さんのにこやかな表情を思い出した。笑顔は相手の警戒心を解く最良の武器だ。私は口角を上げて店長を見る。店長は相変わらず、仏頂面だった。

「その他に割り振ったほうがいい作業ってありますか?」

「別に」

 心がくじけてしまいそうなくらい、やる気のない返事が続く。私は思わず口角を下げそうになったが我慢した。

「では今日はこのくらいにして、後々困ったことがあったらまた相談してもいいですか?」

「ああ。そうしてよ」

 店長は立ち上がると、私に背をむけて事務所から出ようとしている。取りあえずは無事に話し合いができたことをよしとしよう。分担する業務もいくつか決まり、職場環境が変わることへの期待に気持ちが弾んだ。

「若月さん」

 店長はドアの前に立ち止まり、振り返ることなく私に声をかけた。

「はい。何ですか?」

「これからよろしく」

 店長はぶっきらぼうに言うと、そのままドアを開けて事務所を出ていった。


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評価

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良いと思うところ

新しく展開されたのはいいと思いました。

良くないと思うところ

ヒロインは、なぜこんなにも会社が良くなるようがんばっているのだろう?…と考え、ひょっとして、出資者の一人なのかもしれない…と今は疑っています(笑)

かおり
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