心理学グチからはじめる認知行動療法

グチからはじめる認知行動療法 第9話

 閉店後の事務所に店長、大山さん、村上くん、私の四人が輪を作って椅子に座っていた。

「で、どうして辞めたいと思ったの?」

 店長の問いかけに大山さんも村上くんも「気分屋のあんたのせいだよ」という言葉を飲み込んだのが私にはわかった。

「どうしてって……。理不尽なことで怒られるのが耐えられないっていうか」

 村上くんがふてくされた様子で言った。

「立て続けに起こるとつらくなるよね」

 つけたすように私が続けた。さすがにふたりとも店長本人を目の前にして感情を表には出せないのだろう。怒っているというよりは強張った表情をして店長に向きあっていた。

「忙しいときにふたりに負担をかけてしまったと店長と話していたの。これからは気をつけるようにします。」

 私が視線を送ると、店長は不愛想に返事をした。

「あ、ああ」

 私が話をまとめて店長に同意を求めるという形で話の流れを作った。店長が感情的にならないようにするためにはこの方法が一番妥当だと思う。

 店長の言動によっては、大山さんと村上くんはこの店を辞めてしまうかもしれないのだ。店長を刺激しないようにして、穏やかに話し合いが進むようにしなければならない。

「嫌な気持ちにさせてごめんなさい。これからもっとみんなが働きやすいようにしていくつもりだから、このまま一緒に続けてもらえませんか?」

 私は頭を下げた。店長も私の姿を見て軽く大山さんと村上くんに向かって会釈した。これでうまくいってほしい。とりあえずここは表面上だけでも乗り切ろう。今後、業務が改善すればトラブルも減って店長の機嫌の悪いことも少なくなるだろう。職場の雰囲気もよくなってふたりも働きやすくなる。

「まあ、そういうことなら――」

 村上くんが私の言うことを受け入れようとしている。このまま問題なく話し合いは終了してふたりとも辞めずに、明日からもがんばっていきましょう、となりそうだ。



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評価

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良いと思うところ

新しく展開されたのはいいと思いました。

良くないと思うところ

ヒロインは、なぜこんなにも会社が良くなるようがんばっているのだろう?…と考え、ひょっとして、出資者の一人なのかもしれない…と今は疑っています(笑)

かおり
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