心理学グチからはじめる認知行動療法

グチからはじめる認知行動療法 第9話

 守口さんに思いついた原因を伝える。

「今あげた原因にそれぞれ100%のうちどれくらいか数字をつけてみてください」

 言われたままに数字を割り当てた。

・店長の気分の浮き沈み 40%

・話し合いの場で感情的になってしまった大山さん 5% 

・店長にひどい仕打ちをした平塚さん 20%

・みんなの気持ちを理解できない自分 30%

・運が悪かった 5%

 守口さんは「100%自分」と書いた円の隣に、五つの原因を円グラフで表した。

「ほら。自分だけのせいではないでしょう」

 ふたつの円グラフを見比べる。図にすることで、原因が分散されたことが一目でわかった。たしかにそのとおりだと思わせる説得力があった。眺めていると、自分だけが原因ではないと少し気持ちは楽になった。

 しかし、それを知って何になるというのだろう。私以外の原因がある、ということに気づいただけなのだ。認知行動療法で客観視しても周囲を変えることはできない。現状は変化しないのだ。

「気持ちが落ち着きませんか?」

 黙ったままの私に守口さんが気遣うように声をかけた。口を開くと嫌なことばかり言ってしまいそうだ。

「若月さん?」

「……今だけの気休めはいらないです。もっと状況を変えてしまう方法を教えてください」

 私の言葉に守口さんは丁寧な口調で返答する。

「以前もお話ししたように認知行動療法は周囲を変化させるものではなくて――」

「自分だけが、がんばっても周りがそれに答えてくれなきゃ全然意味がないじゃないですか」

 思っていたよりも大きい声がでたことに動揺した。守口さんも驚いた顔で私を見ている。

 これまで認知行動療法で冷静になることによりさまざまなことに気づくことができた。自分の抱えている悩みから解放されるために、客観視できるようになるということはとても必要なことだ。

 しかし、それだけだ。自分の気持ちをコントロールするだけにすぎないのだ。私が望んでいるのは現状を変える力なのだ。


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良いと思うところ

新しく展開されたのはいいと思いました。

良くないと思うところ

ヒロインは、なぜこんなにも会社が良くなるようがんばっているのだろう?…と考え、ひょっとして、出資者の一人なのかもしれない…と今は疑っています(笑)

かおり
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