心理学グチからはじめる認知行動療法

グチからはじめる認知行動療法 第10話

 翌日、職場の事務所で私は店長に深々と頭を下げた。

「ちょっと、何だよ。大山さんたちの件は先週で終わったんじゃないの?」

 私はもう一度話し合いの場を作ってもらえないかと店長に頼んだ。顔をあげると店長は困惑していた。

「ふたりとも辞めたがってんだから無理だよ」

 店長は手をひらひらと振った。

 昨夜、私は現状を改善するにはどのような行動をとればいいのかを考えた。カタツムリ日記や認知再構成法、問題解決リストを読み返してヒントを探した。問題解決リストを作成したときに、自分の抱えている問題を解決するためには「店長が抱えている仕事を自分も一緒に手伝いたいことを伝える」ということが必要だと考え問題解決技法を実践した。実行後の評価の項目に、「店長は理解していない様子だったので、一緒に仕事をすることへのメリットを話したら理解してくれた」とあった。

 問題解決リストを読みながら、昔の自分が今の答えを教えてくれているのだと感じた。

 メリット……。みのりちゃんからバランスシートについて教えてもらったときにでてきた言葉だ。

「大山さんと村上くんがいなくなるのは困りますよね?」

「そりゃあ、スタッフの数が減るのは勘弁だよ。でも仕方ない」

 店長も私も思いは同じなのだ。引きとめるためには店長がふたりと話し合ってもらわないといけない。そのために、私はできることをするのだ。

「ひとつ提案があるんですけど」

 私は店長に、大山さんと村上くんが辞めることで発生するメリットとデメリットをあげてみることを持ちかけた。

「それ、なんか意味あるの?」

 店長は気が進まないようだった。

 私は笑みを作ると、机や椅子の位置をずらしてスペースを作った。空のゴミ箱をふたつ並べる。数メートル離れたところに椅子もふたつ。

「何なんだよ」

 わけがわからないという顔をしながら店長は椅子に腰掛けた。私はシュレッダーの脇にある不要になった紙を何枚か手に取ると、店長の隣の椅子に座った。

「丸めてもらっていいですか?」

 私と店長は紙を一枚ずつ丸めてボール状にして床に置いた。

「玉入れゲームです。辞めようとしているふたりに投げつけるような気持ちでゴミ箱へほうってください」

 紙ボールをひとつ掴んだ店長を私は手で制する。

「黙ったままではなくて、ふたりが辞めることで起きるメリット・デメリットを言いながら投げてください。スカッとしますよ。ストレス発散的な感じです」

「……ゴミ箱ふたつあるけどどっちでもいいの?」

「メリットのときは店長の前の、デメリットのときは私の前にあるゴミ箱で」

「くだらないな」

 店長は鼻で笑うと、紙のボールを手にして形を丸く整えた。



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REVIEWS

評価

12345

良いと思うところ

守口さんに対する態度も副作用だったのだなぁと。
佳歩ちゃんのこれから、未知数だけれど周りから信頼される、頼りにされる人になるのだろうな、それで佳歩ちゃんはまた悩む、、、の繰り返しなんだろうなぁと、でも守口さんの教えで今より楽天的に進められると確信が持てました(^-^)

佳歩ちゃんの 〝七転び八起き〝的な感情の日々に勇気づけられました。

一呼吸おいて、まずは自分が冷静になることの大切さ、認知療法、自分にとってじわじわとした原動力になっていくと思います ^ ^

どうもありがとうございました。単行本楽しみにしています ‼︎(*^▽^*)

良くないと思うところ

みのりちゃんの選択肢、、、みのりちゃんの立ち位置ならばそうなのでしょうね。

Shiho☆
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コメントの評価

 著者からの返事

Shiho☆様

コメント嬉しいです!
Shiho☆様のコメントにいつも励まされていました。

最後まで読んでいただきありがとうございました!
単行本になるように頑張ります。

2018年11月15日 17時6分 花田 麻衣子
花田 麻衣子
評価

11234

良いと思うところ

とにかく書いてる、書けてるところ。

良くないと思うところ

「季語」のようなものが入っていればいいなと思いました。(また従姉妹会か…)とため息が出ますが、そこに行くまで涼しい風が吹いていたり、窓から紅葉が見えたりしたら、以前の従姉妹会との時間の隔たりが感じられるでしょう。

登場人物に好きな人がいません。

ヒロインが店寄りの人間で、共感できません。

まずは従業員の味方をして、店長を辞めさせようとして対決して、そこから店長なりの理由も知り、店長にやる気を出させていくとか、そういう展開ならまだわかりますが…

店長なりの理由はあるのですが、店長のやっていることはただのわがままであり、何の関係もない従業員に、嫌な思いをさせていいとは思いません。

今回ラストということですが、途中で読むのをやめてしまいました。

例えば、「従姉妹会」ならそれをイメージしながら読みたいので、もうちょと、どんな場所でやってるのかとか、天気はどうなのかとかを、書いてほしいです。

かおり
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コメントの評価

 著者からの返事

かおり様

いつも貴重なご意見をくださり本当に有り難いです。
これからも精進いたします。
コメントありがとうございます!

2018年11月15日 17時10分 花田 麻衣子
花田 麻衣子
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