仕事幸福真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル

真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル 第1話

ただ、この件に関しては彩花だけを責めるわけにはいかない。こうなってしまった最大の原因は、残念ながら私にある。

あれほどまでに小学生で輝かしい経歴を収めた私は中学に上がり、まず、勉強についていけなくなった。あんなに得意だった算数も、つるとかめの数なら一瞬で分かったのに、XとYに置き換わると、コナンでも解けねーよってくらいの難解なミステリーに変貌した。これをきっかけに他の科目も軒並み点数が下がって、勉強することがまるごと嫌いになってしまった。

 成績と比例するように身長もピタリと止まった。小学生のときは平均以上だったのに、155センチの今はクラスでも前の方だ。

 ただ、「MARI YAMASAKI」のブランド力低下の最大の原因は、勉強や身長ではなく、ぶっちゃけた話、顔だと思う。これは私の持論だが、小学生のときは話の面白さや活発さによって作られる雰囲気とビジュアルの境界線が曖昧だけど、中学に入ってからは顔のパーツの造形がより客観的に見られるようになり、彩花みたいに鼻が高くてぱっちりとした二重瞼の子が評価されるようになる。対して一重瞼で小鼻の私は「どこにでもいる普通の顔の女の子(悪い意味での大和撫子)」に凋落してしまった。こうしてクラスのみんなから振り向いてもらえなくなった私は、アイドルのモノマネや自虐ネタを全力で駆使することで、スクールカーストの中の上の位置を死守していた。

  でも、学芸会の出し物で、「森の木1」になりたくなくて「通行人A」を死守するような哀れなパイの奪い合いは、もう終わりだ。

――どの本だったか忘れてしまったけど(もしかしたら漫画だったかもしれない)、強烈に頭に残っている話がある。それは、

「生まれつきカースト(身分)が決まっている国では革命が起きない」

ということだ。

生まれつき身分が決まっていると、その身分でいることが当たり前になっていて、今とは違う自分になろうとは思わないらしい。

じゃあ、革命を起こすのは一体どういう人なのか?

それは、

 「奪われた人」

 だ。

 地位も名誉もお金も、生まれつき持ってなければ手に入れたいとは思わないけど、一度与えられた状態を奪われると「返せや、ゴラァ!」とブチ切れて革命を起こすのだ。

 この話、めちゃくちゃ腑に落ちた。五臓六腑に染みわたった。どうして私がいつもクラスメイトのイケてるランキングを気にして、少しでも上へ行こうとあがき続けるのか、ようやく分かった。

 私は、小学生のころの輝きを奪われた者だからだ。

 だから、今日という日は、『ハニーズ』にとっては、アルバイトが一人増えただけかもしれないけど――私にとっては、革命へ向かって一歩を踏み出すという、偉大な一日なのだ。

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REVIEWS

評価

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良いと思うところ

16歳の話はおもしろくて、ぜひ多くの方に読んでもらいたいと思います。

良くないと思うところ

「66歳のヒロインが16歳の自分に会いに行く」という冒頭が、イメージしにくく、ここで読むのをやめてしまう人がいるのではないかと危惧しています。
「16歳の話」から始めて、おばあさんが登場してから冒頭の部分にもっていった方が、良くないでしょうか?

2017年12月22日 2時39分 カヲリ
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 著者からの返事

感想ありがとうございます。
冒頭の状況、もっと分かりやすくする可能性を考えてみます。また、冒頭が前編の最後で大きく影響してくるのでそこを見てもらってからご意見さらにいただけたらうれしいです!引き続きよろしくお願いします。

2017年12月23日 5時32分 水野敬也
水野敬也
評価

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良いと思うところ

水野さんのテンポがよく出ていて、水野さんの昔からのファンはどんどん引き込まれていくと思います。

良くないと思うところ

水野敬也初心者の人が読むと、「タイムとラベルで昔の自分を指導する」設定がわりと普通で、そのわりには少しわかりにくいので、物語に入り込む前に終わってしまいそうな気がします。

2017年12月25日 13時51分 有村信一郎
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島津
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 著者からの返事

なるほど、やはり冒頭には工夫が必要だということですね。
ありがとうございます!

2017年12月26日 23時52分 水野敬也
水野敬也
評価

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良いと思うところ

話のテンポも内容の水野さんらしさも最高です
冒頭の人工知能の相沢で「神様に一番近い動物」に出てきた相沢を思い出してクスッとしてしまいました
これからどう話が広がるか楽しみです

良くないと思うところ

(明確に「悪いと思う点」という欄がレビューに設けられているサイトのシステムに驚いてますが…)あえて書くなら人生に悔いを残した66歳のおばあちゃんの言葉、助言に説得力があるのか現時点でまだ分からないのでこれからどうなるのか気になります

2017年12月25日 16時56分 チョコ
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 著者からの返事

助言の説得力については2章で出てきます。そこで新しい手法を取っていますが説得力が出ているか検証いただけたらうれしいです!

2017年12月26日 23時53分 水野敬也
水野敬也
評価

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良いと思うところ

ターミネーターのように全裸で登場する老婆やアイドルの格好で納得する老婆に突っ込みを入れる女子高生等のイメージしやすい笑い、ギャグの要素は読んでいて面白かったです。

良くないと思うところ

主人公が女子高生なのか、老婆なのかがわかりません。両方ともにあまり差のない量の説明や感情の描写をしてしまうと少しくどいと思います。全体的に説明が多い気も。そのせいで面白いところはテンポがいいのに、説明のところで急に足元がもたつくように感じます。そこはもっとさらっとでいいんじゃないか…と思うところがありました。あとは読み手(ターゲット)をどこに設定しているのだろう?とも思いました。これから人生を切り開いていく若い方なのか、自分の人生を振り返って、もし過去に戻れるのなら…と一度は考えたことがある大人なのか。水野さんのスパルタ婚活術を大変面白く読ませて頂きましたが、あの本はターゲットが「アラサー婚活女子」とピンポイントに明確でしたので、書かれていることも単純明快、的を射ていると思いましたが、この物語は誰に向けたものなのかが不明で、それゆえに物語に説得力を感じず、心を掴まれる程ではなかったです。
老婆の方がキャラクターが定まっていないようにも感じました。第一話後半の語りの部分とか。話を展開するために作者の言葉を喋らされてる感があります。本当の彼女ならこんなこと喋らなそうだなと思いました。

2017年12月26日 10時0分 山重彩
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 著者からの返事

丁寧な感想ありがとうございます。
老女のキャラは確かにそうですね。もう少しミステリアスな雰囲気を持たせてもいいかもしれません。設定としては老女はタブレットに書かれてある内容に従って16歳の真理を育てているのでそのあたりをふくらませることで老女の人間らしさがでるかもしれないですね。ただ同時に、実用を入れる上で老女は「権威」でもある必要があるので自信を持っててほしいというのもあって、、、。章が進んでから振り返ってみます。

2017年12月26日 23時55分 水野敬也
水野敬也
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良いと思うところ

相変わらず面白いのと!それ以上に、現実を変えてくれる言葉がメインで進んでいくような。普通の小説じゃなくて。実用書だなぁと。先生らしくていいと思います◎
また、場面で各々にハッキリした色があるので(他の方が書いた作品に比べて、ちょっと読むモノにしては長いけど〜)単調にならず、最後まで一気に読めます。特に、16歳の真理ちゃんのキャラが事細かく描かれてるのは、さすがでした(笑)

良くないと思うところ

冒頭の真理が、人生が終わるような66歳のおばあちゃんだということが、何度読んでもイメージしづらく。どうしても、物足りなさを感じながら読み進めます。16歳の真理ちゃんはあんなに伝わってくるから〜ギャップがありすぎて(笑)最初から、真理ちゃんは真理ちゃんで居てほしいというか。んーなんというか。

2017年12月26日 15時7分 takamin
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 著者からの返事

なるほど。それはその通りですね。16歳の真理の延長線上で66歳の真理がいるのだから、真理っぽさ、もっと言うと、真理が取りそうな笑いの行動は冒頭に含ませるべきだと思いました。ありがとうございます!!!

2017年12月26日 23時57分 水野敬也
水野敬也
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