仕事幸福真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル

真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル 第3話

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 ファミリーレストランのソファ席で、私は猛烈に緊張していた。

ドリンクバーの野菜ジュースのストローを持つ手が震えてしまっている上に、緊張ですぐに喉が渇いてしまって、不自然なくらい何度もストローに口をつけている。ちなみに本当は野菜ジュースではなくメロンソーダを飲みたかったのだけれど、子どもっぽいと思われると嫌なので、美容をケアしてる感を演出するために野菜ジュースを選択した。

ここは、電車を30分ほど乗り継いでやってきた街のファミリーレストランで、ハニーズとは違う、全国展開しているチェーンのお店だった。

 そして目の前には、レインボーイズのメンバーの一人、桃瀬愛之介さんがいる。

 「まりりんは――」

 低音で深みのある声で桃瀬さんは言った。

 「どうしてアイドルを目指してるの?」

 そして桃瀬さんは「ごめん、勝手にまりりんって呼んじゃったけど、いい?」と、幼い少年のような笑顔を見せた。

 「あ、いえ、全然、全然大丈夫です」

 私はそう言いながら顔をうつむけ、ストローに口をつけた。

 緊張と恥ずかしさで桃瀬さんの顔をまともに見ることができない。桃瀬さんが着ている薄ピンク色のシャツの胸元に掛けられているサングラスの高さが、私の目線の限界だ。ただ、顔を直接見なくても、桃瀬さんの魅力からは逃れられなかった。

 長い茶色の髪の桃瀬さんは、鼻が高く瞳が大きくて完璧と言っていいほどのカッコイイ男の人なのだけれど、その最大の魅力は声だった。耳を通過して胸の奥に響いてくるような低音の甘い声は、聞いているだけでふわふわと体が浮かんでしまいそうになる。

 「アイドルになりたい理由は」

 私は目の前のグラスを両手で持ち、野菜ジュースに話しかけるように言った。

 「ちやほやされたいから、かな?」

 すると桃瀬さんは笑い声をあげた。

 「まりりんは、正直だね」

 それから少し真剣な口調に変えて言った。

 「でも、それって照れ隠しで言ってない? 本当の理由も知りたいな」

 桃瀬さんにそう言われ、顔を熱くさせながら答えた。

 「私、橋本明香里ちゃんみたいになりたいんです。彼女は他のアイドルの子と比べて飛びぬけて綺麗ってわけじゃないんだけど、すごく魅力があって、いつも頑張ってて、話も面白いし……彼女を見てると『私も輝けるかもしれない』って思えるんです。だから明香里ちゃんみたいに、他の人に希望を与えられるような――」

 そこまで言って、

 (私、何をこんなに熱く語っちゃってんだろ)

 と恥ずかしくなって顔をうつむかせた。ただすでに下を見ながら話していたのでアゴと胸を引っ付けるような動きになった。

桃瀬さんは言った。

 「輝いてるね」

 「そうなんです。あかりんって本当に輝いて……」

 「いや、あかりんじゃなくて、まりりんが」

 「へ?」

 予想もしなかった言葉に思わず顔を上げた。

 桃瀬さんは、大きくて澄んだ瞳を私に向けて言った。

 「自分の夢を語ってるときのまりりん、すごく輝いてたよ」

 自分の顔が熱くなり、熟れたトマトみたいになってるんじゃないかと本気で心配した。

 でも次の瞬間、私はさらに緊張することになった。

 対面に座っていた桃瀬さんが立ち上がり、私の隣にやってきたのだ。

 左隣に座った桃瀬さんは、右手を私の背もたれのところに置いた。まるで私の肩が抱かれているような状態になり、背筋がピンと伸びてしまった。先ほどよりもさらに耳の近くで聞こえる桃瀬さんの声に意識が遠のきそうになる。

 桃瀬さんは言った。

 「どうしてまりりんをこのお店に連れてきたと思う?」

 私は首を横に振る。この状況でそんなことを考える余裕なんてない。

 「それはね……」

 桃瀬さんは話し始めたが、私の頭の中では、先ほどの「輝いてるね」という言葉がこだましていた。いや、こだまというよりリフレインだ。意味は同じだけれど、雰囲気的にリフレインだった。「『輝いてるね』の言葉がリフレインする」。うん、歌の歌詞みたいだ。

 「おい!」

 おい、と聞こえたときも「輝いてるねぇ、オイ!」と小気味のいい合いの手が入れられたくらいにしか思わなかったが、

 「おい、聞いておるのか!」

 と言われハッと我に帰った瞬間、

 「おわぁ!」

 と叫んでしまった。

 私の右隣の席に、山Pが座っていたからだ。

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REVIEWS

評価

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良いと思うところ

水野敬也様!こんにちは!
作品の良いと思う点を書くにあたって、
ノン!は、こう!水野敬也様の作品を読み続けているから、書ける見たいな、的を得た、水野敬也様の心に響くような感想を述べたかったのですが、ノン!の感想は、とにかくワクワクして、楽しかったし、続きが早く読みたいです!しか思い浮かびませんでした(笑)

良くないと思うところ

良いと思う点が、そんな感じなので、悪いと思う点は、全く無いのですが、ただ、この作品の感想とは、関係ないのですが、せっかく個性豊かな作家の人達が、タメランドには、集まっているので、1つのテーマを、1話は、水野敬也様!2話は、また別の方!
見たいな感じで、作家から作家にバトンタッチしていく作品も読んで見たいです!

2018年1月17日 15時20分 退会済みユーザー
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コメントの評価

 著者からの返事

ご感想ありがとうございます!引き続きよろしくお願いします!他の作家たちにもコメントいただけるとすごくうれしいです!

2018年1月18日 8時15分 水野敬也
水野敬也
評価

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良いと思うところ

一話からの真里ちゃんの細かな心理描写は、あっぱれ面白くo(^▽^)oくすくす笑っちゃいます。先生の最もなワザ満載で(笑)知的ウケもし、さすがだなぁと。読み進めていくうちに、仕事についてシリアスで、流儀を改めて考えさせられました。組織の中にいるとどうしても仕向けられて、忙しい日々に流されて意欲、意思もボヤけてそのまま過ぎていく感がありますが、要所要所でハッと思わされ勇気づけられる言葉に、改めてモチベーションを上げていこうと生気に満ちてる仕事をして行きたいなと思いました。山Pがどのような試練を克服してきたのかも含め、イケメンズの真里ちゃんへのいい影響、これからの展開が楽しみです!^ ^

良くないと思うところ

悪いなんておこがましいのです、が老女とイマドキの女子高生の差を強調させるべく、年配の特徴を可笑しくオーバーに書かれていると勝手に思い込んでるのですが、1話の老女の唾のくだりは少しだけ卑下っぽく感じました。老人役割語⁈でもワシとか女性っぽくない言葉遣いも少し気になりました。(おじいさんと誤解しそうです)

2018年1月18日 5時7分 Shiho☆
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コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。第3話は周囲の評判も良いのですが、今後の内容で3話で感じる新鮮さや面白さが保てるかどうか気にしながら頑張っていきたいと思います!また感想いただけたらうれしいです。よろしくお願いします!

2018年1月20日 13時0分 水野敬也
水野敬也
評価

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良いと思うところ

第2話で「時給の罠」にハマることで、なぜいけないのかが(色々起きる出来事は書いてあったけど)いまいちピンとこなくて。
でも、第3話のー愛から離れたことで起きる『副作用』なんだよー
というその一言が、すごくわかりやすく。頭と心にスッと入りました◎

良くないと思うところ

この回は、1番わかりやすいし。おもしろいし。言うことない!と、思ったんですけど。
突然色んな場所に現れる。山Pは、まりりんだけに見えてるのか。みんなに見えてる設定なのか。それとも、時と場合によるのか(笑)それだけ、ちょっと気になりました。

2018年1月19日 15時55分 takamin
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 著者からの返事

感想ありがとうございます。確かに、真理(16歳)の世界は仮想世界なのですがここの描きかたは大事にした方が良いですね。山Pが他の人に見えている場合のリアクションも書き加える可能性があります。ありがとうございます!

2018年1月20日 12時58分 水野敬也
水野敬也
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