仕事幸福真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル

真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル 第3話

 桃瀬さんがそう言ったとき、あかりんの姿をした田沢さんが隣のテーブルで水の継ぎ足しをしていた。

 ただお水を入れているだけの動きなのに、愛情が込められているのが分かる。

その光景を見て胸を温かくしていると、山Pが言った。

 「あの人は、今はパートで働いておるが、20年後にはこのレストランを経営する会社の社長になるんじゃよ」

 「ええぇ⁉」

 驚いて声をあげてしまい、田沢さんが振り向いてしまった。私は「何でもありません」という風に会釈をした。

 山Pは続けた。

 「彼女のシフトは、土日以外はこの時間がほとんどじゃから、お前もできるだけこの店に通って働きぶりを目に焼き付けておくとええ。お前が普段やっとる『エア握手会』よりもはるかに役に立つぞ。なぜなら――」

 そして、山Pは言った。

 「握手会もホールスタッフも、同じ『接客業』なんじゃからな」

 すると桃瀬さんが興味深そうな顔をして言った。

 「エア握手会って何?」

 私は「な、なんでもないです」と首を振り、話題を変えるべくサングラスを取り外し、

 「これ、ありがとうございました」

 と、桃瀬さんに返した。

 そして私は顔を上げ、改めて田沢さんに顔を向けた。

 田沢さんはもうあかりんではなくなっていたけど、最初に見たときとは別人のような輝きを放っていて、すごく素敵な人だと思った。

 (私も、田沢さんのように働けるのだろうか)

 すぐには難しいかもしれない。でもこれからハニーズで働くときはいつも田沢さんのことを思い浮かべながら頑張ってみようと思った。

 「今日は、ありがとうございました」

 桃瀬さんに改めてお礼を言うと、桃瀬さんは笑って私の頭をぽんぽんとしながら、

 「じゃあ、そろそろ行こうか」

 そう言って立ち上がろうとした。

 すると、突然、

 「あははは!」

 高笑いする声が背後から聞こえてきた。

 (こんな人、いたっけ?)

 後ろの席には、いつのまにか赤色の髪毛の人が座っていた。背を向けているので顔は分からない。赤毛の人は言った。

 「相変わらず、甘ぇよな愛之助は」

 (桃瀬さんの知り合いなの?)

 たずねるように顔を向けると、桃瀬さんは言った。

 「来てたのか、赤音」

 私はドキドキしながら二人の顔を交互に見ていたが、赤音さんがこちらに顔を向けた。

 日焼けした肌に、掘りの深い鼻、大きな口。前髪は立っていてソフトなリーゼントになっている。

 赤音さんは言った。

 「愛之助、俺は普段からお前に言ってるよな? 『人間ってのは、結局、自分のやりたいことしかできない』って」

 そして赤音さんは言った。

 「仕事で輝くために必要なのは『エゴ』なんだよ」

 赤音さんは土足のまま椅子の上に飛び乗ると、上体を傾け、私とソファの間に手を差し込んだ。

 「きゃっ」

 思わず声をあげたが、次の瞬間、自分の体が宙に浮くのが分かった。

赤音さんに持ち上げられ、お姫様だっこをされたのだ。

 黒い半袖のシャツからのぞいている腕の筋肉はかなり鍛え上げられている。

 赤音さんは、眼光の鋭い目を私に向けると、乱暴な口調で言った。

 「俺はレインボーイズの一人、赤音隼人」

 そして赤音さんは続けた。

 「まりりんは、絶対、俺のこと好きになるよ」

 私は赤音さんの腕の中で縮こまりながら思った。

  (また違うタイプのカッコイイ人きたー!)


「真理 —成功と幸福の秘密を知ったアイドル」は隔週月曜日更新です。

次回の更新は1月29日(月)です。

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REVIEWS

評価

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良いと思うところ

水野敬也様!こんにちは!
作品の良いと思う点を書くにあたって、
ノン!は、こう!水野敬也様の作品を読み続けているから、書ける見たいな、的を得た、水野敬也様の心に響くような感想を述べたかったのですが、ノン!の感想は、とにかくワクワクして、楽しかったし、続きが早く読みたいです!しか思い浮かびませんでした(笑)

良くないと思うところ

良いと思う点が、そんな感じなので、悪いと思う点は、全く無いのですが、ただ、この作品の感想とは、関係ないのですが、せっかく個性豊かな作家の人達が、タメランドには、集まっているので、1つのテーマを、1話は、水野敬也様!2話は、また別の方!
見たいな感じで、作家から作家にバトンタッチしていく作品も読んで見たいです!

2018年1月17日 15時20分 退会済みユーザー
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コメントの評価

 著者からの返事

ご感想ありがとうございます!引き続きよろしくお願いします!他の作家たちにもコメントいただけるとすごくうれしいです!

2018年1月18日 8時15分 水野敬也
水野敬也
評価

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良いと思うところ

一話からの真里ちゃんの細かな心理描写は、あっぱれ面白くo(^▽^)oくすくす笑っちゃいます。先生の最もなワザ満載で(笑)知的ウケもし、さすがだなぁと。読み進めていくうちに、仕事についてシリアスで、流儀を改めて考えさせられました。組織の中にいるとどうしても仕向けられて、忙しい日々に流されて意欲、意思もボヤけてそのまま過ぎていく感がありますが、要所要所でハッと思わされ勇気づけられる言葉に、改めてモチベーションを上げていこうと生気に満ちてる仕事をして行きたいなと思いました。山Pがどのような試練を克服してきたのかも含め、イケメンズの真里ちゃんへのいい影響、これからの展開が楽しみです!^ ^

良くないと思うところ

悪いなんておこがましいのです、が老女とイマドキの女子高生の差を強調させるべく、年配の特徴を可笑しくオーバーに書かれていると勝手に思い込んでるのですが、1話の老女の唾のくだりは少しだけ卑下っぽく感じました。老人役割語⁈でもワシとか女性っぽくない言葉遣いも少し気になりました。(おじいさんと誤解しそうです)

2018年1月18日 5時7分 Shiho☆
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 著者からの返事

感想ありがとうございます。第3話は周囲の評判も良いのですが、今後の内容で3話で感じる新鮮さや面白さが保てるかどうか気にしながら頑張っていきたいと思います!また感想いただけたらうれしいです。よろしくお願いします!

2018年1月20日 13時0分 水野敬也
水野敬也
評価

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良いと思うところ

第2話で「時給の罠」にハマることで、なぜいけないのかが(色々起きる出来事は書いてあったけど)いまいちピンとこなくて。
でも、第3話のー愛から離れたことで起きる『副作用』なんだよー
というその一言が、すごくわかりやすく。頭と心にスッと入りました◎

良くないと思うところ

この回は、1番わかりやすいし。おもしろいし。言うことない!と、思ったんですけど。
突然色んな場所に現れる。山Pは、まりりんだけに見えてるのか。みんなに見えてる設定なのか。それとも、時と場合によるのか(笑)それだけ、ちょっと気になりました。

2018年1月19日 15時55分 takamin
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 著者からの返事

感想ありがとうございます。確かに、真理(16歳)の世界は仮想世界なのですがここの描きかたは大事にした方が良いですね。山Pが他の人に見えている場合のリアクションも書き加える可能性があります。ありがとうございます!

2018年1月20日 12時58分 水野敬也
水野敬也
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