行動経済恋する行動経済学

恋する行動経済学 第4話

 思えば、あれは京子の初恋だった。それから、何年も経った現在、大学生になった京子には、いまだに、恋人の一人もいない。

 あの頃からずっと、京子は『春恋ドリーム』のような恋に憧れているのだ。自分にも、恋愛ドラマのような運命的な恋が、訪れればいいのに。

 突然、今宮翼のような王子さまが、目の前に現れて……。

 ……そんなうまい話があるわけないだろっ!

 京子は頭の中で自分自身に突っ込みを入れる。待ってたって恋人はできない。それは今までの人生でもうわかっていることではないか。そんな受け身の、弱気の考えでどうする。

 京子は立ち上がって、窓を開けて空を見上げた。

「彼氏を作るぞーっ!」

 月に向かって、今日も京子は叫ぶのだった。

 翌日は日曜日で、恵奈と一緒に買い物に行く約束をしていた。

 待ち合わせの時間に遅れそうになって、京子は駆け足で、恵奈が待っているはずの喫茶店の前まで来た。呼吸を整えてから、扉を開けて中に入る。

 それは最近、京子と恵奈が見つけた喫茶店で、外の看板には『ハニー&ビー』という店名と、かわいらしいハチとハチミツの絵が描かれていた。中に入ったことはまだなかったので、ちょうどよい機会だと、待ち合わせ場所に選んだのである。

 店に一歩入って、京子は驚いた。

 外のかわいらしい看板とはまるで違って、店の中はひどく陰気だった。BGMがかかっておらず静かな上、やけに暗い。外は天気なのに、店内は湿気ている。

 窓が小さく、外の光があまり入ってこないのに加え、灯りのほとんどが間接照明になっていた。間接照明でオシャレ、というよりも、単純に光量が足りていない。

 カウンターといくつかのテーブル席があるが、店自体はそれほど広くない。一人でやっているらしい店主が、京子を案内しにくる。店主に待ち合わせだと告げて、京子が店内を見回すと、奥のテーブルで恵奈が手を振っていた。

 カウンターには他に客が一人いて、タバコを吸っている。狭い店内に禁煙席はないらしく、タバコの匂いが染みついている。京子は咳ばらいをしながら、恵奈のいるテーブルに向った。

 苦笑いを浮かべている恵奈の向かいに腰を下ろしながら、京子は小声で言った。

「ごめん、遅れちゃって……なんか、すごい店だね」

 小声で言いながら、京子は恵奈の向かいに座る。

 すぐに店主が京子の水を持って、注文を取りにきた。冴えない中年の男だった。

「ホットコーヒー、お願いします」

 京子が言うと、店主は無言で軽くうなずき、カウンターの中に戻っていった。あまり愛想がよくなかった。

 京子は水を一口、飲もうとしたが、口につける直前で、ガラスコップが曇って汚れているのに気づいた。恵奈の方を見ると、恵奈は水の入ったコップを脇によけていた。中の水は全く減っていないようだった。そして、京子のコップと同じように、曇って汚れている。

 京子と恵奈は顔を見合わせて、苦笑いを浮かべた。

 その後、出てきたコーヒーも、ひどい味だった。かわいらしいのは看板だけで、中身は二度と行く気が起きないような店だったのである。恵奈と京子は、二人ともため息をつきながら、店から出てきた。

「ごめん、私が一回、来てみたいって言ったから……」

 恵奈は申し訳なさそうに言う。

「いや、私も来てみたかったし。恵奈のせいじゃないよ。ほら、切り替えよ! せっかくの日曜日なんだから!」

 京子は無理に元気を出して言った。

 恵奈も微笑んでうなずいた。

 駅前は、いろいろな店が集まっているので、ブラブラと歩きながら買い物をするのにちょうどいい。京子と恵奈はどの店に行こうか相談しながら、喫茶店から駅前まで移動した。


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REVIEWS

評価

12345

良いと思うところ

急に、お話がガラリと変わって*
また、違った感じで楽しめました。
最後バスに追いついたところは、うそでしょ(笑)って思ったけど。1番おもしろかったとこです。あとは、一緒にいたのが美緒ちゃんだったのが予想外だったので(コンビニにいつも来る女の子かと思ってました)続きが楽しみです。

良くないと思うところ

いつも、いろいろ書いちゃってますが〜
今回はないです!展開が気になることぐらいです◎楽しみにしてます^ ^

2018年2月12日 15時27分 takamin
1人がこのコメントに「いいね!」しました
森久人
コメントの評価

 著者からの返事

コメントありがとうございます!
今回は展開の前フリ的な部分で、行動経済学の話を入れなかったので
逆にボロが出なかったのかもしれません(笑)
続きが楽しみだと言っていただけて、すごく嬉しいです!
ありがとうございます!今後もよろしくお願いします!

2018年2月15日 12時55分 森久人
森久人
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