*
ハニーズのキッチンカウンターから厨房をのぞき込んでいると、岩尻さんが大きな顔をぬっと出して言った。
「何ぼさっとしてんだよ。他にやることあるだろ!」
私は、
「す、すみません」
と謝ってホールに向かいながら、
(どう考えても無理だ)
と改めて確信することになった。
――山Pから出された課題は「岩尻さんと仲良くなる」だった。
でも、ハニーズに入って以来、怒鳴られた記憶しかない岩尻さんと仲良くなるなんて想像もできない。
ぶっちゃけた話、岩尻さんが嫌いだ。こんなにか弱い女子高生に対してあんなに高圧的な態度が取れるなんて、岩尻さんは女子どもに限って容赦しないタイプだと思う。私は男だったら岩尻の尻にパンチして8つに割ってやりたいくらいだった。
もしかしたら私の方にも問題があると言う人がいるかもしれないけど、その言葉には断固反対したい。ハニーズの厨房には岩尻さんの代理の人が来ることがあるけど、その人たちとは前世では同じ戦場で戦った仲間なんじゃないかってくらいうまくやることができていたからだ。
(『岩尻さんとは仲良くなれました!』って山Pに報告しちゃおうかな)
ホールの作業をしているときそんな思いがよぎったが、
(だめだ、だめだ)
と首を横に振った。
あの山Pのことだから、突然どこからか顔を出して「全然仲良くなっておらんじゃないか!」と一喝してくるだろう。
(やっぱりやるしかないか……)
私は覚悟を決め、再び厨房に向かった。
ちょうどキッチンカウンターに料理があがってきたところだったので、トレイに乗せながら口火を切った。
「岩尻さん」
岩尻さんは返事をせず、顔だけこちらに向けた。
全身を嫌な緊張が駆け抜ける。
しかし私は、昨日から何度もシミュレーションしてきた台詞を岩尻さんに向かって投げつけた。
「岩尻さんって……血液型何型ですか?」
すると岩尻さんは、
「んあ?」
と眉間にしわを寄せ、鬼のような形相で言った。
「お前、ふざけてんのか?」
それを見てまた怒鳴られると察知した私は、
「し、失礼します!」
と言ってトレイをひったくるように持ち上げ、ホールに逃げながら思った。
(やっぱり、あの人と仲良くなるなんて絶対無理!)
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評価
良いと思うところ
水野先生の小説であるというところ
良くないと思うところ
バスケットの試合を小説で読んでも、クソ面白くないですね。映像化を前提に書かれているのかな?とは思いますが…
かおりレインボーズのメンバーがいまいちイメージできないのですが、どこかに登場人物一覧表とかありますか?
紙の小説の場合は、ページを繰って戻るのも楽しく、それが醍醐味だったりしますが、電子小説でいちいち登場人物を「これ誰だっけ?」って感じた時、初登場の場面を探して戻るとかしたくないので、登場人物は常にリンクになってて、そいつが誰か忘れた時はクリックすれば説明が見れるといいなと思います。
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著者からの返事
これは大事な問いですね。現在、イラストが入ってない状態ですが、山Pがレインボーイズの7人と現れたときに魅力的なイラストが入っているとして、、、この「レインボーイズ」がそれぞれのアトラクションで教えてくれる、というのが本作の前編で面白がっているところではあります。この判断は難しいですし、連載向きでない部分もありますが引き続き感想いただきたいです。よろしくお願いします。
2018年3月1日 11時22分 水野敬也評価
良いと思うところ
水野先生のポリシーの一つとされる、失敗は気にすることはない、失敗して恥じをかかないと成長しないことを、山Pが真剣に教えるところはやっぱり良かったです。「失敗は挑戦した証」が響きます^_^全て意味のある、成長、成功へのステップで!
改めてタメになりました
良くないと思うところ
書くの恐縮で…
Shiho☆良くないところに書くの恐縮で...。
とは言っても、歳もまりちゃんみたいに若ければ、失敗を恐れず挑戦に情熱的にもなるけれど…と思う読者も多いかと思ったり(自分は違うと思っていますが(笑)なので、いつか山Pの、失敗を前向きに受け止めて立ち上がったエピソードがあればなあと思います^ ^
あと、ハートの連打に戸惑います。。最終先生方のタメになってるかなあなんて。
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コメントの評価
著者からの返事
感想ありがとうございます。
2018年3月1日 11時23分 水野敬也挑戦については「後編」で再び出てくるのでそのとき全体としてどう映るかで感想いただけるとうれしいです。引き続きよろしくお願いします。
ハートの連打はぜひお願いします。笑
評価
良いと思うところ
昨日読み直しててはっとなりました。
一度の失敗で正しい教えを
『間違っている』と考えてしまうこと、
うまくいかないと、正しい教えを自分に都合よく捻じ曲げ、結局苦しくなってしまう。
なぜなら、その方法で夢がかなうことはあり得ないから。
これは衝撃ですね。
こんなに的確に失敗した後の問題点を
わかりやすく指摘してくれてるのは
水野先生が初めてではないでしょうか?
私が知らないだけかもしれませんが、
少なくともこれを読んで自分がそうなっていたことに気づけたので良かったです!
ありがとうございます。
良くないと思うところ
良くないことはないのですが少しだけ思ったことをひとつ…
ぐち今回の学びの内容も素晴らしいかったです!
ですが、最初山Pがそれが学びじゃよと言ったときに
ん?どこだろう?と思ってしまいました。
そのあと、それについてちゃんと
説明があったので大丈夫なのですが、
「ハプニングで教えをできなかった真理」
より、
「何かに挑戦して失敗した後の真理」
という自然な流れで読んでみたいかなとも思いました。
でもそれだと普通すぎるのでしょうか?
素人意見ですみません。
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