仕事幸福真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル

真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル 第6話-1

 「お、やる気満々だね!」

 緑川くんはうれしそうに山Pの近くに行き、ボールを奪おうとし始めた。

 「そうはさせんぞ!」

 山Pは軸足を使って緑山くんの攻撃をかわしていたが、

 「いただきー!」

 緑山くんは華麗な動きで山Pからボールを奪った。

 「くそぅ!」

 今度は攻守が入れ替わり、山Pが緑川くんのボールを奪い始めた。

 「あの……」

 「なんじゃ?」

 私は山Pの背中に向かって言った。

 「状況がまったく読めないんだけど。ていうか、なんでバスケ?」

 山Pは振り向かずに言った。

 「別にバスケじゃなくても良かったんじゃ――お前を育てること以外ならな」

 「どういうこと?」

 山Pは動くのをやめ、こちらに振り向いて言った。

 「お前、心のどこかで、ワシから出される課題がクリアできなくても良いと思っておらんか?」

 私はギクッとしてその場に固まった。山Pは続ける。

 「今日のハニーズでの動きを見させてもらった。岩尻へのアプローチはもちろんじゃが、それ以外の仕事ぶりにも緊張感が足りておらんかった」

 (やっぱり見られてたんだ――)

 岩尻さんに血液型を聞いたくだりを思い出して顔が熱くなる。

 山Pは言った。

 「どうせお前はこう思っておるんじゃろ。『このまま山Pの言うことを聞いていればいつかアイドルになれるはずだ』と……ホワァッ!」

 山Pは突然体の向きを変え、緑川くんのボールに向かって手を伸ばした。緑川くんは素早く動いてかわす。

 「そんなに甘くないぞ。アイドルになるということは」

 山Pは再び話し始めた。

 「ワシの教えは、お前をアイドルにすることもできるし、それ以外の夢をかなえることもできる。ただ、それはあくまで『本気で実行すれば』の話じゃ。お前にその気がなければ、どんなに優れた教えも何の意味もなさん。……緑川くん」

 山Pが手を広げると、緑川くんはバスケットボールをパスした。

 ボールを受け取った山Pは、そのまま私に向かって投げてよこして言った。

 「ワシと勝負せえ」

 「勝負?」

 「そうじゃ。今からお前とバスケで勝負して、もしワシが勝ったら――お前を育てるのはやめる」

 「ええ――!」

 予想もしなかった言葉に、持っていたボールを落としそうになってしまった。

緑川くんは、無邪気に「パス! パス!」と手を挙げてアピールしている。

 私は緑川くんの方に適当にボールを投げて言った。

 「山P言ってることめちゃくちゃだよ」

 すると山Pは言った。

 「分かっておる」

 そして「ゴホッゴホッ……」と咳き込んでから続けた。

 「じゃが、ワシには残された時間は少ないのじゃ。後悔しないためにも、ここで思い切ったことをせにゃならん」

 「で、でも、だったら……」

 私は苦しそうに背中を曲げる山Pを見て言った。

 「バスケみたいな激しいスポーツじゃなくて、違う勝負にした方が良いんじゃない?」

 「例えば?」

 私は少し考えて言った。

 「……オセロとか?」

 すると私の背後から笑い声が聞こえてきた。

 「オセロはダメだ。俺たちが参加できないからな」

 振り返った瞬間、顔が熱くなるのが分かった。

 そこには、赤音さん、桃瀬さん、橘さんが立っていたからだ。

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REVIEWS

評価

12344

良いと思うところ

水野先生の小説であるというところ

良くないと思うところ

バスケットの試合を小説で読んでも、クソ面白くないですね。映像化を前提に書かれているのかな?とは思いますが…

レインボーズのメンバーがいまいちイメージできないのですが、どこかに登場人物一覧表とかありますか?

紙の小説の場合は、ページを繰って戻るのも楽しく、それが醍醐味だったりしますが、電子小説でいちいち登場人物を「これ誰だっけ?」って感じた時、初登場の場面を探して戻るとかしたくないので、登場人物は常にリンクになってて、そいつが誰か忘れた時はクリックすれば説明が見れるといいなと思います。

かおり
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 著者からの返事

これは大事な問いですね。現在、イラストが入ってない状態ですが、山Pがレインボーイズの7人と現れたときに魅力的なイラストが入っているとして、、、この「レインボーイズ」がそれぞれのアトラクションで教えてくれる、というのが本作の前編で面白がっているところではあります。この判断は難しいですし、連載向きでない部分もありますが引き続き感想いただきたいです。よろしくお願いします。

2018年3月1日 11時22分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

水野先生のポリシーの一つとされる、失敗は気にすることはない、失敗して恥じをかかないと成長しないことを、山Pが真剣に教えるところはやっぱり良かったです。「失敗は挑戦した証」が響きます^_^全て意味のある、成長、成功へのステップで!
改めてタメになりました

良くないと思うところ

書くの恐縮で…
良くないところに書くの恐縮で...。
とは言っても、歳もまりちゃんみたいに若ければ、失敗を恐れず挑戦に情熱的にもなるけれど…と思う読者も多いかと思ったり(自分は違うと思っていますが(笑)なので、いつか山Pの、失敗を前向きに受け止めて立ち上がったエピソードがあればなあと思います^ ^

あと、ハートの連打に戸惑います。。最終先生方のタメになってるかなあなんて。

Shiho☆
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 著者からの返事

感想ありがとうございます。
挑戦については「後編」で再び出てくるのでそのとき全体としてどう映るかで感想いただけるとうれしいです。引き続きよろしくお願いします。
ハートの連打はぜひお願いします。笑

2018年3月1日 11時23分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

昨日読み直しててはっとなりました。

一度の失敗で正しい教えを
『間違っている』と考えてしまうこと、
うまくいかないと、正しい教えを自分に都合よく捻じ曲げ、結局苦しくなってしまう。
なぜなら、その方法で夢がかなうことはあり得ないから。

これは衝撃ですね。
こんなに的確に失敗した後の問題点を
わかりやすく指摘してくれてるのは
水野先生が初めてではないでしょうか?
私が知らないだけかもしれませんが、
少なくともこれを読んで自分がそうなっていたことに気づけたので良かったです!
ありがとうございます。

良くないと思うところ

良くないことはないのですが少しだけ思ったことをひとつ…
今回の学びの内容も素晴らしいかったです!
ですが、最初山Pがそれが学びじゃよと言ったときに
ん?どこだろう?と思ってしまいました。
そのあと、それについてちゃんと
説明があったので大丈夫なのですが、
「ハプニングで教えをできなかった真理」
より、
「何かに挑戦して失敗した後の真理」
という自然な流れで読んでみたいかなとも思いました。
でもそれだと普通すぎるのでしょうか?
素人意見ですみません。


ぐち
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