仕事幸福真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル

真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル 第8話

 飲み物を乗せたトレイを持った男の人が入ってきたので店員かと思ったけど、その人の顔を見て驚きのあまり声を上げてしまった。

 「桃瀬さん!」

 トレイを持っていたのは桃瀬さんだった。

 彼は私にウィンクすると、トレイをテーブルの上に置いて言った。

 「まりりんから女の子だけで飲んでるって聞いたからさ。お邪魔させてもらっていい?」

 桃瀬さんが微笑みかけると、みんなすごい勢いでうなずいた。

 彩花が私に耳打ちするように言った。

 「呼んでるなら言ってくれれば良かったのに」

 「いや、それは、その……」

 私は適当に返す。

 「サプライズ的な?」

 すると彩花は「さすが真理だね!」と腕を組んできた。

 私はほっと胸をなでおろしたが、さすがに女の子5人に対して桃瀬さん一人だけではバランスが悪い気もして、

 (他の人も来てくれれば良かったのに)

 そんな考えが思い浮かんだとき、桃瀬さんが言った。

 「もし良かったらなんだけど――」

 桃瀬さんは相変わらずの包み込むような口調で言った。

 「友達も呼んでいい?」

 するとみんな「もちろんです!」と言ったが、ほとんど同時に扉が開いて男の人が顔を出した。

 「ダメだって言われても来るけどな」

 「赤音さん!」

 みんなの注目が集まる中、赤音さんはソファ席の一番奥を差して言った。

 「そこ、空けてもらえるか?」

 女の子が横にずれてスペースを作ると、

 「ええ⁉」

 みんなが驚きの声を上げた。

 赤音さんはジャンプでテーブルを飛び越しその席に着地したのだ。

 赤音さんの運動神経の良さに、まるで男性アイドルのステージを見ているような熱視線を送っていると、

 「相変わらず、低俗なパフォーマンスだな」

 扉の方から声が聞こえたのでみんな一斉に振り向いた。

 扉の前に立っていたのは、紺色の和服に身を包んでいる、橘さんだった。

 「なんだとてめぇ」

 赤音さんは拳を振り上げて立ち上がったので空気が凍りついたけど、

 「はいはい、勝負はカラオケの点数対決で決めようよ」

 緑川くんがタンバリンを叩きながら入って来たので一気に場は和んだ。

 次から次へと現れるイケメンたちに女の子たちは気絶しそうになっている。

 緑川くんは、

 「ま、とりあえず赤音と橘の席は離しておいた方が無難だね」

 と言いながら席順を決め始め、自然な流れで男女が交互になるような配置を作った。

 (さすが緑川くん!)

 これで間違いなく飲み会が盛り上がると安心していると、またもや扉の方から声が聞こえてきた。

 「君たち、一番大事な人物を忘れているんじゃないのか?」

 扉の方に顔を向けると、最初に目に飛び込んできたのは白いターバンだった。

 サイードは扉横の壁に手をついて言った。

 「普段はこういう庶民の店には来ないのだが、今日は特別だ」

 「そういうのはいいから、早く座りなよ石油王」

 緑川くんのツッコミで一斉に笑い声が起きた。私も緑川くんに乗っかるように言った。

 「ちなみに、この人こんな格好してるけど、私と一緒にハニーズでバイトしてるからね」

 場が笑いで包まれると、サイードはゆっくりと話しながら近くのソファ席に向かった。

 「なるほど、これが庶民の間でよく行われると聞く『イジり』というやつか……」

 そしてふんぞりかえるように席に座って言った。

 「新鮮だっ!」

 サイードの尊大な態度にみんなが笑った。サイードは続けて言った。

 「ちなみに、言うまでもなくこの店の支払いはすべて石油王であるところの私がすることになる。好き勝手に飲み、食べ、歌いたまえ庶民どもよ!」

 この一言で場は最高に盛り上がり、レインボーイズとのカラオケ会が始まった。

 レインボーイズたちは赤音さん以外、みんな歌がめちゃくちゃうまくて(赤音さんだけが異常に音痴でそれがまた面白かった)、緑川くんは女の子たちが歌うときは途中でラップを入れたり、拍手や口笛で盛り上げてくれた。さらに橘さんはお酒を飲んでいる女の子たちを優しくたしなめながら全部ソフトドリンクに変えていった。

 何もかもが完璧だった。完璧な夜だった。

 こうして飲み会は盛り上がり続け1時間近く経過したころ、カラオケの曲と曲の合間にでた画面を指差して、彩花の友達が言った。

 「ねえ、ゲームしようよ!」

 カラオケ画面には男女の飲み会が盛り上がるようなミニゲームが表示されていた。

 いくつかあるゲームの中で彩花が、

 「これ面白そう」

 と指差した。それは合コン内でカップルを作るゲームであり、電子タブレットを順番に回して自分の好みの相手の入力し、お互い好みだと感じているカップルが表示されるという内容だった(好みの人がいない場合は該当者ナシを押すこともできる)。

 彩花は自分が好みの相手として選ばれることに自信があるのだろう。場も盛り上がっていたので特に反対する人もいなかった。

 こうしてゲームが始まったけど、私はどうしても一人に決めきれず、「該当者ナシ」を選択した。

全員が相手を選び終えたので集計ボタンが押される。

 画面にキューピッドのキャラクターが登場し、カップルが何組成立しているかを調べ始めた。みんなドキドキしながら集計結果が表示されるのを待った。

 そして、

 「成立したカップルは……!」

 派手な演出音とともに、画面に数字が表示された。

 成立カップル0

 「ええーっ」

 女の子たちは悲鳴を上げたが、私は場を盛り下げないように「次のゲームしようよ」と提案した。

 しかし、突然、赤音さんが大声で叫んだ。

 「あーあ、つまんねぇなぁ! せっかくまりりんが誰が好きなのか分かると思ったのによぉ!」

 その言葉を聞いて彩花が眉をひそめた。

 「どういうこと?」

 すると赤音さんは「どういうこともなにも」と続けた。

「男たちは全員まりりんを選んでるに決まってるからな」

 一瞬固まった彩花は、笑いながら言った。

 「なんだ、みんな本気でやってなかったんだ」

 「本気だよ」

 そう言ったのは緑川くんだった。緑川くんの言葉にはいつもの軽い雰囲気がない。

 女の子たちの顔がひきつり、場の空気は一気に重たくなる。

 彩花が顔を歪ませて言った。

 「ていうか、みんな真理とどういう関係なの?」

 桃瀬さんが柔らかい口調で答えた。

 「俺たちはみんな、まりりんを振り向かせたくて頑張ってるんだよ」

 サイードが肩をすくめて言った。

 「真理はお金になびかないタイプの女だから苦労させられている」

 沈黙していた橘さんは、静かに口を開いた。

 「真理さんは、私たちのアイドルなのです」

 私は――どう反応して良いか分からなかった。

 正直すごくうれしいけど、うれしいんだけど、周りの女の子たちの視線が気になって……でも変な空気になるのを気にせずそう言ってくれるのは、やっぱりうれしかった。

 ただ、これ以降、場の空気が再び盛り上がることはなく、飲み会はすぐに解散することになった。

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REVIEWS

評価

12345

良いと思うところ

とても面白くなってきました。
前回から完璧ですね!

良くないと思うところ

レインボーズは今5人のメンバーが明らかになっていますが、好みの男性がおらずテンションが下がります。

残りの2名に期待しています。

かおり
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます!!!
かおりさんの好みのレインボーイズが仮にいるとしたらどんな男性なのか教えていただけたらうれしいです。残り2名にいなかったら(というかいない可能性の方が高いと思いますので笑)よろしくお願いします。

2018年3月15日 17時38分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

まりちゃんが今まで得た学びを生かして前向きに、大局的に考えられていて、自信もついてる、明らかに成長しているところが分かりやすくてよかったです(^-^)ライバル彩花ちゃんとの水と油加減さ絶妙で、これからハラハラ楽しみで。橘さんのそっとソフトドリンクに変える手腕も良かったです!

良くないと思うところ

最終彩花ちゃん達がアルコールがいけないことだとわかってくれるといいなと思います^ ^

Shiho☆
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。レインボーイズもあと二人ですが、こういうレインボーイズがいたら良いという人がいたら教えてください。引き続きよろしくお願いします!

2018年3月15日 17時40分 水野敬也
水野敬也
評価

12344

良いと思うところ

レインボーズたちはテクノロジーの進んだ世界から来てるはずなのに
まりりんに愛情をストレートに表すところは、いいなぁといつも思います◎

良くないと思うところ

「残念な気もしたが、これも縁がなかったんだとあきらめることにした〜」という部分が、物足りないというか。そんなモノだったっけ(*_*)と言うか。

ハニーズで居場所が出来たのは素晴らしいけど。ヒエラルキーのトップでいることは、けっこう大事なことだった気もしていて。それを取り戻すためのハニーズだった気もして。この数行でいいのかなって。。。モヤモヤが。

takamin
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