仕事幸福真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル

真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル 第10話

 

 *

 

 仕事を終えた私は服装を着替え、水原くんのいるテーブル席に座った。店長やスタッフには水原くんは知り合いだと言っておいた。

 彼はソファ側に座っていたので、レディファーストの観点からすると席を交代すべきだと思ったけど、水原くんはそんな素振りは一切見せず、得意げな表情でゲーム画面をこちらに向けて言った。

 「これ見てみなよ。君が仕事している間プレイしてたんだけど、ファンの数1000人まで増やしたよ」

 ――確かに画面にはファンを表す観客のキャラがたくさん表示されている。

 水原くんは早口でまくしたてるように言った。

 「普通にプレイしてたらこの数字はあり得ないんだよね。僕だから短時間でこの数値を出せたんだ。ただ、僕って、能力値の設定が低いキャラの方が燃えるタイプだから」

 自分の能力値が低く設定してあることに違和感を覚えたが、それよりも水原くんの口調がどんどん早くなり、言葉遣いもおかしくなっていることの方が気になった。

 「素人は能力値を全部平均的に上げようとする、くくくっ……無駄無駄無駄ぁ! そんなんじゃあファンの数は増えまっせーんっ! 攻略のポイントは、欠点は欠点のまま放置して一点集中で能力値を上げることでしたとさ!」

 (何なのこの人、怖い!)

 水原くんの変化に不安を覚えたが、画面を見ると彼の言うとおり私の能力値は「ひたむきさ」だけが突出していた。

 水原くんが素早い動きでタッチペンを動かすと、画面はコンサート会場に切り替わり私のキャラクターが歌い出した。途中でダンスに失敗して転ぶシーンがあったが、そのとき歓声が大きくなり応援メッセージが画面に映し出された。

 「すべての能力値が高い完璧な人には誰も魅力を感じなぁーい。欠点があることで、親近感持ってもらえたり、自分がなんとかしなきゃっていう気持ちになってもらえる…いけええ!!!まりりん!!! まっりりーん!!!……はっ」

 そこで水原くんは興奮のあまり我を忘れていたことに気づいたようで、恥ずかしそうに眼鏡を戻して言った。

 「じゃ、じゃあ、こっからはゲームじゃなくてリアルの話。ファンを増やすために、まりりんはどうすれば良いと思う?」

 「それは……」

 私は思い浮かんだ言葉をそのまま口にした。

 「自分の得意なことを伸ばす?」

 「言うと思った。それ100%言うと思った」

 水原くんは勝ち誇った表情で続けた。

 「その考えは、まあ間違っちゃいないんだけど、僕から言わせたらちょっと浅いんだよね」

 水原くんは自分の言葉に自分でうなずいて話を続ける。

 「自分の欠点はどこで、得意なことはどこって考えてる状態は少し冷静すぎるっていうかね。そういう客観性も必要っちゃ必要なんだけど、もっとシンプルに大事なことってあるんだよ」

 答えが分からず考えていると、水原くんは言った

 「それはね、『ハマる』ってことなんだ」

 「ハマる?」

 「そう。もうとにかくそれが好きで好きでたまらなくて、そのことばっかり考えちゃうって状態ね。どんな仕事でも、その仕事にハマれば頑張ることも苦にならないし、そういう人はお客さんを楽しい気持ちにさせられるんだ」

 私は水原くんの話を聞きながら、桃瀬さんと一緒に行ったファミリーレストランの店員、田沢さんのことを思い出した。田沢さんは仕事を心から楽しんでいるように見えた。

 水原くんは続けた。

 「逆に、本当は全然ハマってないのに、周囲の人や親から認められるという理由で仕事を選んじゃうと、『本当はこの仕事好きじゃないんだな』ってお客さんに伝わっちゃうんだよね」

 私は水原くんにたずねた。

 「どうすれば、仕事にハマる状態になれるの?」

 すると水原くんは「くくくっ」と笑って言った。

 「そんなの簡単だよ! 全部やってみれば良いんだ!」

 水原くんはゲーム機の画面をクリックすると、たくさんのタイトルが現れた。そのタイトルを、「これとこれはつまんない。これ、面白くて超ハマった」と評価していった。

 そして水原くんは言った。

 「まりりんがこれからアイドルにハマれるかどうかも同じだよ。実際、アイドルをやってみて『これだ!』って思えたらどんどんやったらいい、っていうかそうなったらどれだけ周りが止めてもやることになるだろうね」

 水原くんはゲーム画面をアイドル育成ゲームに戻した。

 画面の中では大勢の観客の前で私のキャラクターが必死に歌っている。

 もしアイドルになることができたら、私は何を感じるのだろう。最高の仕事だと思うのだろうか。それとも想像とは違う苦しみを経験をして、こんな仕事は嫌だと思うのだろうか。

 それは分からない。水原くんの言うとおり、やってみなければ分からないのだ。

 このとき初めて、山Pが「アイドルも一つの仕事にすぎない」と言っていた意味が分かった気がした。山Pはアイドルを否定していたわけじゃなくて、心から好きだと思えることを見つけるために経験することの大事さを語っていたのだ。

 水原くんはゲームの画面を閉じて言った。

 「ハマれる仕事を見つけること――まるでゲームをするように夢中になれる仕事を見つけること――それがまず大前提。でも、見つけるだけじゃぁまだ甘い。その仕事にさらにもっと深くハマるために必要なのが」

 「必要なのが?」

 水原くんの話が興味深くていつのまにか身を乗り出すように聞いていた。

 水原くんは言った。 

 「リサーチ」

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REVIEWS

評価

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良いと思うところ

完璧に面白い!

「橘→紺野」に改名で、やっぱりレインボーズは全員色の名前にするのかな?と思ったら、初登場のレインボーズは水原(笑)そっか、水色の「水」かも…

水原さんのファッションいい!今までのレインボーズで1番ハマります!

私もたまたま、全く違うルートから「ポンコツ」の魅力について想いを馳せていました。

良くないと思うところ

真理ちゃんも、変な人が店に来たら、レインボーズのメンバーと気づくだろうに…オーディションのことで頭がいっぱいなんだね(笑)

ユニット名「ナイン」は「9nine」を思い出してしまう。

水原君が眼鏡を取ると「形の良い鼻と大きくて黒目がちな瞳。中性的な長いまつげ」ここでテンション下がりました。
切れ長が好きです。切れ長率低すぎ…1人を除いて全員大きな目?

水原君、一生「メガネ」かけてて…!!!

最後の一人は「切れ長」期待です…

かおり
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水野敬也臼杵秀之
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 著者からの返事

感想ありがとうございます。なるほど、ナインも変更します!笑
水原くらい今までと違うキャラは良い反応なので他のボーイズたちもさらに個性を出せないか考えてみます!

2018年4月3日 15時37分 水野敬也
水野敬也
評価

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良いと思うところ

初めてレビューさせていただきます
本当にためになることばかり
書かれていてストーリーも面白い!
しかもどうやって物事を進めていけば
良いのかも
わかりやすく書かれているので
自分でもできるのではないかと思わせてくれます。
あと真理ちゃんはとても素直ですね。
あと、これ無料で公開してるところに
びっくりです!
こんなに素晴らしい小説本当に無料で
いいのですか?笑
お金とっても良いくらいだと思います!笑
ぜひ書籍化してほしいくらいです♪



良くないと思うところ

このお話し1話から全部見てますが
今のところ悪く思うところが
ありません♪
ただ、真理ちゃんが面白い子という
設定が自分にはない要素なので、
やっぱり面白い子は得なのかなとか
変なことを思ってしまいました(笑)
個人的なこと言ってすみません(笑)

ぐち
2人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也臼杵秀之
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 著者からの返事

感想ありがとうございますー!確かに、、、真理は面白い設定にしないと物語が成立しないのでそこはそうせざるを得ないですね、、、。プレーンな主人公が良い面もあるのですが、名前のある主人公で物語をかき回していくためには誰もが「自分だ」と思えないキャラになっていくのが難しいところです。

2018年3月28日 14時42分 水野敬也
水野敬也
評価

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良いと思うところ

オーディションに不安になっているまりちゃんにもっと自信を持つように背中を押してくれた感じがよかったです。
夢や目標に向かう上での、自分の魅力を最大限に引き出し生かす為の考え方に術をわかりやすく教えてくれて。

それもアイドルに1番近いオタクキャラのレインボーイズが(笑)、またとてもいいタイミングで(^○^)なるほどなあと。面白いところもバッチリで(笑)

ハマり自分らしさを見つけるためのアクションは、まりちゃん世代が最も挑戦できるチャンスだということを教えてくれている感じです。勢いよく、いつでもなんでも経験出来る世代は特に今を大切にして欲しいなあと切に思いました。またどの世代でも、なんでもハマるためにはこの努力の仕方は持ち続けないと、とも(^^)

リサーチも夢に向かう上でもとても良い効能ですー!

良くないと思うところ

よくないということではありませんが、そのハマるためになんでもしてみる、は夢が明確でない人に特にヒットする感じがして…夢に関連するべきことのなんでも、の範疇だったらストンと腑に落ちます^ ^

2018年3月28日 6時8分 Shiho☆
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水野敬也
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 著者からの返事

感想ありがとうございます!
これまでのレインボーイズと違う空気感は良い流れだと書いていて思いました。
現在、アップしていない部分では14章を書いていてかなり煮詰まっているのですが前編のクライマックスなので引き続き頑張ります!

2018年3月28日 14時44分 水野敬也
水野敬也
評価

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良いと思うところ

面白いです!なるほど、リサーチかぁ、、たしかに、ハマるものってすごいリサーチするなぁと腑に落ちました!新しいキャラの水原くんも他の子と少しテイスト違って新鮮ですね!!
どうなるんだろうと続きが楽しみです♪
話の一覧のストーリーダイジェストもわかりやすくてどこまで読んだかがわかって良いです!

良くないと思うところ

良くないところが、、見つからない笑
強いていうなら、真理の小説のイメージ画像の絵、とっても素敵なんですけど内容と少しギャップがある(?)なぁと思ったのですが、笑、あえて神秘的な絵の感じ→実は中身コメディの流れなら最高だと思います笑
引き続き頑張ってください(^o^)

ちゃぴ
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水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。イラストは本当に難しいですね、、、最初はラノベっぽい感じが合うのかなと思ったのですが、読者を限定してしまいそうなので、、、難しいですね。いろいろな可能性を考えてみます!

2018年4月3日 15時38分 水野敬也
水野敬也
評価

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良いと思うところ

10話まで読み終えての感想ー

さすがとしか言いようがありません。

もう少し修正していくのだろうとは思いますが十分楽しいし、尚且つ本当にタメになるお話ばかりで書籍なり、映像なり、早くお金を払いたい!と気持ちでいっぱいです笑

キャラクターの人数も程々で有難い。

連載大変だと思いますが応援しています!

あと、この場をお借りしてタメランドTVの配信もお忙しい中本当にありがとうございます。
木曜日が楽しみで待ち遠しいです。

良くないと思うところ

本当に素人意見で恐縮なのですが、真理ちゃんの成長を読み取れる箇所がもう少しあるといいなぁと。

ほんのちょっとだけでいいので真理ちゃんに感情移入できるような内容がほしいです。

どんどん素敵な女の子になっていってるという感触を味わえたらなぁと思います。(ひょっとして後半にその辺りが色濃く出てくるのかな?)

anmo
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水野敬也
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 著者からの返事

感想ありがとうございます。
主人公の成長をどう描くかというのは毎回悩まされます。教えがあるということは教えをそのまま実行しているだけでは成長できてないということでもあるので。。。序盤に何かできないことがあって、後半にできるという明確な成長を描くことを考えてもいいかもしれないですね。

2018年4月3日 15時39分 水野敬也
水野敬也
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