仕事幸福真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル

真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル 第11話

 *

 『アイエボ』オーディションの日の朝。

 窓から差し込む強い日差しで、予定よりも早く目を覚ました。

 部屋には山Pも水原くんもいなかった。がらんとしていつもより広く感じられる。

 本当は、アドバイスや励ましの言葉をもらいたかったけど、いつも必要なときに姿を現す山Pがいないということは、私一人で乗り越えなければならないのだろう。

 ベッドから出た私は服を着替え、メイクを始めた。

 これは綺麗に見せるためというよりも、自分自身の気持ちを上げるためのメイクだ。

 オーディションで求められるのは「原石感」。外側の変えられる部分じゃなくて、いかに内側を出し切ることができるかだ重要だ。

 私はあかりんの『スタンドアップ・アゲイン』をかけて気分を盛り上げた。

 しかし、オーディション会場に到着した私は、完全に意気消沈することになった。

 (超かわいい……)

 電車で向かっている途中も、同じ車両に乗っている可愛い子を意識しては不安になっていたけれど、指定されたフロアに集まっていた女の子は皆、学校では一目置かれているであろう綺麗な子ばかりだった。しかもここいるのは私と同じ時間に面接を受ける子たちだけで、これから入れ替わり立ち替わり、可愛い女の子たちがこの場所にやってきては面接を受けて帰っていくのだ。しかも同じことが全国に12か所ある会場で行われている。

 (正直、受かる気がしない……)

 自信を失った私は、一次審査に落ちたあとのことを考え始めた。

 学校のみんなは私がオーディションに落ちたらきっとバカにするだろう。悪ノリした生徒がハニーズにやってくるかもしれないし、高校を卒業するまでことあるごとに笑われるのかもしれない。

 不安はどんどん膨らんでいき、会場から逃げ出したくなったが、とにかく自分の心を落ち着ける意味で、事前に書いておいた面接対策のノートを取り出そうと鞄を開いた。

 すると、そこには見覚えのない色紙が入っていた。

 取り出して見ると、それは合格祈願の寄せ書きだった。

 (イラスト 合格祈願の寄せ書き)

  桃瀬 まりりんが一番魅力的な女の子だってことは誰よりも俺たちが知ってるよ

  赤音 審査員がまりりんを落としたら、そのときは俺がそいつをボコボコにしてやる!

  紺野 太陽が必ず東から昇り西に沈むように、真理さんは必ずオーディションに合格するでしょう

  緑川 まりりんは100% 1000% 1億%受かるよ!

  サイード お前がアイドルになった暁には、私は毎回CDを100~1000万枚買ってお前をセンターにし続けるだろう。

  水原 真理が本物のアイドルになってゲームのキャラになるのが待ち遠しいよ

 

 (みんな……)

 愛情にあふれたメッセージに思わず目に涙が溜まってきた。

 そうだ。私は一人じゃない。私を育ててくれたみんながいるんだ。

 (周りの子は関係ない。今は自分のことだけに集中しよう)

 そして私は深呼吸を始めた。

 5つ数える間に息を吸い込み、5つ数える間に息を止めて、5つ数える間、息を吐き出す。これを繰り返していく。

 シンプルだけど、緊張しない方法を自分なりに調べて一番しっくりきた方法だった。

 徐々に心が落ち着いてくると、前向きな発想も思い浮かんできた。

 (山Pは私の人生に奇跡を起こすために来てくれたんだ。ここで奇跡が起きても何も不思議じゃない)

 本番に向けてテンションを高めるために、あかりんの曲を聞こうとイヤホンを取り出した。

 するとちょうどそのとき、前の時間の面接が終わったようで、隣の部屋から女の子たちが出てきた。

 と、同時に再び私の体に不安が駆け抜けることになった。

 その中に彩花がいたからだ。

 彩花は私服も飛びぬけて可愛く、他の女の子たちと比べてもひときわ輝いていた。

 私と目が合った彩花は、近づいてきて言った。

 「あんた、オーディション受けるんだ?」

 (推薦したのおめぇだろうがぁ!)

 手に持ったイヤホンをそれぞれ彩花のLとRの鼻の穴に突っ込んでやろうかと思ったけど、

 「なんか……ごめんね」

 と彩花が言い出したので戸惑ってしまった。

 彩花は言った。

 「一緒にカラオケ行ったときさ。あの(ひと)たちにちやほやされている真理を見て、昔を思い出しちゃってさ」

 「彩花……」

 「真理って小学生のとき、全然可愛くないのに人気あったでしょ。だからずっとムカついてたんだよね」

 (何なの、この、表面上は謝ってるようでいて、実は私をバカにしてだけのパターンは! 私の戸惑い返せよ!)

 自分が抑えられなくなった私は、思わず彩花に向かって言った。

 「あんたには絶対負けないから」

 すると彩花は「あはは!」と高笑いして言った。

 「意味わかんない。ていうか私、合格しても辞退するかもしれないし。アイドルなんて興味ないから」

 周囲にいた女の子たちも彩花の方に振り向いた。

 (こ、こいつ……)

 小学校を卒業してから長い間話してないうちに、彼女の性格は相当ねじ曲がってしまっていたようだ。

 私は彩花に言いたいことはたくさんあったけど、

 「エントリーナンバー1122番から1131番の方、2番ブースにお入りください」

 自分の番号が呼ばれ、私は立ち上がった。

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REVIEWS

評価

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良いと思うところ

今までの教えが全てまとめられている形でわかりやすくて、流れとポイントがぴったりと成長に繋がる行動に表されていて、良かったです、見事です!

その中でも一番良かったのは、実力以上の力をとてもまりちゃんらしい形で出せたところです、諦めずに^ - ^

偶然にも昨日は一般的に入社式でした。期待に不安、、、いろんな思いでスタートを切ったフレッシュマン全てに最初からここまでのところをはじまりの心得として勧めたいくらいです^ ^自分が人事や総務ならば(笑)
仕事に向いているかハマるまでとにかく必死に三年頑張ってみて、と(矛盾するかも⁈いやしないかな)「憧れ」を持ち続けて、大事な気持ち見失わずに進んで欲しいとo(^_-)O

また色紙の合格祈願、自分は緑川くんの言葉が一番好み(๑˃̵ᴗ˂̵)でした。次はサイードで(笑)自分の中ではサイード株ぐんぐん上がっています(笑)

よぉし!と勇気がわきたつ、最高に素晴らしい回でした(^-^)

良くないと思うところ

よくないと思うところはありません。まりちゃんの気持ちの切り替えの早さ、良さ、これも才能の一つですね^_^背負うものが無いならば、悩んでも自分ではどうしようもならないと、誰でも引きずらずにいけたらいいのにと思います。

Shiho☆
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水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。
オーディションのシーンは実はかなり苦戦しているのでこうして前向きな感想もらえるのはありがたいです!

2018年4月3日 15時41分 水野敬也
水野敬也
評価

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良いと思うところ

山Pが何かを言おうとして、でも何を伝えたいのかまりりんにはわからず退場させるという展開が意外で、笑いました。
合格祈願の色紙、緑川くんの「1億%」は、将棋のハッシーの発言からとったのかな?とか、サイードの「CDを100~1000万枚買ってお前をセンターに」ではAKB総選挙で1000万枚投票すれば、推しをセンターにできるな!とか、細かいところまで楽しめました。

良くないと思うところ

コマ切れで読まなきゃいけないこと…くらいですかね。一気に読んでしまいたい感が高まっています!

かおり
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コメントの評価

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