彩花の言葉に不穏な空気を感じてたずねた。
彩花は軽い口調で言った。
「そこそこ力のある事務所に入ってる子は無条件で一次通るんだよ。ていうか、最終的に選ばれるメンバーはもう決まってるって話だし」
(う、うそだ……)
私はショックでその場に崩れそうになった。
そういう話はあるのは知っていたが、今回は書類選考もない、誰でも選ばれる可能性のあるオーディションのはずだ。
そのことを言うと彩花は鼻で笑って言った。
「そんなの番組の演出に決まってんじゃん」
さらに彩花は続けた。
「ちなみに、今回のオーディション『ナイン』ていう名前だけだけど、8人しかメンバー選ばれないからね。それで9人目のセンターで橋本明香里が入るから」
(ええ―――)
私は言葉を失ってその場に立ち尽くした。
「マジなのそれ?」
「ネットとかに書かないでよ。怒られるからさ」
「いや、マジかー」
翔院男子と彩花のやりとりが遠くに聞こえた。
放心状態でテーブルから離れようとすると、
「真理ちゃん」
翔院男子が馴れ馴れしい口調で言った。
「この前の男、今日はいないの?」
私がうなずくと、男は続けた。
「次、あいつらとライブやるとき教えてよ。俺のツレ20人くらい連れていくからさ」
彼の態度には明らかな威嚇があり、この前の仕返しを企んでいる様子だった。
(レインボーイズがいたら、こんな男何十人いても怖くないのに)
そんなことを考えたが余計に悲しくなり無言のままテーブルを離れた。
終業時間がすぎていたのでトイレチェックに向かう。しかし、私の頭の中では彩花の言葉がぐるぐると回り続けていた。
(あの子は、私が実力で一次審査に通ったのが悔しくてウソをついているんだ)
そう何度も自分に言い聞かせたが、彩花の言葉がまったくのウソでもない気がした。
もちろん、完全なデキレースではないと思う。テレビに出ている有名音楽プロデューサーが実際に面接をしているのだ。すごい逸材がいたら選ばれる可能性はあるだろう。
でもそれは圧倒的なスター性のある人で、私のようなタイプが選ばれる可能性が万が一にもあるとは思えなかった。
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評価
良いと思うところ
最後のレインボーズが、ちっちゃかったという意外性。
良くないと思うところ
次に楽しいことが起きるんだろうとは思うけど、この回はあまり面白くないし、理屈っぽい。
2018年4月16日 19時58分 かおり1人がこのコメントに「いいね!」しました
コメントの評価
著者からの返事
感想ありがとうございます!確かに、もっと笑いがあって良いような気がします!!!
2018年4月17日 15時54分 水野敬也評価
良いと思うところ
山Pとレインボーイズにもう会えないのかと思っていたところに新たなメンバー登場で嬉しかった!
キャラもレインボーイズの中で一番好きです笑
個人的にも真理ちゃんと同じ悩みを抱えているので、次のお話がすごく楽しみです!
良くないと思うところ
特にありません。
anmo早く続きが見たいです!
1人がこのコメントに「いいね!」しました
コメントの評価
著者からの返事
感想ありがとうございます。最後のレインボーイズなので意外性と、キャラ立ちをさらに深めてみます!
2018年4月17日 15時54分 水野敬也評価
良いと思うところ
小さいレインボーイズ(笑)が登場するまでの流れがとても自然で感心しました^ ^まりちゃんの新たな不安をさらに掻き立てる彩花ちゃんの場面など。
『課題』の変化、世の中の変化の話しのところは諸行無常を分かりやすく、成熟していると勘違いしている、考え方を変えようとしない大人への警鐘にも…とれました。栄光やいい結果を出せたことがあったとして、それが全てと課題に向き合おうとしないなんて成長も無いですし。
まりちゃんの信念を確かめたり、小さい(レインボーイズ)のに核心をつく、とても大きな役割を、教えをしてくれて良かったです‼︎キャラも面白いです(*^▽^*)いじわるしたくなる(笑)
良くないと思うところ
サイードが、、、職場にもう戻れないだろうけれど、無断でで無くて、いきなりやめちゃったが卑怯感無くていいかなぁなんて、細かいのですが思いました。サイードいい人だし…
Shiho☆1人がこのコメントに「いいね!」しました
コメントの評価
著者からの返事
感想ありがとうございます。確かにサイードの格が下がるという点では問題があるかもしれません。ただ機械の故障的に突然消えたとなると、、、サイードは「あんなに苦しんでいたのに一度も休まなかったサイードが」とすべきですね。ありがとうございます
2018年4月17日 15時56分 水野敬也