仕事幸福真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル

真理―成功と幸福の秘密を知ったアイドル 第13話

 「僕がこうして姿を現してるということは、山Pには何らかのシステムトラブルが起きてると考えた方がいいだろうね。僕は山Pと違ってこちらの世界のエネルギーで活動できるようにプログラミングされているからね。だからこの大きさってわけ」

 「システムトラブルってことは……」

 私は胸をなでおろして言った。

 「山Pはまだ生きてるんだ」

 紫堂は、私が取り出した爪楊枝の先に折った紙ナプキンを刺してパラソルを作りながら言った。

 「ただ、こっちの世界に戻って来れるかどうか分からないけどね」

 「え――」

 ショックを受ける私に対して紫堂はさらっと言った。

 「だってどんなトラブルか分からないし。トラブルが直る前に、山Pが向こうの世界で亡くなっちゃうかもしれないしさ」

 「変なこと言わないでよ!」

 紫堂に向かって叫んでしまった。

 他のお客さんがこちらを見たので、私はあわてて紫堂を備え付けのシュガーケースの中に隠した。紫堂はシュガーケースから顔だけ出して言った。

 「子猫ちゃんが感情的になるのも分かるけどさ」

 紫堂はその状態のまま続けた。

 「今の君を山Pに見せるわけにはいかないよね。だって、ちょっと問題があっただけなのに、『アイドルじゃなくてホールスタッフで良いか』ってなっちゃうくらいなんだから」

 紫堂は続けた。

 「もし子猫ちゃんが本当にホールスタッフの道を選ぶんだったら、どうしてもホールスタッフになりたいって気持ちがないとダメでしょ。アイドルになるのが難しいからこっちでいいやって気持ちでやっても間違いなく一流のスタッフにはなれないし、そんな考え方はホールスタッフに失礼だよ」

 ――紫堂の言うとおりだった。今の私の状態で田沢さんのようなスタッフになれるわけがない。

 「じゃあ……」

 私は紫堂に向かってたずねた。

 「私はこれからどうすれば良いの?」

 すると紫堂は砂糖袋の束から這い出て、髪をかき上げて言った。

 「それを教えるために僕がここにいるんだろ?」

 紫堂の一言で私を覆っていた霧が晴れる気がした。

 そうなのだ。彼はレインボーイズの一人なのだ。つまり、彼もまた大事な教えを持っているということだ。

 (どんな教えなんだろう)

 レインボーイズたちの教えは私の新しい道を切り開いてくれるものだった。

 しかも紫堂は――体は小さいけれど――最後のレインボーイズなのだ。

 私は期待をふくらませながら紫堂の教えを待った。

 すると紫堂はシュガーケースの縁に腰を下ろし、遠い目をして言った。

 「僕の教えはね。『いちいち人に聞くんじゃなくて自分で考えろ』ってことさ、子猫ちゃ‥」

 次の瞬間、

 「ちょっと、早く助けグブォ!」

 野菜ジュースに落とされた紫堂は溺れかけることになった。

 私は紫堂をストローにつかまらせて言った。

 「……真面目にやってよ」

 びしょ濡れの紫堂は言った。

 「ま、真面目にやってますよ!!」

 紫堂は続けた。

 「真理さんが山Pから学んだことは正しいことばかりだ。それは仕事だけじゃなく人生における原理原則だと言えるでしょう。ただ、正しいがゆえに、君は山Pの教えに頼り、自分の頭で考えることを忘れているとは言えませんか?」

 紫堂の言葉に私は黙りこんだ。紫堂の言う通りだった。私はこれまで山Pに頼り切ってきたし、山Pが消えてからそのことをさらに強く意識させられることになった。

 紫堂は紙ナプキンで体を拭きながら言った。

 「確かに山Pは手取り足取り教えてくれたかもしれない。でも、もう山Pはいないんだよ。だから君は自分の頭で考えて自分で答えを出していかなきゃいけない。だから僕の教えは――レインボーイズからの最後の教えは――これさ。

 『自分で課題を見つけて乗り越える』」

 「自分で課題を見つけて乗り越える?」

 「そう。たとえば君がアイドルとして成功するためには、現状のアイドルたちが抱えている課題を――お客さんが不満に感じている部分を――乗り越える必要がある。そうなったとき初めて君は『新しい』『魅力的だ』として多くの人に受け入れてもらえるのさ」

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REVIEWS

評価

12344

良いと思うところ

最後のレインボーズが、ちっちゃかったという意外性。

良くないと思うところ

次に楽しいことが起きるんだろうとは思うけど、この回はあまり面白くないし、理屈っぽい。

2018年4月16日 19時58分 かおり
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水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます!確かに、もっと笑いがあって良いような気がします!!!

2018年4月17日 15時54分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

山Pとレインボーイズにもう会えないのかと思っていたところに新たなメンバー登場で嬉しかった!
キャラもレインボーイズの中で一番好きです笑

個人的にも真理ちゃんと同じ悩みを抱えているので、次のお話がすごく楽しみです!

良くないと思うところ

特にありません。
早く続きが見たいです!

anmo
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。最後のレインボーイズなので意外性と、キャラ立ちをさらに深めてみます!

2018年4月17日 15時54分 水野敬也
水野敬也
評価

12345

良いと思うところ

小さいレインボーイズ(笑)が登場するまでの流れがとても自然で感心しました^ ^まりちゃんの新たな不安をさらに掻き立てる彩花ちゃんの場面など。

『課題』の変化、世の中の変化の話しのところは諸行無常を分かりやすく、成熟していると勘違いしている、考え方を変えようとしない大人への警鐘にも…とれました。栄光やいい結果を出せたことがあったとして、それが全てと課題に向き合おうとしないなんて成長も無いですし。

まりちゃんの信念を確かめたり、小さい(レインボーイズ)のに核心をつく、とても大きな役割を、教えをしてくれて良かったです‼︎キャラも面白いです(*^▽^*)いじわるしたくなる(笑)

良くないと思うところ

サイードが、、、職場にもう戻れないだろうけれど、無断でで無くて、いきなりやめちゃったが卑怯感無くていいかなぁなんて、細かいのですが思いました。サイードいい人だし…

Shiho☆
1人がこのコメントに「いいね!」しました
水野敬也
コメントの評価

 著者からの返事

感想ありがとうございます。確かにサイードの格が下がるという点では問題があるかもしれません。ただ機械の故障的に突然消えたとなると、、、サイードは「あんなに苦しんでいたのに一度も休まなかったサイードが」とすべきですね。ありがとうございます

2018年4月17日 15時56分 水野敬也
水野敬也
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